ネシオのブログ

ネシオのブログです。興味のあるゲームやアニメ、漫画や映画のことを書いています。オリジナル作品の制作日記も公開中。

ネシオのブログ

MENU

『ケロタン』第1話「動き出した運命」(2/3)

 

 ◆ アグニス城・七階・寝室 ◆

 

 警殺けいさつの事情聴取を終えたアグニスは、寝室に戻り、何やら物思いにふけっていた。

 彼の視線の先にあるのは、片腕が通る程度の穴が空いた窓。

 

 「…………。」

 

 起きた時、すぐに窓の異変に気付いた。

 そして机の中を確認すると、設計図が無くなっていた。

 

 「ふ……。」

 

 笑うしかない。

 

 「アグニス様。」

 

 その時、扉の向こう側から兵士の声。

 

 「来客ですが、いかが致しましょう?」

 「客……?」

 

 アグニス怪訝けげんな顔をし、扉を開けた。

 

 「こんな時に誰だ?」

 「それが……。」

 

 ◆ アグニス城前 ◆

 

 「俺はケロタン私立探偵だ!! 事件について詳しくお聞かせ願う!!」

 「帰れ。」

 

 《バタン

 

 扉を開いたアグニスは、すぐに扉を閉めた。

 

 「アグラ~ン! 困ってんだろ!? 入れてくれよ!!」

 「お前の助けなど要らん!」

 

 アグニスは知っている。このロッグ族――ケロタンのことを。

 少し前に近くに引っ越してきた奴で、よくを訪れては、兵士と一緒に食事をしたり、ゲームをしたりして遊んでいる変わり者だ。

 定職に就かず、町の人々の仕事を手伝ったり、魔物を退治するなどして生計を立てているらしいが……。

 

 「アグラ~ン!!」

 「…………。」

 

 アグニスは扉を睨んだ。

 

 (読めん奴だ。)

 

 過去の無い存在――。

 それはアグニスにとって、とても不気味且つ、厄介であった。

 

 ◆ アグニス城・七階・寝室 ◆

 

 「…………。」

 

 寝室に戻ったアグニスは、扉の所で立ち尽くした。

 

 「よっこらせっと……。あっ、やべ。引っ掛かった。」

 

 ケロタンが窓の穴から侵入しようとしている。

 

 「アグニス様。また警殺の方がいらっしゃいました。」

 「通せ。犯人が見つかった。」

 

 兵士アグニスがそう言い終わった時、廊下の奥から不思議な歌が聞こえてきた。

 

 「刀が求むは悪魔の血。心が求むはなが贖罪しょくざい

  赤い記憶の終焉に、咲き乱れるのは白い花。

  憎しみ囚われ救われの、行き先変わらず地獄でも。

  闇世やみよに光をもたらす為、復讐斬り捨て羽ばたこう。

  例え正義と呼ばれずとも、罪を滅ぼす星となろう……。」

 

 現れたのは、禍々しいオーラを纏い、鋭い眼光を放つスモールノーマン(1~2頭身の人間のような種族)だった。

 両手には刀。青い帽子には、警殺のシンボルである斜めに斬り裂かれた赤い星――罪滅星つみほろぼしが輝く。

 彼の名はメッタギリィシルシル警殺ベテラン警殺官である。

 

 「何か進展はあったか?」

 「いや、とりあえず、町の住民にざっと聞き込みはしたが、収穫は0だ――って、あ? ケロタンじゃねーか。」

  「うぎぎぎぎ……!! っと、抜けた!」

 

 ケロタンは二人の目の前で城への不法侵入を果たした。

 

 「何やってんだお前。」

 「犯人は現場に戻るとはよく言うが、間抜けが過ぎるな。」

 「おいおい、大変そうだから駆け付けてやったんじゃないか。少しは感謝しろよ。」

 

 悪びれないケロタン

 

 「何を偉そうに。私はいつでもお前を牢屋にぶち込めるんだぞ。」

 「まぁまぁ、王様。」

 

 メッタギリィアグニスなだめ、前に出る。

 

 「今は馬鹿の力でも借りたい状況だ。」

 「言っておくが、俺は犯人じゃないし、馬鹿じゃないし、何も見てないからな。」

 「分かってる。お前には無理だ。」

 「どういうことだよ?」

 「確かに、犯人はこの部屋の窓に穴を空けた。

  でもな。カーペットが殆ど濡れてないんだ。全く歩かれた形跡が無い。」

 「おお。」

 「しかも犯人は窓から離れた――そこの鍵付きの机の引き出しから設計図を盗んでいる。」

 

 メッタギリィは、ベッドの横にある机を指差した。

 

 「ってことは?」

 「お前にできるか?」

 「机の鍵は何処にあったんだ?」

 「いや、そもそも犯人は鍵を開けていない。」

 

 今度はアグニスが説明を始める。

 

 「鍵はこれだが、これで開けようとすると警報が鳴る仕組みになっている。」

 

 アグニスは引き出しの鍵穴に鍵を差し込み回した。

 

 《ビーッ!!

 

 「じゃあどうやって開けるんだ?」

 「声紋認証だ。――開け。」

 

 《ピピピ

 

 引き出しはアグニスの命令に従い、開く。

 

 「恐らく犯人は、魔法か何かを使ったのだろうな。」

 「魔法……。」

 

 ケロタンは考え込む。

 

 「そういう魔法が使えるってだけじゃなくて、あのの中でもこの窓まで辿り着ける奴だ。普通じゃねぇ。」

 

 メッタギリィは窓を睨む。

 

 「んー。そもそも何で犯人アグランロボットを開発していることを知ってたんだ? 盗まれたのは設計図だけなんだろ? 計画的な犯行じゃないのか? 犯人に心当たりは――」

 「いや、全く無いな。警殺にも既にそう話している。」

 「んん……。犯人の狙いは?」

 「そうだな。仮に恨みを持っている者の犯行なら、私の信用を失墜させようと企んでいるのだろう。

  趣味で書いたものとはいえ、盗まれたのは正確には、軍事用ロボットの設計図

  平和主義を掲げる私の印象を悪くしようとしているのだろう。」

 「え? ってことは……。」

 「向こうが本気なら、そう遠くない内に攻めてくるだろうな。

  だから盗まれたことは即座に公表した。」

 「シルシルタウンの住民には、聞き込みの際に警戒するよう伝えておいたぜ。各地の警殺への連絡も、もう済んでる。ケロタン、ここまで聞いたからには、有事の際、お前にも働いてもらう。」

 「そのつもりだよ。」

 「ははっ!  期待してるぜ。」

 

 メッタギリィケロタンの体を刀で叩く。

 

 「いてぇよ。」

 「さて……、俺は町に戻るが、お前はどうする?」

 「家に戻るよ、何かあったら連絡くれ、飛んでく。」

 「全く……強引な奴だ。」

 

 アグニスは溜息をく。

 

 「よっこらせっと……。」

 

 ケロタンは窓の穴に頭を突っ込んだ。

 

 「何故そこから帰る?」

 「えっ? いや、ここからが早――」

 

 そんなやり取りをしている時だった。

 

 《ゴオオオン……

 

 「……ん?」

 

 彼らが僅かな地の揺れと低い音を感じ取ったのは。

 

 「何だ……?」

 「おいおい。の次は地震かぁ?」

 

 ケロタンメッタギリィが頭に疑問符を浮かべる。

 

 「いや、これは……。」

 

 一方、何かを察したアグニスは、窓に近付いていく。

 

 「どけ。」

 「あんっ!」

 「…………。」

 

 ケロタンを蹴飛ばし、窓の外を見たアグニスは、目を細めた。

 シルシルタウンから煙が上がっている。

 

 「幾ら何でも早過ぎねーか?」

 

 立ち上がったケロタンが横から覗く。

 

 「ちぃっ!」

 

 メッタギリィは舌打ちを声に出し、部屋から飛び出した。

 

 「ふむ……、ケロタン。お前の意思が本物かどうか、早速確かめさせてもらおう。」

 「おうよ。」

 

 かくして三人は、シルシルタウンへと向かうのであった。

 

 ◆ シルシルタウン・中央広場 ◆

 

 「おうおうおう!! 随分でかい現行犯じゃねーか!!」

 

 平和な町に、突如出現した巨大二足歩行ロボット。その全長約70m

 それと対峙しているのは、シルシル警殺署長ブッタギリィ種族スモールノーマン)だ。

 

 《グオオオオオオオ!!

 

 「っ!! 止まれえええええい!!」

 「しょっ……! 署長ぉ!!」

 

 《ゴオオオオォォン!!

 

 叫びを上げたロボットは、身を屈め、広げた両腕で周囲をいだ。

 舞い上がる粉塵。後には何も残らない。

 ブッタギリィの部下――ホウカ種族ノーマン(3~4頭身の人間のような種族))とタイホィ種族スモールノーマン)は、その光景を見て震え上がった。

 

 「あぁ……、何てことだ。」

 「ひいぃ……、あんな化け物。どうやって倒すんですか……!?」

 

 警殺の誇る最高戦力の一角をあっさりとほふった巨大モンスターに太刀打ちする術は、新米である二人には無い。

 

 《キキィーッ!!

 

 その絶望に、一台の警殺車両が飛び込む。

 中から現れたのは、メッタギリィアグニスケロタンの三人。

 

 「おい、アグラン! あれって……!?」

 「間違いない。盗まれた設計図に書かれていたのはあれだ。」

 「いや、お前……。」

 

 ケロタン巨大ロボットをもう一度見た。

 ラド族型で、赤いボディに黄色い角……。

 

 「そっくりなんだが。」

 「何だその目は。言っておくが、色を付けたのは私では――」

 

 今はそんなことを話している場合ではない。

 

 「副署長ぉ~!!」 「一大事です!」

 

 倒壊した建物に隠れていたホウカタイホィが、メッタギリィに駆け寄ってきた。

 

 「お前達、住民は避難したのか……!?」

 「はっ、はい! 署長の御蔭で何とかっ!!」

 

 ホウカが答える。

 

 「そうか……、それでその恩人は何処だ……!?」

 

 ケロタンロボットの周辺を見るが、ブッタギリィの姿は何処にも無い。

 その時、メッタギリィは地面に突き刺さった一本の剣を目にした。

 

 「署長ブッタギルティソード!!」

 

 遠目にはチェーンソーにしか見えない大剣。あれはまさしくブッタギリィの武器!!

 

 「何!? まさか……!?」

 

 メッタギリィに続き、ケロタンも気付く。

 

 「署長は我々の為、たった一人で……。」

 「最後まで悪と戦う意志を捨てませんでした!!」

 

 涙ながらにブッタギリィの勇姿を語るホウカタイホィ

 メッタギリィのドス黒いオーラが、赤く染まる!

 

 「あのクソロボット!! 俺がKILL!!

 「メッタギリィがキレた!!」

 

 飛行魔法でその場から飛び立つメッタギリィ

 風圧でケロタンは吹っ飛ばされる。

 

 「ウアーッ!」

 

 そしてメッタギリィは、更に加速魔法防御魔法と後何かを何重にも重ねがけ、恐ろしいスピードで巨大ロボットに向かっていく!

 

 「おおおおっ!?」

 

 起き上がったケロタンは、思わず声を出す。

 

 《ガキイィィン! ズガアアアアン!!

 

 だが――音速の一撃はロボットの装甲に弾かれた。

 メッタギリィの刀は折れ、彼自身は近くの建物に激突。姿は見えなくなった。

 

 「何をやってるんだ、あいつは。」

 

 あまりにも馬鹿過ぎる突貫に呆れるアグニス

 

 「あぁ……副署長まで……!!」

 「まるで歯が立たないなんてぇ!」

 

 愕然がくぜんとするホウカタイホィ

 

 「なぁ、アグラン。弱点とか無いのか?」

 「ケロタン。あれだけの巨大ロボットを動かす為に必要なエネルギーは何処から供給されていると思う?」

 「分かんねーよ!」

 「…………。」

 

 詳しい説明は後回しだ。

 

 「もしあれが私の設計図通りに作られているのなら、あの頭の角が弱点の一つだ。」

 「よっしゃ!」

 

 ケロタンはそれを聞くと、近くの倒壊した建物に駆け上り、ロボットに向かって走った。

 

 「おい、待て。どうする気だ!?」

 「必殺……!」

 

 ケロタンは駆けながら、力を溜めた。

 右手が発光し、そこに光の球が出現する!

 

 「《ロダン》!!」

 

 掛け声と共に勢いよく放たれる光球!

 

 《バアアァァン!!》 《グオオオオォォ!!

 

 それは巨大ロボットの左頬に命中し、爆発!

 巨体を僅かによろけさせる程の威力!

 

 「へへっ。いつも相手にしてる魔物よりだいぶ反応が鈍いぜ。

  巨大ロボットだか何だか知らねーが、つまりはちょっと図体のでかい凶暴で馬鹿なアグランってことだろ!?」

 「軽く見られたものだな。」

 

 ケロタンの後方でアグニスは苛立った。

 

 《ドゴオオォォン! ドゴオオォォン!

 

 ロボットは攻撃を受けたことにより、進行方向を変える。

 当然、ケロタンのいる方に。

 

 「うわぁ! 来たぁ!!」

 

 それを見たケロタンは、蜘蛛のようなスピードでアグニスのところまで戻ってきた。

 

 「おい……!!」

 「高過ぎて俺じゃ狙えないんだよ。だからあいつに任せる。」

 「何……?」

 

 アグニスは向かってくる巨大ロボットを見た。

 

 「あれは……。」

 

 その後ろ。先程、メッタギリィが突っ込んだ建物の上階から何かが飛び出した。

 

 「死体ぐらい確認しとけボケェ!!」

 

 メッタギリィである。

 

 「さっき車から降りる時に拝借した警殺無線機だ。弱点はバッチシ伝えといたぜ。」

 「そうか。」

 

 案外、抜け目の無いケロタン

 

 「喰らえ!! 極殺ごくさつ式剣術――」

 

 しかし、メッタギリィが頭部の角に技を放とうとした瞬間だった。

 

 《グオンッ!!

 

 ロボットの頭部が180度回転!

 

 「何ィ!? 回るだと!?」

 

 《グオオオオオ!!

 

 ロボットの口が大きく開かれ、発光! 何かが放たれようとしている!!

 

 「だがっ!!」

 

 メッタギリィ飛行魔法で急速旋回!

 

 《オオオオオオオ!!

 

 ロボットの口から放たれたオレンジ色の光線を間一髪回避した!

 

 「くそっ、あんなこともできるのか!」

 

 驚愕するケロタン

 だが、思いもよらないチャンスが訪れる。

 地上に下りたメッタギリィを攻撃する為か、ロボットが身を屈めたのだ!

 

 「隙ありぃ!!」

 

 ケロタンは溜めていた力を放った。

 飛んでいく光の球――それはロボットの角に真っ直ぐ向かい――。

 

 《バアアァァン!!

 

 見事命中! 体ほど硬くはないようで、角は頭から外れ、遠くへ吹っ飛ぶ!

 

 《ゴゴオオオォォン!!

 

 効いたのか、体勢を崩し、顔面から地面に叩き付けられるロボット

 

 「おおっ、やったぜ!」

 

 快哉かいさいを叫ぶケロタン

 トドメを刺そうと倒壊した建物を伝い、ロボットの背中に飛び乗る。

 

 《ぐぐぐっ……!!

 

 「うおっ……!? 何だ?」

 

 乗った瞬間、ケロタンは何かがうごめくような音を聞き、その場に停止した。

 その時、ロボットの瞳がより強い輝きを放つ!!

 

 《オオオオオォォン!!

 

 「やっべ!」