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ホラー小説『死霊の墓標 ✝CURSED NIGHTMARE✝』 第2話「明日無き日常」(3/3)

 

 

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 《…………

 

 

 何か……動いている……。

 

 懐中電灯に照らされ、ぬらぬらと光る無数の赤い突起が……壁の中に沈み込んでは出て、沈み込んでは出てを繰り返していた。

 

 まるで生き物のように、その壁は全体が奇妙に波打っていたのだ。

 

 

 (まさか……。)

 

 

 俺は理解した……。その壁が、怪物の体の一部であることを。

 

 

 (でか過ぎる……。)

 

 

 昨日の夢に出て来た奴もかなりでかかったが、それよりも遥かに巨大だ。

 

 一体どうなっているのか……。

 

 俺は全体を把握する為、後ろに下がった。

 

 

 「…………。」

 

 

 シロアリの女王に似ている。胴体が芋虫のように太く長い。頭はここからじゃ見えないが……。

 

 

 (役割が同じとすると……。)

 

 

 あれは一日に数百個もの卵を産むという。

 

 

 (こいつを倒さなきゃ終わらないな。)

 

 

 そう感じた俺は、すぐに女王の頭を探すことにした。

 

 胴体を攻撃することもできるが、このでかさで暴れ回られたら堪らない。やるなら一撃で仕留めるべきだろう。

 

 問題は……。

 

 

 (どっちが頭だ……?)

 

 

 女王の体をよく照らしてみるが、蠢くのみで移動しない為、判断できない。

 

 

 《ギイィイイィィ!!》《ギギギギィィ!!

 

 

 小さな怪物は四方八方から現れる。

 

 

 (悩んでる場合じゃないな……。)

 

 

 《ボオオオォォォォォ!!》

 

 

 俺はライターから黒炎をほとばしらせながら走った。

 

 近付く怪物を焼き消しながら、女王の頭を目指す。

 

 だが――。

 

 

 《ギオオオオォォォォ!!

 

 

 「っ!?」

 

 

 今までの怪物とは比べ物にならない程の大きな鳴き声が響き、同時に何かが猛スピードで目の前を通り過ぎた。

 

 俺は懐中電灯を素早く動かし、その正体を捉える。

 

 

 (脚……!?)

 

 

 《ギオオオオオォォォォ!!

 

 

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 俺は絶句した。

 

 女王とは別の、巨大な怪物が目の前に姿を現したのだ。

 

 

 (こいつは……王……!?)

 

 

 女王がいれば、当然、王もいる。

 

 

 《ギオオオッ!!

 

 

 「っ!!」

 

 

 王は長い脚を動かし、攻撃してきた。

 

 まるでこの先には行かせないと言わんばかりだ。

 

 

 《ボオオッ!!》

 

 

 俺は脚をかわしながら、王に向けて黒炎を放った。

 

 しかし――届かない。

 

 

 《ギオオオオオッ!!

 

 

 体の下には潜り込めたが、リーチが足りず、黒炎が当たらない。

 

 

 (なら――)

 

 

 王の脚を狙う。

 

 俺はその場で停止し、攻撃を待った。

 

 普通に追いかけ回し、黒炎を当てる手もあるが、体力は温存したい。

 

 

 《ギオオオッ!!

 

 

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 王が俺に向けて脚を振り下ろす瞬間――。

 

 

 《ボオオオォォ!!》

 

 

 カウンターで黒炎を放ち、脚を焼き消す。

 

 そしてバランスを崩した隙に、別の脚も焼き消す。

 

 

 《ギオオオオオオッ!?

 

 

 二本の脚を失った王は、その場に倒れる。そこを黒炎の餌食にする。

 

 

 《ボオオオオオッ!!》

 

 《ギオオオオオッ!?

 

 

 黒炎を浴びた王はもがき苦しむが、幾ら暴れても無駄だ。昨日の怪物も耐えられなかった。

 

 俺は王が完全に消えるのを確認すると、女王の頭に向けて再び走り出した。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 《ボオオォォォ!!》

 

 女王も呆気ないものだった。

 

 頭を燃やされ、断末魔を上げる間も無く消えた。

 

 残ったのは、無駄にでかい胴体のみ。

 

 

 「はぁ……。」

 

 

 終わった。

 

 この異臭漂う怪物の巣窟で深呼吸などしたくないが、体が酸素を求めている。

 

 肉体的にも……精神的にも疲れ果てた。

 

 

 「…………。」

 

 

 それでも、考えなきゃならないことがある。

 

 この悪夢は……まだ続くのかということ。

 

 明日も、明後日も、その先も――。

 

 

 (何でこんなことになった……?)

 

 

 坂力の事件に関わったのがきっかけか?

 

 ……いや、もしそうなら自分以外にも悪夢を見る人間がいなきゃおかしい。

 

 確かめ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  四・束の間の安息

 

 

 

 二月四日(水)

 

 六骸りくがい家・二階六骸 修人りくがい しゅうとの部屋

 

 

 

  《ピピピピピピピピピ!!》

 

 

 「………………………………。」

 

 (なんてタイミングだ……。)

 

 

 強引に現実に引き戻された。

 

 目覚まし時計の不快なアラーム音が、絶え間なく耳に流れ込んでくる。

 

 御蔭で思考は中断を余儀なくされた。

 

 

 「はぁ…………。」

 

 

 疲労と安堵から、溜息を吐き、脱力。

 

 

 (戻ってこれたか……。)

 

 

 これで2回目。

 

 

 (……いや、待て――)

 

 

 俺は目覚まし時計を止めると、近くの窓に手を突き、開いた。

 

 すると一気に冷たい空気が部屋に流れ込んでくる。

 

 俺はそれを感じ――。

 

 

 (……寒っ。)

 

 

 すぐに窓を閉めた。

 

 

 (現実……だな。)

 

 「はぁ……。」

 

 

 そう、この寒さと倦怠感が現実。悲しいことに、悪夢の中で味わったあの清々しさは一切無い。

 

 

 (くそ……。)

 

 

 ……いや、悲しみに暮れている場合じゃない。 

 

 俺はベッドから離れると、机に向かい、メモ帳とペンを取り出し、夢で起きた出来事を書き出した。

 

 頭は酷く疲れているが、大丈夫だ、全て覚えている。

 

 藤鍵の頼みと、ほんの少しの興味で始めたことだが、こんなことになった以上、適当に切り上げる訳にはいかなくなった。

 

 あの悪夢は何なのか。

 

 この現象に巻き込まれているのは俺だけなのか?

 

 坂力が遺書に書いていた怪物というのはあれのことなのか?

 

 俺は知る必要がある。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 

 AM7:00 六骸家・一階・ダイニング

 

 

 「…………。」

 

 

 朝のニュースを見ているが、今は何処もとある殺人事件の話題で持ち切りで、坂力のことが取り上げられることはない。

 

 まぁ……大きな事件で賑わってなくとも、一般人の自殺なんて、余程、特殊でなければ報道されないだろうが。

 

 

 (確か……。何て言ったか……。)

 

 「…………。」

 

 

 駄目だ。眠気が邪魔して思い出せない。

 

 

 「裁朶姉。」

 

 「んー?」

 

 

 俺はテーブルの向かい側に座る姉に助けを求めることにした。

 

 

 「自殺のことを大きく報道できない理由って何だったっけ?」

 

 「……ウェルテル効果?」

 

 

 ああ……それだ。

 

 自殺報道によって自殺率が上昇する……心理学の現象。

 

 迷信のように思えるかもしれないが、実際、影響を受けるらしい。特に若者が。

 

 有名人の後追い自殺なんかを調べてみると、結構沢山死んでいて驚く。

 

 だからメディアは慎重になる。

 

 ……。具体的に思い出せないが、WHOが守るべきルールを定めていた気がするな。

 

 

 (…………。)

 

 

 父さんは何も話さないだろうし、坂力のことを知るには、やはり待ってるだけでは駄目だ。

 

 命の危機かどうか分からないのがあれだが……、勘が急げと囁いている。

 

 

 「あ、じゃあ、パパゲーノ効果って知ってる?」

 

 

 ……。また突然、母親が会話に入ってきた。

 

 

 「何ゲーノ?」

 

 「パパゲーノ効果。ウェルテル効果とは真逆で、自殺を予防する報道によって、自殺率が低下する現象のこと。」

 

 

 そんなのがあったのか。

 

 

 「私は知ってる。」

 

 (あ、そう。)

 

 

 後で調べておこう。

 

 

 「ゲームを作る時も、そういうの考えなくちゃいけないのよね~。」

 

 (……表現の規制か…………。)

 

 

 テレビ番組を見ていても、昔と比べ、ショッキングな内容はだいぶ無くなったと感じる。

 

 それを残念だと思う気持ちはあるが、仕方ないと、諦めなくてはならない。

 

 刺激を欲するのは人間として当たり前のことだが、他人のことを考えずに行動する者は社会から弾き出される。

 

 ……強い理性を持たなければ。

 

 苦しくても、辛くても、抑圧に耐えなければ、真っ当に生きることはできないのだから。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 家を出る時間が近付き、俺は裁朶姉と共に玄関へ足を運んだ。

 

 暖房の効いた家から出るのは気が進まないが、行かなきゃならない理由は幾つもある。

 

 

 「…………。」

 

 

 目の前でしゃがんで靴を履く裁朶姉。

 

 今日も変わらずしっかりしていて、頼もしい限りだ。

 

 

 「……?」

 

 

 ふと見ると、裁朶姉の肩に何かゴミがくっ付いていた。

 

 気になったので、俺は取ろうと手を――。

 

 

 《バッ》

 

 

 ――伸ばしたところ、凄い速度で手首を掴まれた。痛い。

 

 

 「何?」

 

 

 ゴミを見るような目で睨み付けてくる裁朶姉。そんなに触られるのが嫌か。

 

 

 「ゴミ付いてたんだよ……ほら。」

 

 「…………。」

 

 

 裁朶姉は俺の指に挟まっている糸くずを確認すると、すぐに手を放した。

 

 

 《ガチャ》

 

 

 そして何も言わず、家を出ていく。

 

 

 「はぁ……。」

 

 

 礼は要らないが、詫びは入れてほしい。

 

 まぁ……、急にしおらしくなられても気持ち悪いが。

 

 少し気分が沈んだが、すぐに持ち直した俺は、靴を履き、家を出た。

 

 

 「あんたさ……。」

 

 「ん?」

 

 

 すぐに走っていくと思いきや、裁朶姉は止まり、話しかけてきた。

 

 

 「……いや、やっぱ何でもない。」

 

 「は?」

 

 (何だ?)

 

 

 裁朶姉は走っていく。

 

 ……。

 

 俺の心にまた一つ、妙な疑問を残して。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 PM0:45 浅夢高校・一階・学生食堂

 

 

 

 授業の合間の休憩時間、藤鍵に夢のことについてそれとなく聞いてみたが、俺と同じ状態にはなっていないようだった。

 

 何故、坂力と関わりの深い藤鍵には何も起きず、俺には起きているのか……。

 

 謎の答えは見つからず、俺は昼休み、また学食へ来ていた。

 

 

  (…………。)

 

 

 気分転換……ではない。

 

 昨日、例の脅迫メールのことについて考えていた時、ふと麗蓑れみの レミのことを思い出したのだ。

 

 中学の時に知り合った、俺の唯一の女友達。

 

 確かE組――坂力と同じクラスではなかったかと。

 

 そして、それは担任にE組の名簿を見せてもらった時に確認した。

 

 別にそんな周りくどいことをしなくても、直接確認しに行けばいい話だと思われるかもしれないが……、高校に入学してからは、裁朶姉のこともあって、俺は麗蓑を避けていた。あまり不審な行動はしたくない。

 

 親しげに会話なんてしていたら、あいつまで変な噂に付き纏われる。

 

 それは互いに望まない状況だ。

 

 最初は顔を見る度に話しかけてきたあいつも、俺の態度や周囲の様子から察して、もう一年ほど関わってこない。

 

 俺は……それでいいと思っていた。

 

 しかし……ここに来て……。

 

 

 「ふぅ…………。」

 

 

 俺は弁当を買った後、教室に戻らず、端の方の席に座った。

 

 麗蓑は大の母親嫌いで、手作り弁当を拒否している。

 

 今も変わってなければ……。昼はここに来る筈なのだ。

 

 しかし、友達と一緒だった場合は非常に話しかけ辛い。何か良い方法はないか……。

 

 中学の頃、連絡先を交換し合ったことがあるが、あれはもう必要無いと思って消してしまった。

 

 当然、覚えていないからメールを送れない。

 

 

 (どうする……?)

 

 

 ……。

 

 そういえば、藤鍵の兄と知り合いのようだった。昨日、見た感じ、仲良さそうだったし……、メールアドレスくらい知ってるかもしれない。

 

 ――と、そんなことを考えていると、麗蓑が女子グループに混ざって学食に来た。

 

 弁当を食べながら様子を眺めるが、一人になりそうな気配は無い。

 

 

 (…………駄目か。)

 

 

 そう、諦めかけた瞬間だった。

 

 ――麗蓑と目が合った。

 

 すぐに視線を逸らす。

 

 

 「…………。」

 

 

 反射的にそうしてしまったが、呼べる良いチャンスだったな……。

 

 

 「はぁ……。」

 

 (どうしたものか……。)

 

 

 《ガタッ!》

 

 

 「……!?」

 

 

 突然、向かい側の椅子が引かれ、俺は顔を上げた。

 

 

 「いいよね、ここ。」

 

 「あぁ……。」

 

 

 麗蓑だった。

 

 

 「どうしたんだ?」

 

 「いや、何かあるのかなって。」

 

 (察しが良いな……。)

 

 

 まぁ、昨日も居たしな。

 

 

 「……場所を移すか?」

 

 「あぁ、やっぱり気にしてたんだ。でも、もう落ち着いたと思うよ? あれから何も問題起きてないでしょ?」

 

 「どうだろうな。」

 

 「もう皆、そんなに興味無いと思うなぁ。高校生だし、自分のことで精一杯だって。」

 

 

 麗蓑の感覚ではそうかもしれないが、俺の目からはまだまだ子どもが多いように見える。

 

 クラスメートの半数以上、そして藤鍵も。

 

 

 「俺は今のままが居心地良いから、こういうのは嫌なんだけどな。」

 

 「うん、知ってる。だからさ、私への用ってよっぽどだよね? もしかして、例の事件のこと?」

 

 「あぁ……、藤鍵は……知ってるよな? 弟の方。」

 

 「うん、確か賭希とき君だよね。昨日一緒に居た。」

 

 「そう。あいつ坂力の友達だったらしくてさ。自殺の理由を探ってほしいって頼まれたんだ。」

 

 「マジ?」

 

 「お前、同じクラスだろ? お前にはどう見えた? 坂力は。」

 

 「……う~ん、あんまり話したことないから……。自分から誰かに話しかけるタイプじゃなかったし……。

  一応、私の見てる範囲では、誰ともトラブル起こしてなかったけど……。」

 

 「そうか……。」

 

 

 坂力については、藤鍵とほぼ同じか。スクールカーストの上位に入れる麗蓑もそんな感じなら、恐らく他の生徒に聞いても同じだろう。

 

 

 「自殺でびっくりしたよ。私のクラス、全然いじめとか無かったし……。」

 

 「無視とかされてた訳じゃないんだな?」

 

 「うん。授業中とか、必要な時は普通に話してたし。修人君と同じで、周りに積極的に干渉しないタイプかな。」

 

 (干渉しないか……。)

 

 「でも、ちゃんと友達居たんだね。賭希君は大丈夫そう?」

 

 「…………ああ、心配無いだろう。」

 

 (友達か……。)

 

 

 坂力はどう思ってたんだろうな……。

 

 

 「これ、藤鍵が警察から聞いたっていう遺書の内容なんだが、意味がよく分からなくてさ。心当たりないか?」

 

 

 俺は遺書の内容を書いておいた紙を麗蓑に見せた。

 

 

 「…………怪物?」

 

 「何か気付いたことがあったら、小さなことでもいいから言ってくれ。」

 

 「怪物……。坂力君の着てる服とか?」

 

 「服?」

 

 「そう、全体的に怪物って感じのデザインだったよ。TシャツにはMONSTERって書かれてたし。」

 

 (MONSTER……。坂力の趣味……。)

 

 「好きだった訳か。そういう感じのものが。」

 

 「じゃない? この学校って私服OKだから、個性出るよね。」

 

 「……。ここに書かれてる怪物とは、あんまり関係無い気がするな。」

 

 「ははは……そうだね。」

 

 「じゃあ、最後にもう1つ……。」

 

 

 と、そう言ってズボンのポケットに手をやったところで、俺は思った。

 

 あのメールは見せない方がいいだろうと……。

 

 

 「あぁいや、やっぱもういい。」

 

 「え?」

 

 

 麗蓑は関係無い、巻き込むべきじゃないと思う。

 

 

 「話、助かった。早く友達のところへ戻れ。」

 

 

 俺は弁当を持って立ち上がる。

 

 

 「ちょっ、待ってよ。」

 

 

 去ろうとしたところ、麗蓑に服を掴まれた。

 

 

 「おい、何だ……?」

 

 「だって……気になる! 私も混ぜてよ。」

 

 (混ぜてって……。)

 

 「駄目だ。勝手に行動されても困る。」

 

 「しないよそんなこと……!」

 

 

 …………。

 

 坂力のことを何も知らなかった俺が、坂力に近付いてあの変な悪夢を見始めてる。

 

 正確な条件は分からないが、俺の所為で麗蓑が悪夢を見るようなことになったら……。

 

 ……なったら……。

 

 なったら……ほんとにマズいか……?

 

 

 「ねぇ、何隠してるの?」

 

 「…………。」

 

 

 ……いい実験台になるかもしれない。

 

 もうだいぶ話してるし、心苦しいが……この際、しっかり役に立ってもらうか。俺には必要だ。

 

 

 「……分かった。見せる。」

 

 

 俺は席に戻り、例のメールを開いたスマートフォンの画面を麗蓑に見せた。

 

 

 「えっ? 何これ。」

 

 「昨日の朝、送られてきた。悪戯だと思うんだが、お前はどう思う?」

 

 「警告……。危ないってこと……? 坂力君の事件を調べるの……。」

 

 「…………。」

 

 

 このメールの送り主について確実に言えることは、俺のメールアドレスを知っているということだけ。

 

 悪意か善意か、偶然か必然かは不明だ。

 

 仮に善意で送ったとするなら、この送り主は悪夢のことを知っている可能性があるが……。

 

 俺がこんな内容を見てビビると思っているのだろうか?

 

 悪意の可能性が高い以上、返信はできない。

 

 さて――。

 

 

 「あっ。」

 

 「んっ?」

 

 

 俺がスマートフォンを回収しようと手を伸ばすと、麗蓑が声を上げ、何か操作し出した。

 

 

 「おい、何やってる?」

 

 「何で私のメールアドレス削除されてるの?」

 

 「…………。」

 

 

 まぁ、バレて当然か。

 

 

 「いや……もう使わないと思ったから。」

 

 「登録しておくよ。いいね?」

 

 「ああ……。」

 

 

 その方が都合が良いだろう。

 

 

 「あ、また家、遊びに行ってもいいよね?」

 

 

 ……それは都合が悪い。

 

 

 「できれば来ないでほしいんだが……、他に友達居るだろ。」

 

 「あれは馴れ合いっていうか……、知ってるでしょ。」

 

 

 どうやら、未だに遠慮なくゴロゴロしながらゲームできるのは俺の家だけらしい。

 

 それだけ信頼してくれているというのは嬉しいが……。

 

 ……。

 

 

 (悪いな、麗蓑。)

 

 

 お前が俺を利用するなら、俺もお前を利用する。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 PM9:00 六骸家二階・六骸 修人の部屋

 

 

 

 

 「…………。」

 

 

 時間が経つのは早い。

 

 学校から帰宅し、勉強と食事、風呂を終えればもうこんな時間だ。

 

 

 (これからまた悪夢が始まるのか……。)

 

 

 ベッドに横たわった俺は、天井を見つめながら昨日と今日の悪夢を思い出す。

 

 最初は化け物になった坂力に追いかけ回され、次は羽アリ地獄。

 

 2回目は、坂力が全く関係無くなっている。

 

 

 「はぁ……。」

 

 

 悪夢から何もヒントを得られないのなら、望みは坂力の隣の部屋の住人だけになる。

 

 こんなこと周りに相談しても病人扱いだし、早いとこ何とかしたい。

 

 場合によっては予定を繰り上げることも考えよう。

 

 

 「…………。」

 

 

 もし……どういう理由かは分からないが、俺が坂力に恨まれていて、俺だけにこんな現象が起きているとしたら……。

 

 ふざけるな……そう言いたい。

 

 

 (あんな理不尽に押し潰されて堪るか……。)

 

 

 俺は布団を被り、目を瞑った。

 

 例え再び地獄に落ちることになろうとも……必ず帰ってくる。そう誓って――。

 

 

 

 

 

 

 

   (Episode 2 ―― End