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『ケロタン』第2話「勇者の石」(1/3)

ケロタン勇者の石+1

 

 

  二・勇者の石

 

 

 ◆ アグニス・ランパード城・六階・研究室 ◆

 

 

 「んー……。」

 

 アグニスはコンピュータの画面に表示された分析結果を見て唸った。

 構造構成物質に変化は無し。

 謎の発光現象を見せた勇者の石は、やはりただ魔力を帯びただけの、何の変哲も無い石ということか。

 

 「なー、アグラン。まだ終わらないのかよ。」

 

 何分も拘束され、痺れを切らしたケロタンが文句を言い始める。

 

 「…………。」

 

 しかしその声は、思考を始めたアグニスの耳には届かない。

 

 (勇者の石があれほどの強い光を放つなどという報告は今までに無かった。

  ケロタンと何か関係があるというのか……?)

 

 アグニスは壁にだらしなくもたれかかっているケロタンを見つめた。

 

 「そういえばお前、さっきこれを投げたり転がしたりしていたが、もう一度同じように動かせるか? あれで魔力の流れ方が一時的に変わったのかもしれん。」

 

 「いや、無茶言うなよ。覚えてないって。」

 「はぁ……、大発見になるかもしれないというのに……。」

 

 魔科学者としての血が騒ぐのか、アグニスは落ち着きを失っていた。

 

 「えっと……確か百個集めた奴の願いを叶える……だっけか。」

 

 ケロタンは分析台に乗せられた勇者の石をガラス越しに見つめながら、アグニスに問うた。

 

 「……あぁ。何処の馬の骨とも分からぬ預言者が言い出したことだがな。すっかり定着している。」

 「本当にそんなにあるのか?」

 「さぁな。誰が作った物なのか、どのようにして大陸中に散らばったのか、記録が残っていないから分からない。預言者もとっくに亡くなっているし、どういう意図で発言したかは確かめようがない。

  真に受けた時の為政者は、金を使い、人を使い、勇者の石を探したそうだが、今までに見つかったのはたった十二個。勿論、一箇所に集めても何も起きやしない。

  今でも探しているのは、余程の馬鹿か、トレジャーハンター遺物マニアといったところだ。」

 「ふ~ん……、で、何で勇者の石って名前が付いてるんだ?」

 「魔物の多い危険地帯から見つかることが多かったから、いつの間にかそう呼ばれるようになった。」

 「そうか……。何か気になるな。」

 

 「……他の魔石と比べて、大した力は持っていない。

  だが、パズルのピースのように、集合することで初めて意味を成すという可能性は否定しない。

  私に大陸各地を探し回る時間は無いが……、もし、ケロタン

  お前がやると言うのなら、私は手を貸そう。

  先程の発光といい、この謎は魔科学者として、決して無視できるものではない。」

 「へっ……。」

 

 ケロタンは笑みを浮かべ、立ち上がった。

 

 「こういうのだよ。こういうのを待ってたんだ。

  やっぱ冒険にはでかい目標がなくちゃな。」

 「ふっ……。」

 

 (今の話を聞いて乗ってくるとは。)

 

 「一応、聞いておくか。本当に願いが1つ叶うとしたら、お前は何を願う? ケロタン。」

 「そうだな……。」

 

 今度はケロタンが深く考え込む。

 

 「本当に願いを叶えるなんて力があるなら……俺は……。」

 「…………。」

 

 「腹いっぱいウィンナーを食べたいかな!?」

 「はぁ……まぁ、そんなところだろうと――」

 

 《ピカーッ!!

 

 「は!?」

 

 再び勇者の石が強い光を放つ。

 

 「え? 俺また何かしでかした?」

 「くっ……!」

 

 アグニスは急いで石の状態を調べる。

 そうしてコンピュータの画面に表示されたのは、先程とは異なる結果。

 

 「これは……!?」

 

 アグニスはガラスの向こうを見た。

 そこには勇者の石の他に、太さ約1.8cm程度の棒状の物体が存在。

 その正体は豚肉……すなわち――。

 

 「ウィンナアアアアアア!!

 

 《ガッシャアアアアンン!!

 

 強烈なタックルにより、ケロタンウィンナーを隔てるガラスは木端微塵に砕け散った。

 

 「おい、待て! 馬鹿、食うな!」

 

 アグニスは急いでケロタンを取り押さえようとしたが、ウナギのように腕をすり抜けられ、ウィンナーは彼の口の中に吸い込まれていった。

 

 「んぐんぐ……。」

 「はぁ……はぁ……。おい、味は?」

 「美味い!」

 「…………そうか。」

 

 こうして、二人の意思は完全に決まったのだった。

 

 

 ◆ ヘルヘルランド ◆

 

 

 《♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 心弾む軽快なBGM。空を彩る風船。食欲をそそる料理の匂い。

 ケロタン達は現在、アグニス城より南西の方角にあるテーマパーク――ヘルヘルランドを訪れていた。

 

 「ホットドッグ2つ!」

 「はいよ!」

 「んー、美味い!」

 

 移動販売車でホットドッグを購入したケロタンは、早速それを頬張り、楽しんだ。

 パンに挟まる瑞々しい野菜と、焼き立てのウィンナー。

 それらが口の中で弾け、ジューシーな味わいが全体に広がっていく。ケチャップとの相性も抜群だ。

 

 「いやぁ、台風の後だってのに賑わってるな!」

 「皆、暗い気持ちを吹き飛ばしたいのだろう。」

 

 アグニスは大勢の客を見、そして地面を見下ろす。

 災害対策にだいぶ金をかけているとは聞いていたが、記録的豪雨を物ともしないとは恐れ入る。何処もかしこも綺麗だ。

 

 「あ、後であれ乗ろうぜ!」

 

 ケロタンは遠くに見えるジェットコースターを指差す。

 

 「そういうのは友と行け。分かってるだろ。今回は遊びに来たのではないぞ。」

 「遊んだっていいだろ! アグランの御蔭で俺はタダで入れてるんだぜ!」

 「とにかく用を済ませるのが先だ。」

 

 アグニスは店には目もくれず、目的地に向かって真っ直ぐ歩いていく。

 

 「なぁ、ホットドッグだけじゃ足りねーよ。あっ、ハンバーガ食おうぜ!」

 

 ケロタンは見えてきたハンバーガーショップ――ヘルヘルバーガーを指差す。

 

 「…………。」

 

 アグニスは服の袖の球体をいじり、空中に時刻を表示した。

 

 【AM 11:56

 

 確かに、もう昼飯の時間だ。

 

 「ぐぅ~!!」

 

 ケロタンアグニスの腹の辺りで声を出す。

 

 「ぐぅ~~~!!」

 「やめんか!」

 「ぐあッ!!」

 

 アグニスの拳がケロタンの顔面を捉え、腹の虫は収まった。

 

 

 ハンバーガーショップ「ヘルヘルバーガー」 ◆

 

 

 「んー、この味堪んねぇ!」

 

 ケロタンは席に着くと、早速、ハンバーガにかぶりついた。

 彼が注文したのは、丸い目の模様が2つ描かれた、ケロケロバーガー。野菜がたっぷりで栄養満点だ。

 一方、アグニスが注文したのは、爆発するような辛さが売りのヘルボルケーノ。火山のような見た目をしていて、見るからに熱くて辛そうである。

 

 「んおっ!? おい、そんなの食べて大丈夫なのか、アグラン!」

 

 赤い包装紙の中から姿を現したそのミニチュアのトラウマに、ケロタンはツッコまずにはいられなかった。

 

 「新商品だそうだ。中々見た目が良い。」

 「ひえー。」

 

 ケロタンアグニスに背を向けた。

 

 (……変な奴だ。)

 

 「まぁいいそのままで。ここのオーナーの話をしておこう。聞け。」

 

 アグニスはこれから会う予定の人物――ヘルヘルランドオーナーヘルシーについて話し出す。

 

 「彼は一昔前に活躍していたスポーツ選手でな。

  フットボール水泳格闘技モンスターハントなど、あらゆる競技オールマイティにこなす超万能選手だった。

  しかし彼は、ある時から老いによる体力の低下を感じ始め、いつか追い抜かれるんじゃないか、この輝かしい時間の終わりが近いのではないか、そんな恐怖にさいなまれるようになった。

 

  そして、それに耐え切れなくなった彼は、に手を出した。

 

  過剰なドーピングが原因で体調を崩し、結局、バレて追放。

  その後は病院に入院し、集中治療。

  世間からの評価は地に落ち、彼の人生は完全に終わった。

 

  ――かに見えた。

 

  目を覚ました彼は、自分の身体が異様に軽いことに気が付いたという。

  そう、彼の身体には不思議な変化が起こっていた。

  なんとあらゆる病気を撥ね付け、怪我を負っても瞬時に回復する、超健康な無敵ボディを手に入れていたのだ。

  医師達は彼の身体を徹底的に検査したが、突然変異としか言いようのない変わりようだったという。

  退院した彼は、これを神の慈悲と思い込み、身体の奥底から溢れ出る力に身を任せるまま、世の為、人の為、様々な事業に手を出し、成功を収め続け、今、この巨大テーマパークオーナーに至る――という訳だ。」

 

 「……創作か何か?」

 「いや、実話だ。ドキュメンタリー番組も作られている。」

 「ん……まぁいいや、で、そいつが勇者の石、持ってる訳か。」

 「ああ、彼がダイバーとして海の調査をしていた頃、深海で発見したそうでな。

  他に見つけた宝物と一緒に、縁起ものとして部屋に飾っていると聞いた。」

 「それ、すんなり渡してくれるのか?」

 「もう話は付けてある。私は彼のイメージ回復に貢献しているし、二つ返事でOKしてくれた。」

 「へぇ~、んぐんぐ。」

 

 

 ◆ ヘルヘルランド・オーナーハウス ◆

 

 

 「ようこそお越しくださいました、アグニス王!!」

 

 ケロタン達を出迎えたのは、身長2mは越えているであろう大きなノーマン

 元スポーツ選手と聞いていたが、体型はぽっちゃり。

 白米のように真っ白い肌と、綺麗な笑顔が眩しい。

 

 「……アグラン。どうすればいい? 伝説が目の前にいる。」

 「私の後ろで止まっていろ。何も喋るな。」

 「分かった。」

 

 「こんにちはー!!

 

 「脳に障害でもあるのかお前。」

 「おおっ、ナイス、元気なボーイだね! 良い挨拶だ!」

 

 ヘルシーは巨大な拳でサムズアップ

 

 「俺の名はケロタン!」

 「私はヘルシー!」

 

 ケロタンの手を、ヘルシーの分厚く大きな手がガシッと包み込む。

 出会って、十数秒。ここに確かな友情が生まれた。

 

 「ヘルシー勇者の石だが。」

 「はい、ここに用意してあります。傷一つ付けていませんから、ご安心を。」

 

 ヘルシー勇者の石が入った四角いケースをアグニスに渡した。

 

 「ん? 済んだか? じゃあ、遊ぼうぜ!」

 「お前、目的を忘れたのか?」

 「これも必要なことなんだ!」

 「おお、そうです! アグニス様もたまには息抜きなされるといい! その方が仕事の効率も上がるでしょう!

  丁度、今日の14時セントラルエリアビッグ・オークションが開催されます。

  見るだけでも楽しめますよ。行ってみてはいかがです?」

 

 ヘルシーオークションパンフレットケロタンアグニスに渡す。

 

 「おおー。」

 「ふむ……、面白そうだな。をタダで譲ってもらうのも気が引けていたところだ。金を落としていくことにしよう。」

 

 ケロタンアグニスオークション会場へ向かうことにする。

 

 「俺一度やってみたかったんだ! 落札ってやつ!」

 「私の金はやらんぞ。」

 

 「はっはっは! 欲望の赴くまま! お楽しみください!」