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『ケロタン』第2話「勇者の石」(2/3)

ケロタン勇者の石+2

 

 

 ◆ ヘルヘルランド・セントラルエリア ◆

 

 

 【ビッグ・オークション】。それはヘルヘルランドでひと月に三回だけ開かれる、特別なオークションだ。

 

 台風の過ぎた後の綺麗な青空の下、席に座り、待つこと数十分。時刻は14時前。

 セントラルエリアの会場には、ケロタンアグニスを含め、多くの人々が集まっていた。

 その中には、いかにも金持ちといった風体の者もいるが、全体的に普通の客が多い。パンフレットにも書いてある通り、このオークションはお金の無い一般市民も楽しめるよう、工夫がなされているのだ。

 

 ケロタンは入口で受け取った――ヘルシーの顔が描かれた金色のカードを見つめた。

 何だか少しリッチな気分だ。

 

 《♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 「おっ。」

 

 スピーカーから陽気な音楽が流れ出した。

 

 それは始まりの合図。

 舞台袖から一人の男が現れ、設置されたマイクを手に取る。

 

 「ようこそ! ビッグ・オークションへ!!」

 

 現れたのは、シルシルTV局アナウンサーとして有名なノーマン――シカーイ

 

 「皆さま、台風の後にもかかわらず、今回も会場いっぱいにお集まりいただき、ありがとうございます!

  今回も選りすぐりの商品を取り揃えているので、最後までお楽しみください!

  司会進行はお馴染み、私、シカーイが務めさせていただきます!」

 

 《パチパチパチパチ!!》

 

 シカーイの挨拶で、会場は拍手に包まれる。

 

 「あの人、ほんと何処にでも出てくるよな。」

 

 安定の――という奴である。

 

 実際、シカーイ以外の司会を見たことがない人もいるほど、彼はあらゆる番組・イベントに引っ張りだこ。その行動スケジュールは謎に包まれていて、巷ではシカーイ複数人説がまことしやかに囁かれている程だ。

 

 「ふっ……。」

 

 アグニスは何やら訳知り顔だが、業界の闇という奴なのだろうか。

 

 「後日、このオークションの模様は各種メディアで報道される。お前は私の連れなんだ。悪目立ちはするなよ、ケロタン。」

 

 「分かってるって。」

 

 「……警戒が必要だな。」

 

 最早、ケロタンの言葉は何一つ信じられない。

 

 「皆さま、入口でこのカードはお受け取りになったでしょうか? 貰っていないという方は、係員にお申し付けください。」

 

 シカーイ金色のカードを掲げ、舞台奥のモニターにも、その様子が映し出される。

 

 「そして、お持ちの方は、目の前の机の上にあるカードリーダーに、これをお挿しください。」

 

 モニターに手順が表示され、ケロタンアグニス、そして他の客達は、その通りにカードを挿していく。

 

 《ピッ!》

 

 すると、その横の小さなモニターに数字が表示された。

 

 「おめでとうございます! 皆さまのカードにボーナスマネーがチャージされました!

  本オークションの一部の商品は、このマネーを使って落札することが可能です。

  完全無償なので、どうぞ遠慮なくお使いください。」

 

 「すげー、太っ腹だよな。」

 

 「一応、言っておくが、その金を持ち帰れる訳じゃないからな。」

 

 落札できなければ無に等しい。

 

 「皆さん、準備は完了したようですね。では、参りましょう!

  本日、最初の商品は、こちらです!」

 

 《プシュー!!》

 

 シカーイが腕を伸ばすと、それに合わせてステージの床が開閉。そこから白い煙が溢れ、中から商品が姿を現した。

 

 「ロットナンバー01ヘルシープロプロテインドリンク一ヶ月分!!」

 

 《ヘルシィー!!

 

 商品の紹介直後、モニターにヘルシーの顔マークが大きく表示された。

 

 「早速、出ました! スーパーヘルシー!! この商品はボーナスマネーでのみ落札が可能です!」

 

 「おお!」

 

 「まずはVTRをどうぞ!」

 

 シカーイがそう言うと、ステージのモニターと各席のモニターに映像が流れ始める。

 

 《あの超優良健康食品メーカーヘルシープロから、一ヶ月分プロテインドリンクが登場!

  アマチュアからプロまで、多くのスポーツ選手や冒険者が愛飲している超人気商品!

 タンパク質含有量は、なんと一本50g

 味の種類も豊富で、飲みやすいと評判! 効果実感の声も多数寄せられております!!

 運動後に訪れるゴールデンタイムに、貴方もこれを飲み続ければ、一ヶ月後にはムキムキボディをゲット!! もうどんなピンチも怖くない!!》

 

 「俺のこの腕も太くなるのか!?」

 

 興奮するケロタン

 

 「それでは入札のルールを説明しましょう!

  この商品が欲しい! と思った方は、モニターに提示額を入力し、入札ボタンをタップしてください!

  一定時間後、皆さまの入札額を一斉に公開し、最も額が高かったお客様に、この商品を差し上げます。

  ちなみに! 入札に使った分のマネーは負けても失われてしまうので、ご注意ください!」

 

 「ってことは、チャンスは一度きり……。最初の入札額で勝負するのか……。」

 

 「しかも、負けた場合も、入力した分のマネーは失われてしまう。さて、どうする?」

 

 「う~ん、悩む。あれの価値って、普通どんくらい?」

 

 「一ヶ月分なら、100ちょっとくらいだろう。」

 

 「そうか……ところで、俺プロテインってよく知らないんだけど……。」

 

 「はぁ……分かってないのか……。」

 

 アグニスは呆れる。

 

 「三大栄養素の一つ、タンパク質のことだ。筋肉や骨など、体を作るのに必要になる。普通の者なら、一日の食事で十分な量をとれるが、長時間、激しい運動をする者は、多く消費するからその分必要量が多い。

  だからスポーツ選手なんかは、ああいうもので補っているんだ。」

 

 「へぇ~、じゃあ欲しいな。」

 

 「チャージされたマネーは1000ライドだが、どうする?」

 

 「う~ん、確実に手に入れるんだったら、全額突っ込めばいい訳か……。」

 

 「もし他にそうした奴がいたら、ジャンケンかその他の方法で決めることになるがな。パンフレットをよく読め。」

 

 「うう~ん……!! アグラン頼む! 後であれ買ってくれ!」

 

 「……はぁ、見合う働きをすれば考えよう。」

 

 「皆さま、入札はできましたでしょうか?

  それでは見ていきましょう!」

 

 シカーイがリモコンのボタンを押すと、全員の入札額が次々と公開され――。

 そして、最も入札額の多い者の席が激しく点滅する。

 

 「おめでとうございます! 503ライドの方、見事落札です!!」

 

 中々体格の良いノーマンがガッツポーズを決め、他の客は拍手を送る。

 

 「う~ん、504ライドなら勝ってたか。」

 

 「そんなピンポイントで狙えれば苦労はしないだろう。

  ただ、ライバルは少なかったようだな。」

 

 机のモニターには全員の入札金額が表示されている。

 見ると、確かに0が多い。

 

 「ああっ! アグラン! 画面をキャプチャしてくれ! 覚えられねぇ!!」

 

 「よく見ろ。左下のボタンから履歴が見れる。」

 

 「おっ。」

 

 《グイーン……!》

 

 商品が床下に戻り、次の商品の準備に入る。

 

 「落札者の方は、オークション終了後に画面が切り替わりますので、そこに商品送付先の住所を入力してください。

  そして惜しくも落札できなかった方、気を落とす必要はございません!

  まだまだ多くのチャンスがあります!」

 

 「続いての商品はこちら!!」

 

 《プシュー!!》

 

 先程と同じように、ステージの床が開閉。白煙と共に商品が現れる。

 

 「ロットナンバー02、あの大人気TCGTower of Rankers最新カード! 《紺碧の巨神ジアズ》! レジェンドレア!!」

 

 「何っ!?」

 

 モニターにはカードに描かれたモンスターの映像が流れ始める。

 

 「これは……、ああ、アニメのカードか。」

 

 「アグラン見てないのかよ! すげー、面白いのに!」

 

 「もう、ああいうものを楽しめる歳ではなくてな。」

 

 「う~ん、レジェンドレア……普通に当てようと思ったら相当運が良くないと……。」

 

 「確か封入率は4BOXに1枚程度だったか。」

 

 「それは知ってるのかよ……。」

 

 《ヘルシィー!!》

 

 「またまた出ました! スーパーヘルシー! この商品もボーナスマネーでのみ落札が可能です!」

 

 「くそ……、ちょっと欲しい。」

 

 ケロタンは前のめりになり、入力を始める。

 

 「い、1ライドでいけるかな?」

 

 「他にいなければな……。」

 

 そう言われ、ケロタンは辺りを見回す。

 

 先程よりもライバルが多い気がする。

 

 「ああ~、駄目だ。絶対1000ライド出す奴いるだろ。」

 

 「そんな簡単に諦められるのなら、本当に欲しい物ではないんだろう。」

 

 「それでは! 入札額公開です!!」

 

 シカーイが再びリモコンのボタンを押し、入札額が公開。

 

 案の定、1000ライドを入札した客が何人かいた。

 

 「金額が被った場合の勝負方法は、ルーレットで決定します!」

 

 ステージのモニターがルーレットの画面に切り替わり、すぐに回り始める。

 

 ジャンケン、リアルマネー、巨大サイコロ、他にも様々な勝負方法があるようだが……。

 

 「さて、針が指し示すのは……!?」

 

 【ボタン連打

 

 「ボタン連打です!!」

 

 《ウィーン!》

 

 ルーレットが消えると同時に、1000ライドを入札した者の席に大きめのボタンが出現した。

 

 「三十秒間にボタンを何回連打できるか……!? 非常にシンプルな勝負です!

  準備はよろしいでしょうか!? それではスタート!!」

 

 開始の合図と共に、一斉に始まる連打。殴打。

 

 「……!!」

 

 ある者は無心。

 

 「うおおおおおお!!」

 

 ある者は大声。

 

 「ああああああ!?!?!?!!?」

 

 ある者は狂気。

 

 彼らはたった一枚のカードを手に入れる為、己が片腕を犠牲にしてゆく。

 

 「凄いな。」

 

 「敵に回しちゃいけねぇよ……。」

 

 ケロタンアグニスは、コレクター達の熱にただただ圧倒されるのであった。

 

 「そこまで!!

  最も連打数が多かったのは……そこの方!! なんと記録は118回!!」

 

 《パチパチパチパチ!!》

 

 眼鏡をかけたノーマンは連打に使った腕を力なく掲げ、客は拍手を送った。

 

 「さぁ、どんどん行きましょう!

  三番目の商品は……こちらです!!」

 

 《プシュオー!!》

 

 「んっ!?」

 

 ケロタンは目を見開いた。

 

 先程よりも白煙の量が多い。

 

 そして見える影は……さっきまでとは比べ物にならない大きさ!

 

 「ロットナンバー03リクウス最新魔導車ネイツァー!!」

 

 白煙の中から現れたのは、なんと一台の車!

 

 《ウルトラヘルシィー!!

 

 モニターには、前の2回より豪華な演出でヘルシーの顔マークが表示された。

 

 「早くも来ました! ウルトラヘルシィー!! 高額商品の登場です!!」

 

 「「「おおー!!」」」

 

 太陽の光に照らされ美しい輝きを放つ新型車に、会場全体が大きく沸く。

 

 「これはリアルマネーでのみ落札が可能となります!

  ルールはこれまでと違い、通常の形式で行うので、皆さんじゃんじゃんご入札ください!

  と、その前に、まずはVTRです!」

 

 モニターにネイツァーの紹介映像が流れ出す。

 

 最新のAIと事故防止システム。荒れた道から水の中まで、どんな環境でも快適に走行できる脅威の性能。なんと空を飛ぶこともできるらしい。

 

 《世界を旅する車――ネイツァー。まだ見ぬ地を求める貴方へ。》

 

 「かっけぇ……、やっぱ直線より流線形だよな。」

 

 「……そういえばお前、車のライセンスは持っているのか?」

 

 「ん? いや、持ってないよ。車買う金もないし。」

 

 「今後、大陸中を飛び回ることになる。金はやるから、二輪のライセンスくらいは取っておいたらどうだ?」

 

 「そうだな、考えとく。」

 

 「さぁ、始めましょう。この商品は10000ライドからスタート。

  決心ができた方は、どんどんご入札ください。開始です!」

 

 「12000!」

 「15000!」

 「20000!」

 

 入札が始まり、ハイスピードで吊り上がっていく価格。それを読み上げるシカーイ

 先程までとは次元の違う戦いに、会場は一気に緊張感に包まれた。

 

 「30000!」

 「32000!」

 「50000!」

 「現在、50000です! さぁ、他にいらっしゃいませんか!?」

 

 「うおお……、なぁ、アグラン。今、俺が60000とか言ったらどうなる?」

 

 「冒険の目的が変わる。」

 

 「55000!!」

 

 入札者は絞られていき、遂に二者の戦いになった。他の客は固唾を飲んでそれを見守る。

 

 「70000!」

 

 思い切った金額。

 

 「70000! 現在の価格は70000です! さぁ、どうでしょうか!?」

 

 「……っ。」

 

 もう一人の方は一瞬考え込むと、諦めたように席の背もたれに背中を預けた。

 

 《カーン!!》

 

 落札者が決まると、いつの間にかハンマーを手にしていたシカーイがそれを振り下ろした。

 

 《パチパチパチパチ!!》

 

 同時に盛大な拍手が巻き起こる。

 

 「それでは、落札者の方、ステージの方にどうぞ!!」

 

 シカーイに招かれたラド族

 高級ブランドの服に身を包む彼は、とある製薬会社の社長だそうで、落札の理由を聞かれると、今度、家族と一緒に西方への旅行を考えていると、笑顔で答えた。

 

 「西方か……。俺、そこまで行ったことないから詳しく知らないんだよな。金持ちが沢山住んでるって話はよく聞くけど……。」

 

 「う~む、旅行というと、やはりアルミラ城のあるクリスタルシティだろうな。何回か行っているが、あそこほど豊かで綺麗な街は他に無い。」

 

 「くそ、羨ましいぜ……。」

 

 「私は好かんがな。」

 

 アグニスは溜息混じりにそう言った。何かあるのだろうか?

 

 「では、次の商品に参りましょう! こちらです!!」

 

 《プシュー!!》

 

 白煙から新たな商品が顔を出す。

 

 「ロットナンバー04ミュージカルタウン出身の大人気ミュージシャンチェスカー氏の直筆サイン入りCD&来月に予定されている一大ライブイベントの入場チケット!!

  こちらの商品は三組あるので、入札額上位三名様にプレゼント!」

 

 《ヘルシィー!!》

 

 「またまたスーパーヘルシー!! ボーナスマネーで落札可能です!!」

 

 「「「おお~!!」」」

 

 ダイナミックな歌と踊りで女性だけでなく男性も魅了するイケメンミュージシャンチェスカーのCDとライブチケットが実質タダ。

 これはまた全額突っ込む客が出てきそうな商品だ。

 

 「う~ん、ライブかぁ。あんま興味無いな。」

 

 「テレビやネットで見るのとはまた違うと思うぞ? このオークションだって――」

 

 「勘違いすんなって。俺は他人がやってるのを見るより、自分でやりたい派なんだ!」

 

 「ほぉ? 得意な楽器を言ってみろ。」

 

 「太鼓!」

 

 「目に浮かぶな。」

 

 「だろ!」

 

 達人かもしれない。

 

 「ルーレット! ゴー!!」

 

 そんなやり取りをしている内に、1000ライドを突っ込んだ者達の勝負方法が決まる。

 

 【似顔絵

 

 一斉に始まったのは、チェスカー似顔絵勝負。

 制限時間は二分。モニターに指で描くので難易度は高め。

 採点は機械により行われ、上位三名が選ばれる仕組みらしい。

 

 「さぁ、点数の高かった三名は、こちらです!」

 

 勝負が終わると、一位、二位、三位の絵が公開。それぞれ少し癖はあるものの、どれもチェスカーの顔を見事に再現できている。

 

 「選ばれた方、おめでとうございます!

  どれもファンの愛が伝わってくる素晴らしい似顔絵でした! 後ほど、このオークションハイライト映像が動画サイトにアップされるので、もしかしたらチェスカー氏も目にするかもしれません!」

 

 「う~ん、似顔絵なんて描かれて嬉しいのか?」

 

 「気になるなら、本人に聞いてみたらどうだ?」

 

 これに関しては、流石のアグニスも分からないようだ。

 

 「では、次の商品に行きましょう!」

 

 《プシュー!!》

 

 「ロットナンバー05黄金牧場ゴールデンウィンナー!」

 

 《ヘルシィー!!》

 

 「うおぉ! マジか!?」

 

 思わぬ商品の登場に、席から飛び出しそうになるケロタン

 

 モニターには商品のCMが流れ、目は釘付けである。

 

 「勿論これだけではございません! 更に黄金牧場特別見学ツアーへの招待券も付きます! 毎日の食卓に並ぶ美味しいお肉の秘密を知りたい方は、是非ご入札ください!」

 

 「ッ!」

 

 こうなるとケロタンはとにかく速い。

 入札画面が表示されると、悩むことなく、1000ライドを入札。

 

 「ちょ、ちょっと待て。流石にそんなに出す奴はいないだろう。」

 

 「俺がいる。」

 

 「…………。」

 

 結果は勿論、ケロタンの圧倒的勝利であった。

 

 「いやぁ、驚きの値が付きました!  こちらとしても、この商品を選んだ甲斐があります!」

  

 「ふぅー、俺はもう満足だ。」

 

 幸せそうな表情で背もたれに寄りかかるケロタン

 

 《ヘルシィー!》

 

 「おおっと! ここでボーナスタイムに突入!!

  出題されるクイズに正解すればするほど、ボーナスマネーが獲得できます!」

 

 「おっしゃ来たぁ!! これを見越しての全ブッパよ!」

 

 「そうは見えなかったがな……。」

 

 「問題は全五問。難易度は徐々に上がっていきます。難しい問題ほど獲得できるマネーが多く、全問正解した方には更に多くのマネーを差し上げますので、皆さんそれを目指して頑張ってください。」

 

 「では始めます。第1問

  ここインド大陸東部を治める王の名前は!?

  制限時間20秒! モニターに入力してお答えください!」

 

 「何だ、すげー簡単じゃん。これは間違える奴いないだろ。」

 

 ケロタン含め、他の客も迷うことなく答えを入力する。

 

 「時間です! さて、ウォーミングアップレベの問題でしたが、皆さま、ちゃんと入力できましたでしょうか?」

 

 シカーイがリモコンのボタンを押し、モニターに結果を表示する。

 

 「うおっ、見ろアグラン! 一人だけ間違えてる奴がいるぜ。誰だよ。お? あれ? あの位置。あの位置って……あっ、俺じゃん……。」

 

 「おっと、一名の方が不正解になっているようです。入力ミスでしょうか?」

 

 シカーイケロタンの入力した答えを大きく表示する。

 

 アグラン

 

 「あっ!? おい! 間違ってないぞ!!」

 

 「残念! 正解は【アグニス】もしくは【アグニス・ランパード】です!」

 

  「じゃあ、アグランでもいいだろ!」

 

  「ケロタン。これ以上醜態を晒すな。」

 

 まぁ、ロッグ族の名前は基本的に~anで終わるのが一般的だ。似たような形の方が呼びやすいのは分かる。

 

 「入力ミスにはお気を付けください。

  では第二問です!

  戦後に誕生した治安維持組織――警殺

  彼らは今日もインド大陸に存在する国家の平和を守っている訳ですが、次の内、彼らの仕事でないのはどれ?

 

  ① 危険な魔物の討伐

  ② 住民のお悩み相談

  ③ 犯罪への対処

  ④ ダンジョンの攻略

 

  正しいと思った答えを選択してください!」

 

 「よし、分かった!」

 

 ケロタンを選択する。

 

 「正解はです!」

 

 「何ィ!?」

 

 ケロタン、またしても外す。

 

 「住民の悩みを聞くのも、警殺の立派な仕事だぞ。」

 

 「魔物が巣食うダンジョンの攻略は、警殺ではなく、例えば冒険者ギルドの仕事ですね!」

 

 「嘘だ! 俺、メッタギリィダンジョンで暴れてるの見たことあるぞ!」

 

 「…………。」

 

 呆れて物も言えない。

 

 「第三問、行きましょう!

  こちらの画像をご覧ください!」

 

 モニターに一匹の小さな魔物の写真が映し出された。

 頭だけのドラゴンみたいな……確かプチドラという魔物だ。

 

 「この魔物の名前は何でしょう!?」

 

 「おっ? 三問目なのに妙に簡単だな。有名な魔物じゃん。」

 

 「そうだな。有名な魔物だな。」

 

 ケロタンアグニス、他の客も答えを入力していく。

 

 「プチドラと答えた方、不正解です!!」

 

 「はぁ!? どう見てもあの雑魚だろ!?」

 

 ケロタン憤慨するが、アグニスは正解しているようで、落ち着き払っている。

 

 「引っかけ問題だったな。

  よく見ろ、ケロタン。二本の触角が生えているだろう?」

 

 「ん? たまにある奴も見るけど、何か違うのか?」

 

 「正解を発表します。これはデースという魔物です。

  弱い魔物寄生して操る、頭が少し膨らんだミミズのような魔物ですね。」

 

 「うええっ!? 気持ち悪っ! あれ別の魔物だったのか!?」

 

 「南では大きな個体も発見されている。プチドラに寄生するような小さなデースなら危険性は低いが、大きなものは我々も寄生対象にする。注意することだ。」

 

 「俺の体は大丈夫かな。」

 

 「……町で調べた時に異常は無かった。安心しろ。」

 

 ケロタンはほっと胸を撫で下ろした。

 

 「では、第四問です!

  魔法を使用するのに必要な三つのもの! それは何でしょうか?」

 

 「三つ? んー……。」

 

 ケロタンは考え込むが、魔科学者であるアグニスは淀みなく解答を入力していく。

 

 「そこまで! 魔法の勉強をしている方には簡単だったかもしれませんね。

  答えはこちらです!」

 

 【魔力・魔法陣・詠唱

 

 「ケロタン、何と答えた?」

 

 「ウィンナー・気合い・技名……。」

 

 「一つも合ってないのか……。」

 

 「でも俺、魔法陣詠唱が無くても魔法使えるぜ?」

 

 「お前のあれは正確には異能と呼ばれる、先天的に備わった能力だろう。魔力さえあれば誰でも使える魔法とは違う。」

 

 「アグラン魔法陣描いたり、詠唱してないじゃん。」

 

 「今の魔法は機械で手順を省略できる。」

 

 アグニスは服の袖の球体をケロタンに見せつけた。

 

 「何か夢がねぇなぁ。」

 

 「もたもたと魔法陣を描いたり、詠唱したりする哀れな時代はとっくの昔に終わっている。

  まぁ、万が一の時に備えて、知識は持っておいた方がいいがな。」

 

 「さぁ、ラストです!

  次の内、最も広い範囲を守れる防衛魔法はどれでしょう!?」

 

  ① エクトリオン

  ② パルシパリィ

  ③ ジオドルム

 

 「やべぇ、どれも聞いたことないんだが……。」

 

 「幸いにも選択式だ。適当に答えれば当たるかもしれんぞ?」

 

 「んんー……、俺的にはエクトリオンかな。何かかっこいいし……。」

 

 ケロタンアグニスの方をチラ見する。

 

 「何だ? 私の反応を窺うのはやめろ。」

 

 「だってこのままじゃ俺、全問不正解だよ!」

 

 「結構なことだ。」

 

 「くそ……どうにか……。」

 

 ケロタンは他の客のモニターを覗こうとする。

 

 「マナーを守れ、退場させられるぞ。」

 

 《ピッピッピッピッピッピ!

 

 「んっ? おい、アグラン。携帯鳴ってるぞ。お前だってマナー――」

 

 「っ!?」

 

 アグニスは驚き、腕を見た。

 携帯ではない。

 服の袖の球体の一部が点滅し、音を出している。

 

 「まさか……!」

 

 アグニスは立ち上がり、空を見上げた。

 

 袖の球体を操作し、ある魔法を起動する。

 

 「どっ、どうした?」

 

 ケロタンもつられて空を見るが、綺麗な青空に異常は無い。

 

 「くっ!」

 

 しかしアグニスはなんと席を飛び出して走り、ステージに上がり込んだ。

 

 「えっ……!?」「何だ……!?」 「アグニス様だ……。」

 

 王の突然の奇行に客達は困惑。ケロタンも何が何だか分からない。

 

 「アグニス様、どうし――」

 

 「《ジオドルム》!!」

 

 「ええっ!?」

 

 シカーイは驚いた。

 

 アグニスが使用したのは、問題の答えである防衛魔法

 

 正三角形の障壁が多数展開され、ビッグ・オークションの会場を瞬時に覆っていく。

 

 直後――。

 

 《ガアアアァァァアアン!!

 

 大きな音が響き、障壁の頂点に激しい魔力の火花が散り始めた!