ネシオのブログ

ネシオのブログです。興味のあるゲームやアニメ、漫画や映画のことを書いています。オリジナル作品の制作日記も公開中。

ネシオのブログ

MENU

『ケロタン』第2話「勇者の石」(3/3)

ケロタン:勇者の石+2

 

 《シュー!! シュー!!

 

 聞こえてくる激しい空気の音。それに合わせ大きく歪む障壁。

 察しの良い者はすぐに気付いたことだろう。

 

 「」が攻めてきたのだと。

 

 しかし、その正体は分からない。姿が全く見えないのだ。

 

 「アグラン! 何が起きてんだ!?」

 

 片手を掲げ、障壁を維持するアグニスに、ケロタンは駆け寄る。

 

 「魔物の襲撃だ。空から攻めてくるとはな……! 索敵の範囲をいつもより広げていて良かった。」

 

 姿を消すことができる魔物の存在はケロタンも聞いたことがある。

 しかし、障壁の歪みからして相当に巨大。アグニスは汗一つかいていないが、朝のような緊急事態であることは明白だ。

 

 「ケロタンシカーイ! 今から出口を作る。客の誘導を頼むぞ。」

 「分かりました!!」

 

 シカーイも状況は飲み込めたようで、ケロタンと共に客に避難を呼びかけていく。

 

 「みっ、皆! 何か起きてるから逃げるぞ!」

 

 「何かって!?」 「オークションは!?」 「ママー、あれ何?」

 

 「うるせぇ! つべこべ言う奴は撃つぞ!」

 

 ケロタンは両手を発光させ、凄んだ。

 客達は顔を見合わせ、仕方なく指示に従うことにする。

 

 《シュー!! シュー!!

 

 しかし、客が逃げても透明の魔物は突撃をやめない。

 空気を激しく噴射し、一心不乱に障壁を歪ませている。

 

 (成程、今回の狙いは私か。)

 

 アグニスは顔をしかめた。

 

 (それでは少々……。)

 

 《シュオーッ!!

 

 《ガキィイイイン!!》《ズガアアァァン!!

 

 遂に限界を迎えた障壁。不可視の魔物はそのまま会場に突っ込み、ステージを破壊。

 だが――既にそこにアグニスの姿は無かった。何処に消えたのか。

 

 《シュオーッ!!

 

 目標を見失った魔物は再び空高く舞い上がった。

 

 

 ◆ ヘルヘルランド・オークション会場前 ◆

 

 

 「あっ、アグラン……。」

 

 会場の外で障壁が破られる瞬間を見ていたケロタンは、その後の大きな音と破壊されたステージを見て青褪めた。

 アグニスの姿が何処にも見当たらない。魔物に潰されてしまったのか……。

 ケロタンの脳裏にアグニスとの浅過ぎる日々の記憶がよみがえる。

 

 「アグラン、俺はお前のことを忘れなーー」

 

 その時ーー。

 

 《シュッ!

 

 アグニスが隣に出現した。

 

 「うわぁっ! 化けて出んの早過ぎ!」

 「短距離転移魔法だ。構えろ、来るぞ。」

 

 《シュオーッ!!

 

 再度、目標を捉えた魔物は、それに向けて滑空。

 姿は見えずとも、音で大体の距離は掴める。

 

 「どうすりゃいいんだあんなの!?」

 

 ケロタンは混乱しているが、こっちに真っ直ぐ向かって来る上に体は巨大。攻撃を当てるのは容易い。

 

 アグニスはある攻撃魔法を起動した。

 目の前に赤く大きな魔法陣が出現し、そこから光り輝く火の球が放たれる。

 

 《ドオォォン!!

 

 それは魔物にステルスを解除させるのに十分な威力であった。

 

 「何だありゃあ……。」

 

 ケロタンはようやく目視する。

 

 不可視の魔物の姿――それは巨大なエイであった。

 無論、普通の種ではない。

 全身は真っ黒な外殻に覆われ、胸鰭むなびれは刃のように鋭くなっている。

 正面は骸骨に似ていて不気味だが、お腹は満面の笑みだ。

 

 「ふざけてんのか。」

 

 思わず突っ込んだケロタンだったが、普通のエイもあんな感じだったかもしれない。

 

 「ふざけているかどうかはともかくだ。あのまま空を飛ばれては厄介だぞ。」

 

 《シュー!

 

 突然、魔物は身を反らし、地面と垂直に飛び始めた。

 

 《シュオーッ!!

 

 そして次の瞬間! ジェット噴射で急加速!!

 

 「っ!」 「なっ!?」

 

 二人は反射的に横に飛び退いた。

 

 《ギュンッ!!

 

 数瞬前にケロタン達のいた地面が鋭い胸鰭に抉り去られる。

 

 「危ねっ!」

 

 《シュオーッ!!

 

 「また来るぞ!!」

 

 《ギュンッ!!

 

 《ギュンッ!!

 

 《ギュンッ!!

 

 《ギュンッ!!

 

 それはまるで高速で追尾してくる振り子刃の如く。

 ケロタン達は建物に隠れる訳にもいかず、逃げ惑った。

 

 「くっそ! 避けるのに精一杯なんだが!」

 

 《ドオォォン!!

 

 しかし、アグニスの魔法がまた魔物に命中!

 地獄のような攻撃は一旦止まった。

 

 「大丈夫か。」

 「はぁ……はぁ……。」

 

 ケロタンは息を整える。

 

 「あれ……?」

 

 その時、彼は気付いた。

 何故か魔物に抉られた地面が綺麗に元通りになっていることに。

 

 「そうか、ここは夢の国……。」

 「違う。パーク全体に修復魔法がかかってるだけだ。ここでは多少暴れても問題ない。」

 「おお。じゃあ、遠慮なく……!!」

 

 ケロタンは両手を発光させる。

 

 「あれ? 魔物何処行った?」

 「あそこだ。」

 

 アグニスが指差したのは、子ども向けのアトラクションが集まるモウイッパイランの方角だった。

 魔物はそこに向かっている。

 

 「やばい! 急ぐぞ!」

 

 ケロタンは近くにあった自転車レンタルショップから一台をパクり、走らせた。

 

  《チリン! チリン!》「ああっ! お客さん! お金!」

 

 「とっておけ。」

 

 アグニスがすかさず補填する。

 

 

 ◆ ヘルヘルランド・ハイウェイ ◆

 

 

 《シュ! シュオー!! シュシュ!! シュオー!!

 

 「何だ? 動きがおかしくなってないか!?」

 

 ダメージの所為か、魔物の飛び方が不安定になっていた。これでは何処に落ちてくるか分からない。

 

 「うおおお!!」

 

 ケロタンケイデンスを上げ、ヘルヘルランドのエリアとエリアを繋ぐハイウェイをハイスピードで駆ける。

 

 「何だあいつ!」 「滅茶苦茶速いぞ!」

 

 ケロタンに抜かされた他の客は負けじとケイデンスを上げ、追い縋る。

 目的地に着く頃には、ケロタンは団体を引き連れていた。

 

 「何だこれ、俺のファン?」

 

 「いやぁ、凄いね君。僕の自転車、もうパンク寸前だよ。あ、僕はアスリー島で――」

 

 サンバイザーをしたノーマンが何か話しかけてきた。

 

 《ドゴオオォォン!!》「キャー!!

 

 同時に魔物がアトラクションに突っ込んだ。

 

 「頭もパンク寸前だよ。」

 

 「このやろ!!」

 

 ケロタンは自転車を捨てると行列を飛び越え、【ピッツァ・ビッグワールド】の中に入った。

 乗り物は無視し、水の上に魔法の足場を作って奥へ進んでいくケロタン

 途中、巨大なピザやホットドッグのオブジェで気が散りそうになったが、何とか魔物の元に辿り着いた。

 

 魔物は巨大なケーキのオブジェに顔を突っ込み、暴れている。

 破壊された箇所はすぐ魔法で修復されるものの、このままでは客が危ない。

 

 「これでも喰ってろ!」

 

 ケロタンは両手から光球を放ちまくった。

 

 《ドドドドドドドドド!!

 

  《シュオーッ!!

 

 その衝撃に堪らず逃げ出す魔物。壁を破りアトラクションの外へ! ケロタンも後を追う。

 

 「わぁ!? 何だ!?」

 

 ゴーカートに乗っていたノーマンが飛び出した魔物に驚き、停止。

 

 「緊急事態だ! これ借りるぞ!」

 

 「えっ? うおわぁ!?」

 

 ケロタンはそのノーマンを追い出し、ゴーカートに乗り込んだ。

 

 「あ、やべぇ俺、ライセンス持ってない。」

 

 ……まぁ、多分これは大丈夫な奴だろう。万が一の時は心の友であるアグニスがさくっと隠蔽してくれる筈だ。

 

 さて、向かうはハイウェイ

 魔物は……スリムシアターの方に向かっている!

 

 

 ◆ ヘルヘルランド・スリムシアター ◆

 

 

  【スリムシアター】。ここは映画館屋内アトラクションの集まるエリア。

 

 お化け屋敷マジックショー大迷路

 

 中でも人気なのが、多人数参加型の3Dシューティングだ。

 

 《いかん! 巨大な魔物が現れた!  全員の力を合わせて撃ち落とせ!

 

 《シュー!!》《バシュン! バシュン!》 《バシュン! バシュン!

 

 「おい馬鹿、俺を撃つんじゃねぇ! つーか逃げろ!!」

 

  客は全員、得点稼ぎに夢中で異常事態に気付く者は皆無だった。

 

 

 ◆ ヘルヘルランド・タラフクマウンテン ◆

 

 

 次に魔物が向かったのは、絶叫系アトラクションの集まる【タラフクマウンテン】。

 

 《キャー!!》 《ワァー!!》 《シュオーッ!!

 

 「やばい、ジェットコースターにぶつかる!」

 

 ケロタンは行列を飛び越え、乗り場に急いだ。

 

 「待ってくれコースター!」

 「発射しますコースター! ああっお客さん! 危ないですよ!!」

 

 ケロタンは動き出したコースターに飛び乗り、先頭へ移動する。

 

 「悪い! 危ない奴が来てんだ!」

 「大変だ! 通報しないと!!」

 

 《イィィィィィ!!

 

 係員が緊急停止ボタンを押したのか、丁度良い位置でコースターが止まった。

 

 「お兄ちゃんすごーい!」

 「黙れガキ! 集中してんだ!」

 

 魔物はレールを破壊しながらこっちに向かってくる。

 ケロタンは発光させた両手を重ねた。

 

 「《ハイパーケロダン》!!」

 

 《ズバアァァァァン!!

 

 今までよりも大きな光球がケロタンの手から放たれ、魔物に命中!

 頭に強力な衝撃を受け、堪らず空へ逃げる!

 

 「逃がすか!!」

 

 ケロタンはレールを走り、魔物の長い尻尾を掴んだ。

 

 《シュオーッ!!

 

 そして一気に持っていかれる体! ジェット噴射による急上昇! ケロタンは腕に力を入れ、必死にしがみ付いた!

 

 「うおおおっ!? 負けるかぁ……!!」

 

 右へ 左へ 上へ 下へ――激しく揺られるケロタン

 何とか本体に近付こうと、尻尾を伝っていく!

 しかし、危険な尾棘びきょくが彼の進行を妨げる!

 

 「何かすげー尖ってるけど、やばそうだな……。」

 

 恐らく刺さったらジ・エンドだろう。

 

 「さて、どうすりゃいいんだ。何も分からねーぞ。」

 

 下には小さなヘルヘルランド。緊急の放送で人々が避難している様子が見える。

 

 「仕方ねぇ、ここはゴリ押す!」

 

 ケロタンは片手を放し、《ロダン》を本体に向けて撃ちまくった!

 

 《バシュッ!! バシュッ!! バシュッ!!

 

 しかし、まるで効いていない。

 威力の低い《ロダン》では、全て黒い外殻に弾かれてしまう。

 

 「だったらこれだ……!」

 

 キレたケロタンは、今度は片手に御札を生成した。

 それには大きく「ケロ」と書かれている。

 

 「さぁ、痺れてもらうぜ。」

 

 御札魔物の尻尾に貼り付けたケロタンは手を放し、空中に作った足場に着地した。

 

 「《ケロの裁き》!!」

 

 次の瞬間! 何処からともなく落ちてきた魔物の尻尾に直撃!

 そのまま本体まで包み込んだ!

 

 《ビビビビビビビビビビビビビビ!!

 

 「これなら効いただろ……!」

 

 《バァアン! シュオーッ!!

 

 「何っ!?」

 

 魔物は電撃を弾くと、再びジェット噴射でヘルヘルランドへ向かっていく。

 

 「くそっ!」

 

 ケロタンは足場から飛び降り、魔物を追った。

 

 

 ◆ ヘルヘルランド・マンプクコート ◆

 

 

 【マンプクコート】。ここにはスポーツジム運動系のアトラクションが集まっており、誰でも自由にスポーツが楽しめる。アスリートに大人気のエリアである。

 オーナーであるヘルシーも、ここでよく汗を流しているという。

 

 現在、彼は緊急の放送を聞き、アグニスと合流する為、移動している最中であった。

 

  「はっはっはっはっ……! おっ?」

 

 《シュオー!!

 

 音に気付き、空を見上げたヘルシーは、向かってくる黒い物体を目にし、立ち止まった。

 

 「空飛ぶダンベルとは面妖な……んっ?」

 

 「へっ、ヘルシー……! 魔物だ!」

 

 何とかマンプクコートに辿り着いたケロタン。しかし、もう体力の限界を迎えており、その場に倒れてしまった。

 

 「ふむ、侵入を許可した覚えはないな。」

 

 ヘルシーは顎を触ると、身を反らし、拳に力を入れた。

 

 《シュオーッ!!

 

 ジェット噴射し、真っ直ぐ飛んでくる魔物! あれだけ攻撃したのにもかかわらず、まだまだ弱っていない……!

 

 「ヘルシー!!

 

 ケロタンは叫ぶ。お終いなのか。

 

 

 「フンッ!!

 

 《ズドオォォ!!

 

 

 

 

 

 …………それは、例えるなら大砲だった。

 

 ヘルシーのパンチは魔物の体に拳の何倍もの大きさの穴を空けたのだ。

 

 「…………。」

 

 ケロタンはアホみたいに口を開けたまま静止。

 衝撃波で地面が抉れ、魔物の残骸がそこら中に散らばり落ちる。

 

 「う~む、私のサンドバッグよりもろ魔物だ。」

 

 ヘルシーは首を傾げると、ケロタンに目を向けた。

 

 「無事かな! ケロタン君!」

 

 「あ、あぁ……。」

 

 「ところでさっき緊急事態と聞いたのだが、一体何があったのかね……!?」

 

 「…………多分、何かの間違いだよ。それよりちょっと休ませてくれないか。」

 

 

 ◆ 小休止 ◆

 

 

 「倒したか。」

 

 アグニス転移魔法で近くに現れた。

 

 「ん? どうしたケロタン。」

 

 「……アグラン。後でほんとにプロテイン買ってくれ。」

 

 「???」

 

 自分がいかにちっぽけな存在かを思い知ったケロタンであった。

 

 

 ◆ 小休止終わり ◆ 

 

 

 アグニスは服の袖の球体から光を照射し、ほとんど原形を留めていない魔物の分析を行った。

 

 「データベースには登録されていない魔物だ。」

 「ってことは、朝のロボット――いや、スライムと同じ……。」

 「アグニス王!」

 

 丁度、状況を確認しに行ったヘルシーが戻ってきた。

 

 「すまないヘルシー。思わぬ迷惑をかけた。」

 「いえ、私は健康ですから! このくらいのトラブルは何とも。寧ろ、大勢の客を守っていただき、感謝したいくらいです。」

 

 どうやら怪我人は一人も出ていないようだ。

 

 「……この魔物は私を狙ってきていた。」

 「ではまさかシルシルタウンと同じ……。アグニス様の命を狙うとは、不届きな輩もいたものですな。」

 「犯人については警殺・魔科学者と連携し、目下捜索中だ。この魔物は回収する。」

 

 そう言ってアグニスは、収納魔法で、消えずに残った分の魔物の残骸を回収した。

 

 「ケロタン、お前はまだ遊んでいくつもりか?」

 「ん、ああ……。ゴールデンウィンナー受け取らなきゃならないし。」

 「明日また城に来い。私は今後、外出を控えることにする。」

 

 アグニスが去り、ケロタンヘルシーがその場に残された。

 

 「なぁ、ヘルシー。」

 「ん? 何かな?」

 「俺はあんたが羨ましいよ。」

 「ハッハッハ! 誰にだって可能性はあるさ。君も身体を鍛えるといい。方法さえ間違わなければ、きっと強くなれる。」

 「いや、その身体、神様から貰ったんだろ?」

 

 「…………ああ。」

 

 ヘルシーは顔を伏せた。

 

 「これは運が良かったに過ぎない。私は確かに間違えたのだ。」

 「…………。」

 「……そういえば、あの勇者の石。集めると願いが叶うとかいう話だったね。」

 「ああ……ヘルシーはどう思う? 信じてたりするのか?」

 「まさか。何の根拠も無い噂だろう?」

 「そうだけど……もし願いが叶うとしたら、ヘルシーは何を願う? 過去に戻ってやり直すとか?」

 

 「…………。」

 

 ヘルシーは考え込んだ。

 

 「過去に戻る。確かに……考えたことはあるよ。」

 

 「でも」と続ける。

 

 「そんな石の力に頼ってしまったら、もう二度と胸を張って生きていくことができなくなってしまうと思う。」

 「…………。」

 「こんな言葉がある。

  勝利は技と努力によって手に入れるべきもの。後ろ暗い方法で手に入れれば、必ず後悔することになる。」

 「…………。」

 「一時期、スポーツ界は大混乱だった。私の体のことを知った選手達が、隠れて一斉にドーピングを始めたのだ。

  何人かは事前に発覚し止められたのだが……、その後も隠れて続け、命を失った者もいる。」

 

 ヘルシーは顔を伏せた。

 

 

 「神の慈悲だと思った。

  しかし、私がそれを得てしまった所為で、多くの人間が未来を失うことになった。」

 「…………。」

 「誰かが幸せになった分、誰かが幸せでなくなるのは仕方のないことだ。

  だからせめて真っ当な方法で成功を、勝利を得るべきだと私は思う。」

 「…………。」

 「もしかしたら、罰なのかもしれない。

  こんな身体になった私は、もう二度とあの世界には戻れないのだから。」

 「…………。」

 「……! ハッハッハ! そんな深刻そうな顔をしないでくれたまえ!

  悩みはもうとっくに吹っ切れているさ!」

 「ならいいけど……。」

 「私は自分の考えを押し付けるつもりはない。ただ、今後君がどんな判断を下すとしても、私の失敗は覚えていてほしい。願いはそれだけだ。」

 「ああ、覚えておくよ。」

 「そういえば聞いていなかったが、君はアグニス様の新しい助手なのかな?」

 「ん? まぁ、そんなところだな。」

 「アグニス様に関して良からぬ噂を立てるものもいるが、あの人は信頼できるラドだ。

  心の底から国……いや、人々の為にと頑張ってらっしゃる。

  それはとても孤独な戦いに違いない。」

 「だから支えになれって? 本当に必要かな……。」

 「誰だって本心は表に出さない。王という立場なら尚更、弱音など吐けない。

  きっとかなりのストレスが溜まっている筈だ。

  彼にはそれを遠慮なくぶつけられるものが必要。そう思わないかい?」

 

 「ん?」

 

 ケロタンヘルシーに腕の付け根をガシッと掴まれた。

 

 「だから君には王のサンドバッグのような存在になってもらいたい!! 大丈夫! 君ならなれる!!」

 

 「…………。」

 

 素直に頷けないケロタンであった。

 

 

 ◆ ??? ◆ 

 

 

 《ザザ……ザザ……》

 

 《ニューク・スライムに続キ……スカル・レイピアがヤらレまシタ……》

 

 《ザザ……今回ノ被害……ゼロ……イレギュラーヲ確認……》

 

 《ザザ……ザザ……今後ノ計画の邪魔ニなル可能性高シ……》 

 

 《早急な対処ヲ……ザザ……》

 

 

第2話 End