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『異端のネシオSIDE』「マジシャンズパレード編」☆1(2/3)

 

 I like the night. Without the dark, we'd never see the stars.

 (私は夜が好き。暗闇なしでは、星が見えないもの。)

 

Stephenie Meyer(ステファニー・メイヤー)

 

 

 

 

 

 

 

  天至21年4月8日(金)☆

 

 

 

 「おっはよー!!」

 

 

 時刻は朝七時。

 

 今日も元気良く起床した私は、髪をお気に入りのツインテールに整え、一階にいるパパとママに挨拶。

 

 既に食卓の上には朝ごはんが並べられていて、パパは席に着き、タブレットでニュース記事を読んでいるところだった。

 

 

 「おはよう。今日は珍しく遅起きだな。」

 

 「えへへ☆ 昨日、遅くまで起きてたから。」

 

 

 今期から新しい魔法少女アニメが始まったのだ。

 

 原作ファンとしては、リアルタイムでチェックしないと。

 

 

 「あ、流々。今日の午後、雨みたいだから、気を付けてね。」

 

 「ふ……、雨天結構! 空が曇ったくらいで、私の元気は止まらない。

  寧ろ私が太陽になるチャンスでもあるよ!」

 

 

 雨が降るなら、みなもちゃん相合傘あいあいがさできるチャンスでもある。

 

 大切なその瞳……曇らせない!

 

 

 「という訳で、いただきまーす!」

 

 

 私は席に着き、朝食にありついた。

 

 

 

 

 ★ まじぱれ ★

 

 

 

 

 「おはよーう!!」

 

 

 遅起きでも、星明学園は徒歩で行ける距離にあるので安心。

 

 今日もいつも通り、星徒会運動系部活動の皆と共に、登校してくる生徒に声をかけていく。

 

 

 「おはよう……ございます…………。」「おはよう…………。」

 

 

 あれ?  何だか皆元気が無い。

 

 

 「おはよう!」

 

 「………………。」

 

 

 う~ん、何か全然反応してくれない人もいる。星も増えないし……。どうしたんだろ?

 

 あ、もしかして、マンネリ?

 

 そりゃそっか。毎日同じ挨拶じゃ飽きるよね! そろそろ何か新しいの考えないと!

 

 お、ちょうどみなもちゃんがやってきた……!

 

 

 「みなもちゃん! おっはー!!」

 

 「ええっ!? おはスタ!?」

 

 

 相変わらず、良いリアクションを取ってくれる。やっぱりみなもちゃんなんだよなぁ。

 

 

 「ねぇ、みなもちゃん。皆が元気無い理由、知らない?」

 

 「えぇ……? そんなの分からないよ……。私、友達いないし……ほら、ルルちゃんみたいにSNSとかやらないし……。」

 

 「そっかぁ……。え? 友達いない?

  私達、友達じゃないの!?」

 

 

 今、明かされる衝撃の真実。

 

 

 「いや、あの……!! 

  ルルちゃんは友達っていうより何か……師匠!って感じで……!」

 

 

 おろおろするみなもちゃん

 

 どうやら、慕ってくれてはいるようだ。びっくりした。

 

 

 「じゃあ、みなもちゃん! 師匠からのお願い!

  私と契約して友達になってよ!」

 

 「ひぃぃぃ! キュゥべぇ!」

 

 

 両手を握られ、震えるみなもちゃん

 

 つい、いつものノリで攻め過ぎちゃってるけど、可愛いから仕方ないよね!

 

 

 

 ★ まじぱれ ★

 

 

 

 そんな感じで挨拶運動を終えた後――。

 

 教室でHOSHI Meを起動し、私は獲得スターを確認した。

 

 

 (やっぱり、おかしい……。)

 

 

 そこに表示されていたのは、3という数字。

 

 たった一桁しか増えてないなんて、異常事態だ。訳が分からないよ。

 

 

 「う~~~~~~~~~ん…………。」

 

 

 ここまで下がったのには絶対理由がある筈。

 

 アプリの不具合か。それとも、皆、他のことで気が回らないとか……。

 

 

 《ぴんぽんぱんぽ~ん

 

 

 (ん?)

 

 

 そろそろ朝のホームルームが始まるという時、放送が入った。

 

 

 《一年A組一番星 流々さん。至急、職員室まで来てください。繰り返します。一年A組一番星 流々さん。至急、職員室まで来てください。》

 

 《ぴんぽんぱんぽん……

 

 

 「あれ? 何だろ。」

 

 

 私は立ち上がり、周りを見た。

 

 さっきからいやに静かだと思ったら、皆、耳にイヤホン付けて、タブレットをじっと見ている。

 

 私のことなんか興味ないといった様子だ。薄情だなぁ。

 

 

 「何だろうね。」

 

 

 しかし、そんな中、たった一人、気にしてくれるみなもちゃん

 

 

 「仕方ない。じゃあ、ちょっと行ってくるね!」

 

 

 元気100倍となったところで、私は教室を飛び出した。

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 ≫ 星明学園・中学部校舎一階・職員室

 

 

 

 《ガララ――

 

 「失礼しまーす!

  一年A組一番星 流々! 呼び出しに応じて参☆上!」

 

 

 キラッとピースサインを決め、注目の的。職員室内にいる人間の視線を一挙に集める。

 

 皆、私のテンションに驚いた様子だ。

 

 

 (ん? あの子……。)

 

 

 気持ち良くなったところで、私はそこに友達の姿があることに気付いた。

 

 チアリーディング部の後輩である、巣桐 つぐみちゃん

 

 わざわざ中学部校舎まで何しに来たんだろ? プリペイドカードの盗難事件については、昨日解決した筈だが、また何か問題が起きたのだろうか。

 

 彼女の話を聞いていたA組副担任冬那とうな先生が手招きしたので、私はすぐにそこに向かった。

 

 

 「へい! つぐみちゃん! また何か事件?」

 

 「………………。」

 

 (あれ?)

 

 

 何かつぐみちゃん、顔暗いし、空気重たい感じ。

 

 思わぬ反応に呆気に取られていると、先生が口を開いた。

 

 

 「あの~一番星さん巣桐さんが、プリペイドカードをあなたに取られたって言ってるの。本当?」

 

 「はい?」

 

 

 予想外のことを聞かれ、更に呆気に取られる。

 

 私がプリペイドカードを取った?

 

 

 「いや、それについては写真部の子が犯人で、昨日取り返したんですけど……。

  そうだよね、つぐみちゃん。」

 

 「嘘だよ……。」

 

 「え?」

 

 「流々ちゃんの嘘吐き!

  返してよ! 私のプリペイドカード!! あれ中に十万円・・・も入ってたんだから!」

 

 「!!??!??!?」

 

 

 じゅ、十万円!?

 

 

 「えー!? どういうこと!?

  昨日、1380円って言ってたじゃん!」

 

 「そんなこと言ってない。ねぇ、返して、私の全財産!」

 

 「と、突然、どうしちゃったの……!?」

 

 

 言ってることが昨日の出来事と矛盾している。

 

 まさか、もしかして、私からお金をむしり取ろうっていう魂胆?

 

 そんなの……。

 

 

 「つぐみちゃん!」

 

 

 私はつぐみちゃんの肩をガシっと掴んだ。

 

 

 「嘘は良くないよ! そんなこと言ってもすぐにバレるんだから!!」

 

 

 ガチ恋距離で説得。これならつぐみちゃんも考え直してくれる筈だ。

 

 

 「る、流々ちゃん……。」

 

 「つぐみちゃん……!」

 

 

 

 「ウソじゃなァいもぉおぉん!!」

 

 

 「わっ!」

 

 

 急に駄々っ子のように暴れられ、私は思わず距離を取った。

 

 明らかに様子が変だ……。

 

 

 「じゃ、じゃあ写真部の子を連れてくるまでだよ。

  すぐに目を覚まさせてあげるから!」

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 そして昼休み――。

 

 

 「やってません。」

 

 「( ゚Д゚) 」

 

 

 毅然とした口調で昨日の行いを否定する喜多映ちゃん

 

 その瞬間、私は悟った。二人にハメられたことを。

 

 

 「ほんと?」

 

 「はい。」

 

 「嘘だよ!

  流石につぐみちゃんプリペ1380円使った履歴は残ってるでしょ!」

 

 「残ってない。」

 

 

 そう言って、タブレットの画面を見せてくる喜多映ちゃん

 

 確かに履歴は無い。

 

 

 「いや、それアカウント変えただけでしょ。そんなことで騙されないから本当のこと言って。

  昨日の勝負で私が勝ったところとか、あなたが借金してつぐみちゃんにお金返したところとか、他にも見てる人いるんだよ!」

 

 「何言ってんだよ。あの勝負は私が勝っただろ。」

 

 「え?」

 

 「証拠の映像あるし。」

 

 

 そう言って、喜多映ちゃんタブレットの画面を操作すると、ある動画を再生し、見せてきた。

 

 

 《スキルカードデーライトシンクロ》発動!》

 

 

 それは、昨日の対戦の録画映像だった。

 

 しかし、何だか記憶と内容が違うような気がする。

 

 

 《《ゼラチンシルバープロセス》で《幻像のバエル・グラマブル》を蘇生し、合成召喚

  更に《トリミング》で一体を除く効果とガードを無効にし、ダイレクトアタック!!》

 

 

  [一番星 LP 5000 - 2200 - 2200 - 2200 = 0]

 

 

 「………………。

  え? 何これ?」

 

 

 映像の中では私が負け、喜多映ちゃんが勝利していた。

 

 

 「な、私の勝ち。」

 

 

 ドヤ顔を決める喜多映ちゃん

 

 いや、こんなの絶対おかしいよ。

 

 だって私の場の《ナイトビジョン》には、【プリチアトップスター】が効果の対象になるのを防ぐ効果もあった。

 

 それを使えば、Rankを相手ユニットと同じにして、ダイレクトアタックを防ぐ《デーライトシンクロ》を無効にできる。

 

 やっぱり私の勝ちだよ。

 

 

 「………………。」

 

 「どう、先生?

  流々ちゃん、さっきから嘘吐いてるの!」

 

 「えー困ったわ~。どっちが本当のこと言ってるのかしら~?」

 

 

 迷う冬那先生

 

 だって私、普段の行いが良いからね。そう簡単に信用度は下がらない。

 

 それが分かってる筈なのに、無理くり攻めてくる二人。凄く違和感を覚える。

 

 

 「ねぇ、もしかして二人共、誰かに脅されてるの?」

 

 「そんなことない!」

 

 

 ………………。

 

 違うんだったら、残る可能性は一つしかないけど……。

 

 この様子だと、ここで嘘を証明しても絶対認めないよね……。

 

 よし、こうなったらあれを……。

 

 

 「ああーっ!! 札束落としちゃった!!」

 

 

 私は財布の中から一万円札の束を取り出し、職員室の床に滑らせた。

 

 

 「「えっ!?」」

 

 

 その場にいた全員が反応し、視線が床に釘付けになる。

 

 

 (今の内……!)

 

 

 「あっ!!」

 

 

 職員室から出た私は、やり過ごせる場所を探して、階段を駆け上がった。

 

 

 「十万円か!?」

 

 「待って! それ私の!!」

 

 

 ふふ、せいぜい取り合うといいよ。

 

 あれはストーカー対策の為に用意していたアイテムの一つ――一番円札

 

 描かれてるのは私のてへぺろ☆な絵だから帯封を外すとすぐバレちゃうんだけど、時間は稼げる。

 

 舞台が整うまでは、逃げさせてもらうよ。

 

 

 

 

 

 

 【★ NEGATIV ★】

 

 

 

 

 ……………。

 

 黒い背景が切り替わり、モノクロタイルの床が映し出される。

 

 そこはマジックショーの舞台。

 

 照明に照らされ、奥からゆっくりと現れたのは、顔に白い仮面を付けた、奇術師姿の男。

 

 STAR39――NEGATIVで最も人気のある配信者。

 

 彼の登場と同時に、画面の上下に半透明のコメントが勢いよく流れ始める。

 

 

 《キター★》 《待ってた★》 生きがい★

 

 《毎秒配信しろ★》 《★★★★★★》 《World is Colorful★

 

 

 そのどれもが、彼を待望・称賛するものばかり。

 

 STAR39は彼らの期待に応え、赤いマントをひるがえし、ショーを開始する。

 

 

 「愚かな観客の諸君! マジックリアリズム、次回予告の時間だ。

  本日も我が大魔術を御覧に入れる!」

 

 

 《50000 / Z★》《10000 / やったれ★》《10000 / クズを消してくれー★

 

 《10000 / ウチの教師何とかして★》《5000 / おしおきタイム★

 

 

 「今回、消してみせるのは、星明学園の人気者にして、人々を破滅に導く光――一番星 流々

  まだ知らない奴らの為に、彼女の犯した罪、悪行の数々について説明しよう!」

 

 

 STAR39がステッキで奥の赤いカーテンを指し示すと、それが勢いよく開き、蝙蝠のような不気味な装飾が施されたモニターが現れた。

 

 そして、そこに、一番星 流々の姿を映した映像が流れる。

 

 

 「これを見るがいい!

  自分の意思に従わない後輩をカードバトルで痛めつけたあげく、現金プリペイドカードを強奪!

  身体能力の底上げの為、違法薬物を混入させたゼリー飲料を練習の合間に愛飲!

  自宅近所に住む植木職人との援交!

  他にも嫌がるクラスメートに付き纏い、気味の悪い弁当を無理矢理食べさせるなどといったいじめや、落ちていた他人の水筒に勝手に口を付けたりするなど、挙げればキリが無いほどの悪事を繰り返している。

  彼女は自分なら、何をしても許されると思っているのだ!」

 

 

 《最低★》《殺せ★》《星型www★

 

 《許せない★》《一番星 流々のファンやめます★》《V-2DXH★

 

 

 「よって、これより我が魔術にて裁きを与える!

  観客の諸君! 楽しみに待つがいい……!」

 

 

 

 

 【★ NEGATIV ★】

 

 

 

 

 「………………。」

 

 「どうかした? ルルちゃん……。」

 

 「え?」

 

 

 声をかけられ顔を上げると、みなもちゃんが心配そうな顔をしていた。

 

 

 「あはは。変な顔してた?」

 

 「うん……。何か、凄く楽しそうな顔・・・・・・してた。」

 

 

 いけない。顔に出てたみたいだ。

 

 私はイヤホンを外し、タブレットをしまった。

 

 

 「教室の掃除終わった?」

 

 「うん。」

 

 「じゃ、帰ろうか。

  あ、私、傘忘れちゃったから、入れてほしいな~、なんて。」

 

 「えっ?」

 

 

 みなもちゃんが一瞬、固まる。

 

 

 「あの、私も傘忘れちゃって……。折りたたみはあるけど、二人じゃ狭いかも。」

 

 「あ……そうなんだ。」

 

 

 まぁ、みなもちゃんと一緒に帰れるだけいいや。

 

 私は鞄を持ち上げた。

 

 

 「あれ? 何だろ……。」

 

 「ん? どうしたの?」

 

 「な、何か沢山こっちに来る……。」

 

 

 みなもちゃんに言われて廊下の奥に目を向けると、白い仮面・・・・を付けた生徒の集団がこっちに歩いてきていた。

 

 手には鋏やらバットやら、物騒な物が握られている。

 

 

 「来ちゃったか……。」

 

 「え?」

 

 

 もう……、折角、みなもちゃんと一緒に帰ろうとしたのにな。

 

 今日は諦めるしかなさそうだ。

 

 

 「ごめん、みなもちゃん

  今日は一緒に帰れそうにないや。」

 

 

 私は近くの窓を開き、窓枠に足を掛けた。

 

 

 「あわぁ!? ルルちゃん、突然、何!?」

 

 「う~んと、星になろうと思って。」

 

 「星!? 駄目だよ! まだ自殺は!」

 

 

 慌てふためくみなもちゃん

 

 白い仮面の集団も焦ったようで走り出す。

 

 大丈夫だよ。だって――

 

 

 「とうっ!!」

 

 

 私は窓からジャンプし、膝を折り曲げ、華麗に地面に着地した。

 

 たった二階の高さだからね。

 

 パルクールチアで鍛えた足腰、舐めてもらっちゃ困るよ。

 

 

 《ザァー……!

 

 

 まぁ、雨に濡れるのは嫌なんだけどね。

 

 私は鞄を頭に乗せ、走り出した。

 

 

 

 

 

 【★ NEGATIV ★】

 

 

 

 

 

 

 (………………。)

 

 

 配信を続けるSTAR39。彼は加工した一番星 流々の映像を流す裏で、彼女の同行を監視していた。

 

 雨の中、仮面の生徒達から逃げ惑う一番星 流々

 

 その哀れな姿を目にし、STAR39は仮面の下でほくそ笑む。

 

 

 (フフ……そいつらは取り付いた人間の思考を操り、俺の信者へと変える呪いの仮面。

  既に学園の生徒の七割を掌握し、逃げ道は塞いである。

  絶対に逃がさん。)

 

 

 STAR39は憎んでいた。

 

 見栄と虚構の世界に入り浸り、現実に向き合わずに生きる人間を。

 

 その行為がどんな悲劇を招くか自覚せずにいる人間を。

 

 一番星 流々――彼女を見ていると思い出す。

 

 かつての自分を――

 

 あの日の後悔を――

 

 

 (もう……二度と繰り返させはしない。

  お前は危険なんだ……一番星 流々。)

 

 

 モニターには、仮面から逃げ、今度は必死に校舎の壁をよじ登る彼女の姿が映っている。

 

 中々の粘りようだが、上には既に仮面を配置済みだ。

 

 

 「逃がしはしないぞ……!」

 

 

 「誰が逃げるって?」

 

 

 「っ!?」

 

 

 ――――――。

 

 

 背後より、声が聞こえ、STAR39は驚き、振り返った。

 

 人のいない……暗く静かな観客席。

 

 声の主は何処にも見当たらない。

 

 

 (今の声……。一番星 流々……? 一体、何処から……。)

 

 

 「困った時は空を見上げてみて。

  きっと星が答えを教えてくれるよ。」

 

 

 「…………!」

 

 

 天井を見上げると、骨組みの上に人影が見えた。

 

 あれは一番星 流々……!?

 

 いや、そんな筈は無い。彼女は今も画面の中で仮面から逃げ回っている。

 

 

 「何者だ……!?

  どうやってこの場所に入った!?」

 

 

 この世界は能力によって作り出した、現実には存在しない空間。

 

 入り込めるとしたら……。

 

 

 「あ、言っておくけど、あなたの味方じゃないよ。

  火星ひぼし さくさん。」

 

 「……!」

 

 「いや、今は怪人さん・・・・って呼ぶべきなのかな?

  その力、ネガヘルツ・・・・・から貰ったんでしょ? 名前を付けるとしたらSNS怪人かな。」

 

 「質問に答えろ!」

 

 

 怒りに任せ、ステッキを振るうSTAR39

 

 その先から黒い星が放たれ、天井の骨組みを破壊する。

 

 

 「………………。」

 

 

 だが、攻撃は光の障壁に阻まれた。

 

 一番星 流々によく似た姿をした少女は、それを纏ったまま、人のいない観客席へと降り立つ。

 

 

 「舞台に立っていない相手を攻撃するのはルール違反じゃないかな? 役者失格だよ?」

 

 「何をふざけたことを……。」

 

 

 STAR39は箱のような胴体に突き刺さっていた黒い星のマークが付いた剣を引き抜き、少女に向けた。

 

 

 「もう一度聞く。

  貴様は何者だ……?」

 

 「ふふ……そんなに知りたいなら、教えてあげる。」

 

 

 少女はパチンと指を鳴らした。

 

 すると……、一番星 流々を映していたモニターにザザッとノイズが走り――

 

 

 「何……!?」

 

 

 画面の中の彼女が、忽然こつぜんと姿を消してしまった。

 

 

 「魔術で出し抜かれるのは、やっぱり屈辱かな?」

 

 

 笑みを浮かべる少女。

 

 

 「くっ……!

  やはり、一番星 流々か……!」

 

 

 STAR39は剣と杖を構える。

 

 

 「一番星 流々? 違うよ。

  確かに普段はそう呼ばれているけど、今の私は一番星 流々じゃない。

  ここでのあなたが、火星 策でないのと同じようにね。」

 

 「何だと……?」

 

 

 さっきから何を言っているのか。

 

 

 「知りたい? 私の名前。

  教えてあげてもいいけど、折角、名乗るんだったら……。」

 

 

 一番星 流々は言いながら制服のポケットに手を入れ、何かを取り出した。

 

 あれは……。

 

 

 (テレビのリモコン……?)

 

 

 「もっと……光の当たる舞台じゃないとね……!

  チャンネルチェンジ・ワン!!

 

 

 《カッ!!

 

 

 「!?」

 

 

 一番星 流々がボタンを押した瞬間、リモコンが輝きを放ち、辺りは何も見えなくなるほどのまばゆい光に包まれた。

 

 

 (何だ……これは……!?)

 

 

 眩しさに目を瞑り、次に開けた時――

 

 辺りの景色は何もかもが変わっていた。

 

 そう、まるでテレビのチャンネルが切り替えられたかのように。

 

 怪しげなマジックショーの舞台が、アイドルが踊るような、きらびやかなステージへと変わった。

 

 

 「……!?」

 

 

 そして一番星 流々がいない。

 

 

 (何処に消えた……?)

 

 

 「一番星 流々!!

  オン☆ステージ!!

 

 

 「……!」

 

 

 やはり上だった。

 

 宙に浮かぶ……巨大な光のミラーボール。

 

 その中で一番星 流々の姿が変わっていく。

 

 髪型、髪色、服、アクセサリー……全てが新しい世界観に染まっていく。

 

 黄色い星のアクセサリーは透き通るクリスタルとなり、背中には流星の夜空を映し出すマント、頭には星の飾りが付いたヘッドマイクが装着された。

 

 

 「想い集いし一番星! 魔法少女! マスターエール!!

 

 

 光のミラーボールを割り、勢い良く名乗りを上げる一番星 流々

 

 魔法少女……。

 

 魔法少女……だと……?

 

 

 「何の冗談だ……!?

  いつそんな力を……。」

 

 「ナンセンスなセリフだね。

  そんなんじゃ、皆の心は掴めないよ?」

 

 「……!」

 

 

 周囲の壁にコメントが流れている。

 

 まさか、何処かに向けて配信されているのか?

 

 

 「あれはこれを見ている人達の心の声。

  嘘偽りの無い感想だよ。」

 

 (正気かこの女……。)

 

 

 一体何処まで目立つ気なのか……。

 

 

 「さぁ、気持ちを全部さらけ出して戦おう。

  ここは正々堂々、Tower of Rankersでね!」

 

 

 ビシッと指を差してくる一番星 流々――いや、魔法少女マスターエール

 

 

 「いいだろう……! 何処に向けて流しているかは知らんが、恥をかかせて、二度とこんな真似ができないようにしてやる!!」

 

 

 ☆ マスターエール(一番星 流々) VS SNS怪人(火星 策) ★

 

 

 

 「「ランカーズファイト!!」」