The best time of day for sex is anytime because it's sex.
(セックスに最適な時間帯はいつでも。だってセックスだもの。)
◇
≫ 杉並区・一常高校・二年I組教室
8時10分――朝のHR前。
「へんたぁーーい!!」
「…………?」
教室に入り、鞄を下ろしたタイミングで聞こえてきた、切羽詰まった雰囲気の大声。
続いてドタドタという足音が近付いてきて……、勢いよく近くの扉が開けられた。
《ガララ――――!》
「はぁ……はぁ……。」
入ってきたのは、クリームのようなボリュームのある白髪に、ぽっちゃり体型の巨乳女子。
こいつが騒ぐ時は、必ずと言っていいほど俺の日常が脅かされる。
「カスム君、助けて! 私、へんたいなの!!」
「知ってる。俺には治せないから他を当たってくれ。」
本当に重症だ。顔は可愛い為、不快とまではいかないが……。
「そうじゃなくて!
昨日の夜、新宿の歌舞伎町でへんたいなことが起きたんだよ!」
「何だよ、いつも起きてるだろ。」
「私の友達が働いてるお店で人がイっちゃったんだってば!」
「店って……?」
「風俗だろ。確かトロピカル・クイーンとかいう。」
適当に返事を返していると、ミツヤが助けに来てくれた。
「そう、それ!
とりあえずドナドナは無かったみたいなんだけど、今日一日臨時休業になっちゃって、皆のマ〇コが暇してるの!」
「え?」
何だ……? さっきから真面目な話をしてるのか、ふざけてるのか……。
早口で喋る上に、言い回しが独特過ぎてちっとも頭に入ってこない。いつも通り、作り話だと思うが……。
「ね! ね! 今日の午後空いてるでしょ? 空いてるよね!
一緒にショッピング行こうよ! ちょうど臨時収入も入ったことだし!」
「臨時収入?」
「ああ。もう振り込まれてるよな。参加報酬。」
億卍の依頼のことか? あのメール、霜之口のとこにも届いてたのか。
「ねぇ、カスム君お願~い! 皆、欲求不満なのぉ~!」
「嫌だって! 何で性欲解消に付き合わなきゃならないんだ。」
服を掴んでくる霜之口を引き剥がし、ミツヤに間に入ってもらう。
「むぅ~!」
ムスッとした表情で頬を膨らませる霜之口。
そんな可愛い顔されても、人を性欲処理の道具扱いする人間とは付き合いたくない。
だが、何故かこいつはそんな俺のことが大好きなようで、幾らフってもゾンビの如く起き上がり、顔を合わせる度に様々なアプローチを仕掛けてくる。出会ったばかりの頃は油断していたこともあってかなり危なかった。
霜之口は、相手の動きを離れた場所からでも完全に封じることができるA級クラスの異能を持っているので、それを使われると危険を察知しても逃げられない。
一番ヤバかったのは、図書室に行った時に身動きを封じられ、ズボン越しにフ〇ラされた時。
他のクラスメートに助けられて、何とか貞操を失わずに済んだが、あの時はもう駄目かと思い、理性が溶けかけた。
一応、二度とするなと釘は刺しておいたが、バイブを刺された程度にしか思ってなさそうで心配だ。
我慢嫌いの我儘だし、いつまた暴走するか……。
「まぁ、落ち着け霜之口。そんなに男が足りてないなら、俺が行ってもいいぜ?」
「ミツヤ君はサイテーだから駄目!」
霜之口はふんっ!とそっぽを向き、教室を見回す。
「マザネ君はどお?」
「僕は、ぱーす。今日は予定あるから。」
携帯をいじりながらの、素っ気ない態度で誘いを断るマザネ。
「じゃあ綿貫君!」
「あ……えっと……。」
「なぁ、ワイは?」
「うずちゃんは駄目ー。」
「ファッ!?」
「だって、うずちゃん男の子じゃないでしょ。」
「心は男なんや。」
「はぁ~……、やっぱ連れてけるのはカスム君だけかなぁ。」
「だから……俺は行くなんて言ってない。」
「駄目! 行くの! どうしても断るっていうなら、皆でカスム君ちに押しかけるから!」
「なっ。」
それはヤバ過ぎる。
「助けてぇー! 集団痴女に襲われてまーすwww!!」
そしてうずが煽り出す。
「はぁ……、何だか収まりそうにねーな。
どうする、カスム? また
「いや、いい。何度もあいつに頼る訳にはいかないし……。
今回は一人で何とかしてみるよ……。」
「ほんとに大丈夫か?」
「多分……。」
俺はこっそり携帯を取り出し、身内へのメッセージを打つことにする。
「カスム君! 学校終わったら荻窪駅に直行ね!」
「あぁ……、うん……。」
何が何でも逃がすつもりはないらしい。
ここは不本意だが、
《キーンコーンカーンコーン……!》
……その後、始業のチャイムが鳴り、ややあって担任の子蜂先生が教室に入ってきた。
「…………?」
今日もいつもより来るのが早い。何かまた重大な報告でもあるのだろうか。
「えー、昨日、C組の教室が異空間に消えた件について話したと思うが、本格的な捜査が入ることになったらしい。」
お、いよいよ解決しに来てくれるのか。
被害が増えてきたし、これ以上後回しにはできないと判断されたのかもしれない。
「このままじゃ漂流教室になりかねんからな。
それで……安全の為、今日の授業は午前のみ。ノルマが終わった奴は早く帰ってよしとする。」
突然の授業半日化に、当然、教室は騒がしくなる。
「あぁ……! やはり特級呪物絡みでしょうか?」
「またカリキュラムめちゃくちゃだよ。壊れるなぁ。ぐふふ。」
「やったー! 皆に知らせないと……!」
霜之口はやはり目を輝かせている。
俺と過ごせる時間が増えたことが、余程嬉しいようだ。
(上手くいくといいが……。)
俺はメッセージに既読が付いたのを確認すると、早くノルマを終わらせるべく、タブレットを立ち上げた。
≫ 東京都・渋谷区
午後0時30分――
《次は、渋谷、渋谷、お出口は右側です――》
「………………。」
寄りかかってくる霜之口に耐えながら、電車に揺られること約二十五分。
降車し、駅を出て、ハチ公像の前まで歩いていくと、そこには明らかに周囲の人々とは雰囲気の異なる集団がいた。
他人の目を惹き付けるような、派手で露出度の高い服や、いかにも高級そうな服やアクセサリーに身を包んだ美男美女……。人数は男が3で女が5。
(…………?)
風俗嬢がいることは聞いていたが、男達の方は何者なのだろうか?
俺が立ち止まると、霜之口は――
「あ、しもちゃん来た。」
「やっほー! 連れてきたよ!」
手を上げて走っていき、緑髪の女性と胸をぶつけ合う。
《ぼよん♪》
(胸でか……。)
何だあれは……。
思わず効果音をイメージしてしまうほど、でか過ぎてはち切れそうになっている。
あれはH以上あるんじゃないだろうか。天然ものなら恐ろしい……。
「皆、もう食事済ませちゃった?」
「うん。でも、軽くとったくらいだよ。
折角だから、まずは皆で食べに行こうか。」
「あ、じゃあ私が店選ぶ!」
慣れない光景に面食らっている内に、話が進められていく。
本当にこんな集団の中に混ざって無事に街を歩けるのだろうか……? 完全に場違いというか、浮いて見えるじゃないか……。
「やぁ、緊張してる?」
「……!」
「へぇ~、普通って聞いてたけど結構イイじゃん。」
中々近付けずにいると、エメラルドグリーンの髪色をしたショートヘアの女性と、赤いメッシュの入った黒髪ツインテールの女性が近付いてきた。
胸の大きさは向こうにいる緑髪の女性ほどではないが、それでも霜之口並みの大きさがあり、目のやり場に困る。
「あ、っと……こんな大勢とは思わなかったので……、あの男の人達は?」
「ああ。同じ歌舞伎町で仕事してるホストの子達だよ。
僕らだけで出かけるのは危ないし、友達の何人かにボディーガード兼荷物持ちとして来てもらったんだ。」
成程、じゃあ、あの3人はそれなりに強い異能力を持ってるってことか……。
「あたしは大丈夫だけどね~。モモとかメロンは頭がポンだから。」
黒髪ツインテールは腰に手を当て、胸を強調するポーズを取る。
「あ、僕がリーダーのDDで、この娘がカリン。
向こうにいる一番胸の大きな娘はメロンで、桃色髪の娘はモモ。褐色肌の娘はココナね。」
源氏名というやつだろうか。どうやらトロピカル・クイーンの風俗嬢の名前は、果物の名前で統一されているらしい。いきなり本名を言われるより、覚えやすくはあるが……。
「DD……。」
「ダイヤでいいよ。本名だしね。」
ダイヤさん……。多分、ハーフだよな。意外とまともそうだ。
まぁ、霜之口の友達が全員、見境なく男を食い散らかすビッチなんて偏見が過ぎるか……。まだ分からないけど。
「ダイヤちゃん、移動するよー!」
「うん。じゃあ行こうか。」
「え?」
ダイヤとカリンに左右からいきなり腕を絡められる。
「あの……歩きづらいんですけど……。」
「えー折角だし、ゆっくり行こうよ~。色々話聞きたいし♪」
「カスム君、こういうの嫌かな?」
「いや、別に嫌じゃないですけど……。」
これ霜之口が嫉妬するんじゃ……。
気になって彼女の方を見る。
しかし、特にこちらを気にした様子は無く、友達との会話を続けている。
学校では他の女子とちょっとでも触れ合ったりすると騒ぎ出すくらいなのに、不思議だ。
(もしかして……。)
「ねーねー、しもちゃんとはどこまでシたの?」
「もうキスくらいは済ませたかな。」
「いや、そもそも付き合ってないので……。」
……とにかく、気は抜かずに行こう。
既に
◇
その後、駅近くのレストランに連れ込まれた俺は、食事中でも美女に左右を挟まれ、引き続き気の休まらない時間を過ごすこととなった。
「カスム君、好きな食べ物は~?」
「普通……というか、定番の料理なら何でも。洋風と和風だったら和風の方が……。」
「やっぱり家庭的な女の子が好きなのかな。」
「まぁ、家事は普通にできた方がいいですね……。」
「あ! 私、お菓子作れるよ!」
周りから質問をされ、それに答える度に霜之口が謎のアピールをしてくる。
ほんと諦めが悪い。
いい加減にしてほしいが、味方がいないこの状況では滅多なことは言えない。
嫌われるようなことばかりすればこの地獄からは解放されると思うが、仕返しをされては困るので、それはできない。霜之口ほどの異能力者を敵に回すのは危険過ぎる。友達もこんなに多いし。
今日はできるだけ彼らの要望に応えて、満足して帰ってもらうつもりだ。
《もにゅん、もにゅん……》
左右からの胸の押し付けにも何も言うまい。だから……
(過度なお触りは無しで頼む……。)
何十分コースなのかは知らないが、貞操は何としても守り抜かなければ……。
女が誘惑するテクニックは、男が誘惑するテクニックよりずっとレベルが高い
≫ 東京都・渋谷区・虹幻町
24日・午後1時頃――
東京都渋谷区の裏世界・虹幻町にて――
《じゅる、じゅるるぅ…………》
表世界の
「ん…………そろそろ出そう?」
「うん……。」
「ふふ、じゃあ…………強くするね♪」
《じゅるっ、じゅるっ、じゅるっ》
動きを早め、激しい水音を立てる。
「ぁっ…………。」
我慢の限界が近かった少年は、その勢いに五秒も持たず、白い液体を放出してしまい、強い快感に体を震わせる。
「ん…………ふふ。」
少女は笑みを浮かべながらそれを喉の奥へと吸い込むと、少年のXXXを解放し、ベッドに倒れ込んだ彼に優しく覆い被さった。
「どうする? まだ時間あるけど。」
「も……もう無理……。」
「そっか。じゃあまた貯めたら来てね♪」
その後、少女は少年の服を整え、ふらふらと歩く彼を見送ると、別の部屋の前に行き、ドアを叩いた。
「終わったよ。掃除よろしく♪」
声をかけると、中から黄色い服を着た茶髪の青年が現れ、さっきまで少女がいた部屋へと入っていく。
「♪~♪~♪~」
彼に後片付けを任せた少女は、気分良く鼻歌を歌いながら廊下を歩き、
そして――
「たっだいま~♪」
「ん、お帰り。」
彼女が部屋に入ると、ソファに座って食事をしていた少女が返事をし、もう一人――奥の方でパソコンをいじっていた少女が反応する。
「その感じ……。まさか、またヤってきたんですか……?」
「え~何のこと? 肌つるつるしちゃってる?」
「チッ……。顔に精液付いてるんですが。」
「あ、ホントだ。」
言われてすぐに手鏡でチェックする。
「早く洗ってきてください。」
「えー、私、好みの子とシた後はしばらく口も洗わないって決めてるんだけどなぁ。」
「不衛生です。ショタコンビッチは死んでください。」
「ん~? 一日中、パソコンの前から動かないし、お風呂にも入らないネムちゃんには言われたくないよね~。」
《ダンッ!》
ネムと呼ばれた黄色い猫耳パーカーの少女は、怒ったのか片手で机を叩く。
「あー、また始まっちゃったぁ、ネムちゃんの
「黙ってください。
あなたと話してるとIQが下がりそうです。」
「はー、私賢いんですけど、営業成……じゃなかった。学校の成績表見せたげよーか?」
「はぁ……。」
ネムは溜息を吐き、パソコンに向き直る。
「あなたの所為なんですよ。私達が他のチームから
悪評が広まってる御蔭でメンバーが全然増えません。振る舞いには気を付けてください。」
渋谷に存在するカラーギャングの1つ――イエロー・ディザイア。
そのメンバーはなんと、金髪ギャルビッチの
カラーギャングの中で最もメンバーが少なく、影の薄い彼女達は、虹幻町にあるこのカラオケ店の一室を拠点にし、ひっそりと活動していた。
「私はメンバー増やす必要ないと思うけどなー。お金には困ってないし。
てか、もう開き直ってエロー・ディザイアに名前変えてもいいんじゃない?
ほら、ネムちゃんだってASMR配信でオタク君相手に媚び媚びしてるじゃん。」
「ただのお仕事です。私は純潔です。」
「ほんとにぃ? 毎晩、一人エッチしてるけど。」
「声を出す練習です。健康にも良いと聞きますし。」
「今もムラムラしてたりして~。」
「うるさいです! 静かにしてください。」
《ガチャ》
その時、扉が開き、茶髪の青年が部屋に入ってくる。
「掃除終わったよ。」
「あんがと、えろとー。」
イエロー・ディザイアの副リーダー、
彼は名前に使われている漢字の所為で、春名にエロトというあだ名を付けられている。
「尋人さん。こんなクソビッチの言うことを聞く必要はありません。
手伝うなら私を手伝ってください。」
「ん? 何でも言ってくれれば手伝うけど。」
「じゃあ、お菓子を買ってきてください。
周子が物凄い勢いで食べる所為で私の分のポテチが無くなりそうです。」
「あはは、ごめんね。美味しいからつい……。」
テーブルの上には大量のお菓子の袋が散乱している。
「いいけど、そんなものばかり食べてると体壊すよ? 歯はちゃんと磨いてる?」
《ダンッ!》 「いいから黙って買ってこいです。」
「…………分かった。」
「あ、えろと。私も手伝おうか?」
「あなたは早く手洗いうがいをしてきてください。
もうショタを見つけても連れ込まないでくださいよ。ここはラブホじゃありませんから。」
「それは約束できないなぁ……。」
絵知川は鞄を持ち、ソファから立ち上がった。
「う~ん……。まぁ、確かにしばらくは男の子達に声をかけるのはやめた方がいいかもね。」
「えー、何でえろとまでそんなことぉ。」
「いや……。この近くじゃないけど、男の子の頭だけ誘拐されるっていう事件が起きてるからさ。
怪しまれるかもしれないから、控えた方がいいと思って。」
「頭をなくした少年たち事件ですね。
被害者は全員小学生の男の子で共通。
幸い全員、死んではいないようですが、会話ができないので、意思の疎通が取れない状態だそうです。」
「死んでないって……犯人の異能ってこと?」
「多分ね。一人目の被害者が出た時から警察が動いてるけど、まだ犯人は捕まってなくて、もう五人も頭を持ち去られてる。
一応、食事は与えられてるみたいだけど、目的が分からなくて不気味だよ。」
「やはり、ハルナと同じくショタコンなのでは?
犯人の考えが分かれば、解決できるかもしれないですね。」
「おー、いいじゃん! それやろう!」
「は?」
「だって、私と同じ趣味の子が狙う男の子達だよ。どんな美少年か気になるじゃん?」
「相手は頭と胴体を切り離すことができる能力者ですよ。
危険過ぎます。」
「あーそう。早速良い作戦思い付いちゃったんだけど、ネムちゃんは聞きたくないのかなぁ……。」
「上手くいく筈ありません。私は手伝いませんよ。」
ネムは再びパソコンに向き直り、途中になっていたゲームのプレイを再開した。
「ネムちゃんが手伝ってくれたこと一度も無い気がするんだけどー。」
「僕は協力する。少しでも早く子ども達を助けられるなら。」
「さっすが、えろとぉ! ネムなんかよりよっぽどリーダーしてるぅ♪」
「…………勝手にするがいいです。」
ネムは
「それじゃ、隣の部屋で作戦会議と行こう!
あ、買い物は代わりに周子が行ってきてくれる?」
「おっけー。」
絵知川は尋人を連れ、部屋を出ていく。
かくして、また小さな歯車が動き出し始めるのだった。
≫ 渋谷・???
「はぁ…………はぁ…………。」
「うっ…………。」
首筋に生温かい息を吹きかけられ、後ろからズボンの中に手を滑り込ませられる。
ツルツルとした白いゴム手袋が肌の上を這う感触――
これは……危険だ……!
《シャッ――》
ようやく体が少し動かせるようになった幽鵡は、目の前のカーテンを開け、外の様子を確かめた。
ここは何処だ? 更衣室……?
急な展開に困惑していると、上半身裸で背中に密着しているDDが耳元で囁いてきた。
「ふふ、逃げようとしても無駄だよ? 扉はカリンが塞いでるからね。」
「っ……。何でこんなこと……。」
「ふふふ……。」
DDは妖艶な笑みを浮かべると、幽鵡のXXXを手で包み込み、そのままゆっくり上下に動かし始めた。
「…………!?」
何とか刺激に耐えようとする幽鵡。
だがまたしても不思議な力が働き、股間がみるみる内に硬くなっていく。
(どうなってるんだ……?)
今から数分前――レストランでの食事を終え、席を立とうとした時。
何故か突然、体が固まり、そのままお姫様抱っこで店の奥まで連れ込まれてしまったのだ。
(食事に何か薬でも……。いや、これってやっぱり……。)
「種明かしするとね。僕の能力は、触れたものを硬くする《ダイヤモンドコーティング》……。
アソコまで一瞬でカッチカチにできるから……どんなEDでも大丈夫って、評判なんだ。」
(う…………。)
まさかこの店の人間も全員グルなのか。途中で姿を見られても何も言われなかったし。この店を選んだのは霜之口だ。
しかし、だとしたら狙いがよく分からない。俺を自分以外の女と……それも風俗嬢と二人っきりにさせるなんて……。不安じゃないのか?
「ねぇ、幽鵡君って、オ〇ニーはよくするのかな?」
「…………。」
そんな回数はいちいち覚えていないが、頻度は大体一週間か、一ヶ月に一回くらいが適切だという知識はある。
全くしないというのも、体に悪いらしいし、休日には時間があればするようにしているが……。
「ねぇ、答えてくれないと、激しくしちゃうよ?」
「い、一週間に一回くらい……。」
「へぇ……。それ、他人にやってもらうのじゃ駄目なのかな?」
「どういう意味ですか……? うっ……!?」
棒を掴む、手の力が強まる。この流れはマズい……!
「ま、待って! ここで出したら服が……。」
「ふふふ……。」
何とかDDの腕を掴むと、ようやく手を止め、ズボンから抜いてくれた。
危ないところだった……。
「とりあえず今はここまでにしておこうか。
しもちゃんとの約束だし、続きはまた今度で……。」
(続きがあるのか……。)
っていうか、やっぱり霜之口の仕業だったんだな。くそ……。
「あの……霜之口が何考えてるかは分からないんですが、こんなことやめるように言ってほしいんですけど……。」
「う~ん……。それはちょっと無理かな。」
ごそごそと、服を着ながら答えるDD。
「何で……。」
「だって、あの子とっても良い子だから。
願いがあるなら叶えてあげたいなって、皆思ってる。」
確かにそれは分かる。異常に好意を向けてくるのと、変態的な発言を除けばだが。
「俺の気持ちは無視ですか……?」
「いや。だから気が変わるように色々とね♪」
「………………。」
やっぱり、この人達は味方にできそうにないか。友達から説得されれば、少しは変わるかと思って期待したのだが……。
「この先……もし、俺が霜之口と付き合わなかったら?」
「さぁ、どうしようか?
しもちゃんがどうしても君を物にしたいと言ってきたら、僕は断れるかな?」
………………。
結局、嫌われるしか道はないのか。でもそうなると、ひたすら暴力を振るうしかなくなるんだよな。
あいつはとにかく気持ち良くなることが好きで、痛いことや苦しくなることが大嫌いだ。
自分と付き合えば、辛い目に遭うことになるぞと分からせる……。そうすることができれば、勝手に離れていく筈だ。
(何か穏便に済む方法はないものか……。)
彼女を作る程度では諦めないだろうし、引っ叩こうにも異能で防がれてしまう。
悪口を言っても本気で受け取らず、無視しても抱きついてくる。
他人の力を借りるとしても、加減のコントロールが難しくなるし、ずっと助けてもらう訳にはいかない……。
「はぁ……。」
ネットで検索しても心を鬼にしろみたいな意見ばっかりだし、普通に生きたい人間にとってはキツい。
DDの言う通り、霜之口は周りからよく好かれているし、悪人でもない相手をいじめるのは良心が痛む。周囲に与える印象も良くない。
「あの……一応これも聞いておきたいんですが、もし、霜之口を泣かせたら……?」
「えっと……その時は……。」
DDは少し考え込むと、その後、笑顔を作り答えた。
「
「………………。」
冗談でも勃起が収まる回答だった。