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『異端のネシオSIDE』「異常性クラスメート×マジシャンズパレード編」★1(1/2)

 

 近づくと、もっと好きになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

  天至21年4月17日(日)☆

 

 

 

 

 

 

 《ダンッ!

 

 一粒の水滴が、水面みなもに波紋を作るように。

 

 《ダンッ!

 

 感情は揺れ動く。

 例え、収まっても、一度混ざり合ったものは、もう元には戻らない。

 

 「覆水盆に返らず――かな。

  こうなったら、もう止められないね。」

 

 戦いは避けられない。人には誰しも譲れないものがある。水魚の交わりという言葉があるが、どれだけ親しい関係になろうとも、越えてはならない一線・・・・・・・・・・があるのだ。

 

 「私が勝ったら、全部取り消してもらいます。」

 

 「勝てたらね。おもらしちゃん。」

 

 両者の視線が交錯し、フィールドに水が流れ始める。

 

 「うおー! がんばれぇぇ! みなもちゃん!!」

 

 《最低な戦い・・・・・になる予感しかしないが……》

 

 退く訳にはいかない。例え、どれだけ酷い目に遭おうとも。

 少女達は叫ぶ――

 

 

 「「ランカーズファイト!!」」

 

 

 その決意の言葉を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★ アークエリアスとガッチンポー ★

 

 

 

 

 

 

 ≫ 東京都墨田区すみだ水族館

 

 

 

 

 「おぉ~、生魚~♪」

 

 やってきて、すぐに声を上げる、何処か見覚えがあるような金髪のツインテール

 早くも展示物に目を輝かせた彼女は、服から星のシールが大量に貼られた携帯を取り出し、その画面に自分と水槽を収め始める。

 

 「どう? 色々新しくなってる感じ?」

 

 「わぁぁ……」

 

 そして、そんな彼女に続いてやってきたのは、水兵のような帽子を被ったショートヘアの女子と、鳥のような髪留めを付けたツインテールの女子。遅れて、水色髪白髪の女子も姿を現す。

 

 これは、間違いない――

 

 彼女達は全員、星明ほしあかり学園生徒

 一番星いちばんぼし 流々るるに、その友人達

 

 「これ、なんて魚かな……」

 

 「分かりませんが、ちっちゃくて、萌えます!」

 

 《パシャ☆ パシャ☆

 

 すみだ水族館、最初の展示エリア――水のきらめき、美しき自然水景

 生い茂った水草の間を生き生きと泳ぐ小魚達に、早速、流々達は癒される。

 

 「お魚……」

 

 そんな中、約一名、虚ろな表情で水槽を見つめる者がいるが……

 

 「わぁ! つぐみちゃん! よだれ、よだれ!」

 

 急いでハンカチを取り出そうとする流々

 しかし、それより早くもえるが動く。

 

 《ぱくっ!

 

 「!?」

 

 すっと身を屈めたと思ったら、垂れたよだれを口でキャッチ。

 

 「萌ちゃん、それヤバいって。」

 

 「はうっ……!」

 

 アンナに突っ込まれ、縮こまる

 まぁ、床を汚さずに済んだのは良かった……。

 不思議と彼女のことを不快に感じないのは、異能《多好感たこうかんの所為だ。

 周囲の人間に不快感を覚えさせないというD級能力。大胆な行動の多い彼女にとって、この能力は外せない。

 

 「ははは……」

 

 それでも水漏みなもれ ルゥは不安になる。

 すると、様子を察した流々が手を取ってきた。

 

 「大丈夫、みなもちゃん萌ちゃんはちゃんと相手を見て、やってるから。」

 

 「あわわ……」

 

 「約束したからね。

  今日は何が何でも楽しいって思わせてみせるって。」

 

 そう、それは3日前のこと――

 

 

 

   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 「はぁ……はぁ……」

 

 自動ドアを通り抜け、コインランドリーの中へと入る。

 

 「みなもちゃん……!?」

 

 店内を見回す。

 すると、そこでは《ぐおん……ぐおん……!》と回っていた。

 洗濯機の中、魔法少女姿水漏 ルゥが――

 

 「うわぁ! みなもちゃん!」

 

 急いで駆け寄り、魔法のリモコンで強引に停止させる。

 

 「何で中に!? 何やってんの!?」

 

 「自分を戒めてるところ……」

 

 「え……!?」

 

 「だって……私、トイレ怪人さんを殺しちゃったから……。殺人魔法少女だから……。

  誰も罰を与えてくれないなら、一度捕まって……」

 

 「思い切りが良くなったのは嬉しいけど、この方向は想像してなかったよ!」

 

 学校でも突然自分を傷つけ始めるから、何事かと心配して追いかけてきてみればこの有り様。流石に犯罪はマズい。

 

 「ルルちゃん、邪魔……」

 

 「聞いて! 怪人が消えたのは、みなもちゃんの所為じゃなくて――」

  

 「ネガヘルツでしょ。知ってるよ。

  でも、倒したのは私だから――」

 

 「…………。」

 

 どうしてそこまでかたくなに…… 

 今まで殻に閉じこもっていた所為で、ネガティブ思考が染みついてしまっているのか……。

 だったら――

 

 「じゃあ、罰として!

  次の休み、何処か遊びに行こう! 皆で!」

 

 「え……。」

 

 「嫌でしょ。

  みなもちゃんには絶対、楽しんでもらうよ!」

 

 

 

   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 「……………。」

 

 「みなもちゃんクラゲ好き?」

 

 「えっ、あ……毒持ってる子もいるし、怖いかなって……」

 

 色鮮やかな照明により、幻想的なクラゲエリア

 ビッグシャーレと呼ばれる巨大な水盤型水槽を見下ろしながら、ルゥも会話に参加する。

 

 「見た目はふわふわしてて萌えるんですけどね~。」

 

 「食べれるのかな。」

 

 「ほとんど水分だから栄養は少ないらしいよ。ダイエットしてる時には良いかもしれないけど。」

 

 「あ、ウミガメはよくクラゲ食べるって聞いたことある……。」

 

 「耐性あるんだよね。猛毒クラゲも平気でむしゃむしゃ食べちゃうとか。」

 

 「へー、凄い……!」

 

 「うん、カメは凄いよ。」

 

 間違えてビニール袋食べちゃったりするけど。

 

 「う~ん、皆ものしり。

  私、リョナ系でしかクラゲのこと知らないや。」

 

 「マリオのことだと言ってくれ、流々。」

 

 「ははっ……」

 

 冗談に軽く笑いつつ、皆で次のエリアへと歩く。

 

 

 

   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 「うわー、やっぱここは凄いね!」

 

 吹き抜けの上、六階から見下ろす、小笠原大水槽

 ここは世界自然遺産である小笠原諸島が再現されていて、すみだ水族館の中で最も大きな水槽となっている。

 シロワニエイなど、大小様々な魚達が一つの水槽の中で群れを成し、泳ぎ回るさまは圧巻で、思わず時間も忘れて見入ってしまう。

 じっと眺めていると、こんな会話も聞こえてきた。

 

 「ここ、沢山色んな種類の魚がいて、どうして食い合わないのか不思議じゃないかい?」

 

 「知ってるの? ダイヤちゃん。」

 

 「調教済みだからさ。

  ちゃんと餌の量も調整して、常に満腹の状態を維持しているみたいだよ。」

 

 「いいなー。私もそんな生活送りたい!」

 

 「ねぇねぇ、そろそろあっち見に行ったら? チンアナゴいたよ、チンアナゴ!」

 

 「あっ、イクイク~!」

 

 「流々ちゃんチンアナゴだって。」

 

 「みなもちゃんチンアナゴだって。」

 

 「え、う、うん……。」

 

 こっちを向くつぐみ流々

 二人とも何かを期待するような目をしているが、ぶっちゃけそんなに惹かれないし、ウィットに富んだ返しも全然思い浮かばな――

 

 「あっちは確かカメもいるんじゃなかったかな。」

 

 「行こう。より早く。」

 

 一瞬で迷いのなくなるルゥであった。

 

 

 

 

 ☆ まじぱれ ☆

 

 

 

 

 大水槽から離れ、いよいよサンゴ礁エリアへと入る流々達

 360度から鑑賞できるスクエア型水槽が並ぶ中、少し進んでいくと、目当ての水槽を見つけた。

 

 「いた! チンアナゴ!」

 

 全員で水槽の周りに集まり、じっくり観察する。

 一面の砂の中から、細長い体をにょろんと出して、ゆらゆら動く不思議生物

 名前の由来ちんという日本の犬に似ているとかいうよく分からないものだが、ちまたではキモカワイイと評判で、水族館で見る生物として、とても人気がある。

 

 「これ、模様が違くて萌えます!」

 

 「ああ、それ。黒い斑点がチンアナゴで、シマシマニシキアナゴっていう別の種類。それ以外は覚えてないけど。」

 

 「星模様を探せ……」

 

 流々が携帯を構えながら、水槽の周りを歩き始める。

 確か昔、体の模様から「スター」というあだ名を付けられたチンアナゴがいたとか。

 同じ種類でもそんな感じで微妙な違いがあるらしい。

 

 「流々ちゃん流々ちゃん。あれやらない?」

 

 「おっ、やる? ここに来たら、当然のやつ。」

 

 「?」

 

 つぐみが突然、ツインテールを解き、両手を合わせ、前に突き出した。

 

 「さかな~!(>ᗜ<)

 

 「「ちんあなご~!(>ᗜ<)」」

 

 !?

 

 ちょうど後ろの女の人とシンクロしてしまった流々

 二人は万歳に似たチンアナゴポーズのまま顔を見合わせる。

 

 「あぁ、ごめんごめん、体が勝手に。チンと言ったら、マンと言わざるを得なくなるタイプだから、私♪」

 

 「いえ、そういうノリいいの、大歓迎です!」

 

 「なら、僕も何かやろうか。」

 

 流々の言葉に面白がったのか、別の女の人も近付いてきて、ポーズを取り始める。

 直立したまま、両腕を非対称になるように上へ。

 これはもしかして……

 

 「サンゴ……?」

 

 ルゥは呟いてみる。

 

 「正解♪」

 

 「よし……!」

 

 それを見た流々は対抗心を燃やしたのか、突然、大の字になり、床にうつ伏せになった。

 

 「ヒトデ……!」

 

 「私もやります!」

 

 「あ、じゃあ、私も。」

 

 は両手をひらひらさせ、クラゲクリオネか。アンナは両手をのように動かし、海鳥の真似をし始める。

 

 「はっ……!」

 

 その様子をじっと眺めていると、全員から視線を注がれる。これは何かやらなくてはいけない空気!

 

 「かっ――」

 

 ルゥは膝を折り、四つん這いになる。

 

 「カメ~……!」

 

 近くの水槽では、ウミガメの赤ん坊がバタバタと泳いでいた。

 

 

 

 

 

 

   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 「いや~、中々良い思い出が出来たね!」

 

 水槽の前で撮った記念写真を満足げに眺める流々

 若干忘れたくなる気持ちもあるが、皆ノリノリだったのでまぁいいか……と、ルゥは思う。

 

 「これで六階は見終わったかな?」

 

 「うん、そろそろ下に。カフェあるから一旦休憩にする?」

 

 「賛成!」

 

 特に意見はぶつかることなく、ペンギンの見える下の階に繋がるスロープへ向かう。

 

 (ん……?)

 

 ルゥもついていこうとしたが、途中、気になる物が見え、足を止めた。

 チンアナゴがいた水槽の辺り。床の上に何か落ちている。

 

 (何だろう……?)

 

 さっき通った時は無かったような気がする。

 妙に気になって、近付いて拾い上げてみた。

 

 「……?」

 

 太くて長い……棒? 色は黒で、回してみるが、特に何も書かれていない。

 ……もしかして、グッズショップとかで売ってる物だろうか? オットセイに見えなくもない形をしている。

 しかし、それにしては手足が付いていなくておかしいが……

 

 (誰かの落とし物かな……?)

 

 だとしたら、届けるか、このままに……

 

 《ギュィィン……! ギュィィン……! ギュィィン……!

 

 「え……。」

 

 握っていると、突然、手の中で音を立てながら震え出した。

 

 (あ……)

 

 その瞬間、頭の中で可能性が一つに絞られた。

 

 (これ、えっちなやつだ……)

 

 実物を見るのは初めてだが、間違いなくそうだろうと思った。

 

 「みなもちゃん?」

 

 「あわっ!」

 

 急いで鞄に隠して音を抑え、振り返る。

 

 「どうかした? トイレなら――」

 

 「ううん。だいじょぶ……。」

 

 言ったところで、振動は収まった。詳しくないが、さっき何処かスイッチでも押してしまったのだろうか?

 ひとまず安心……とはならない。

 ルゥはどうすべきか迷ったが、休憩中に考えようと思い、皆の元へ走った。

 

 

 

 

 

 

   ★ まじぱれ ★

 

 

 

 

 

 スロープを通り、五階にあるペンギンカフェへとやってきた。

 ここでは軽食デザート・ソフトドリンクすみだ水族館オリジナルのメニューが楽しめるようで、流々達は早速、チェック。

 どうやら多くは水族館の生き物を模しており、ドーナツアイスクリーム期間限定のものなど、とにかく色々ある。

 折角なので、全員オリジナルのものを注文することにし、大水槽前ソファに集まった。

 他の客と共に腰を下ろし、一息つく。

 

 (さて、どうしよう……。)

 

 亀の形をした和菓子を食べながら、ルゥブツのことを考える。

 

 (こんなもの落とし物として届けていいのかな……)

 

 拾ってしまった以上、元あった場所に戻す訳にもいかない。

 小さな子もいるし、落とした人ができるだけ恥ずかしい思いをしないように……

 

 「ダイヤちゃん、こっちこっち♪」

 

 「……!」

 

 少し離れたところに、さっき一緒に写真を撮った女の人達がいた。

 生クリームみたいに白くてふんわりした髪の人が、チンアナゴを模した太くて長いパンに頭からかぶり付いている。

 

 「ん~、おチンアナゴ美味しい~!」

 

 「…………。」

 

 まさかという思いが頭を駆け巡るが、もし違ったら、大変失礼なことになる。

 

 「中々凝ってるよね、これ。」

 

 「萌ちゃんは何頼んだの?」

 

 「クラゲソーダです。萌えます!」

 

 悩み過ぎて食べ物のことが頭に入ってこない。

 ここは何だか分かってないフリをして、聞いてみるか。

 いや、でも、折角の楽しいおでかけが台無しになる可能性を考えたら……

 ルゥは動くに動けない。

 

 《ギュィィン! ギュィィン! ギュィィン!

 

 「………っ!」

 

 その時、ブツがさっきよりも大きな音で震え始めた。

 バッと女の人達を見るが、食べ物に夢中で何かした様子はない。

 

 「ん? 何の音?」

 

 「電話かな?」

 

 「あ、ちょっと……親からかも! 出てくるね……!」

 

 咄嗟に誤魔化し、鞄を持って、その場から離れる。

 

 「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 人気のない場所に行き、震えが収まるのを待つ。

 

 (ど、どうしよう……。このまま持ってたら……)

 

 何か酷い勘違いをされそう。

 緊張で、体の至るところから汗が噴き出てくる。

 もう持ち主のことなんてどうでもいいから、そこら辺に転がしておこうか。

 

 (あわわ……。落とす方が悪いよ、こんな物……)

  

 さっきの女の人達のじゃないなら、お手上げだ。

 全然収まりそうもないので、周囲に誰もいないことを確認し、鞄の中から取り出そうとする。

 しかし――

 

 「コッチから聞こえてきます。」

 

 「!?」

 

 誰か来る……!

 逃げる隙もなく、固まる。

 

 「おぉ~?」

 

 現れたのは、二人。銀髪で、腰に浮輪のようなリングを付けた女の人と、ヤシの木っぽい髪褐色肌女の人だった。

 

 「あの鞄の中かと。」

 

 「え。いや、そんな訳ないよ。別の物と間違えてない?」

 

 「間違いありません。」

 

 「いや、でも――」

 

 「間違いありません。」

 

 銀髪の人が近付いてきて、強引に鞄を奪われる。

 

 「あっ――」

 

 「ありました。」

 

 そして、まだ動いているブツを取り出し、褐色肌の人に渡す。

 

 「え、何で持ってたの?」

 

 「あ、えっと……。さっき六階で拾って……。そのままにしておくのマズいかなって……。」

 

 「あー、あはは! そっか、ありがと♪」

 

 良かった。とりあえず、そこまで迷惑にはならなかったみたい……。

 しかし、安堵も束の間、銀髪の人に腕を掴まれる。

 

 「待ってください。」

 

 「えっ。」

 

 「あなた、他にも不思議な物・・・・・を持っています。」

 

 突然、全く心当たりのないことを言われる。

 

 「あ……あの、すいません。友達と来てるので……、そろそろ戻らないと……」

 

 「そーだよ、レプリ。意味分かんないこと言わないの。」

 

 銀髪の人はレプリというらしい。変わったお名前で……

 

 「の形をしていました。」

 

 「!!」

 

 ドキリとした。

 彼女が言っているのは、きっと変身アイテムのことだ。あの日、手に入れた。魔法少女の。

 

 「ごっ、ごめんなさい……!」

 

 ルゥは手を振り払う。

 流々もそうだが、周囲にはあくまで魔法少女になる異能力・・・・・・・・・・に目覚めたってことで通してるし、あまり深く聞かれると困るのだった。

 

 「あぁ、ごめん……! たまにおかしくなるからこの子。」

 

 褐色肌女の人は、レプリっていう人の頭を掴んで強引に下げさせた。

 

 「私はおかしくなどありません。スキャン結果をお見せしましょうか?」

 

 「自己診断じゃ意味ないよ……!」

 

 (何なんだろう、この人達……)

 

 ルゥは軽く引きながら、皆の元へ戻った。

 

 

 

 

   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 「おおぉ~ん♪ ここが噂に聞く、えっどリウム♡」

 

 「…………。」

 

 しかし、戻ったところで変態からは解放されなかった。

 

 「じー……。」

 

 食事の後、江戸リウムという金魚展示エリアに来たが、ここでさっきの二人と写真の二人が合流し、あろうことか四人組に。

 レプリからはずっと視線を注がれている。

 

 「何かあの人、ずっとこっち見てくるね。」

 

 「な、何だろうね……。」

 

 ルゥは極力目を合わせないようにする。

 

 「やっぱ写真かな?」

 

 「絶対、嫌……!」

 

 「おお?」

 

 携帯を取り出そうとした流々を制止する。

 写真を見る度にアレのことを思い出すのは御免だった。

 

 「この金魚すくえないの?」

 

 「掬ってどうするんだい?」

 

 「たまきん袋作る♪」

 

 「私はに興味があります。」

 

 「?」

 

 「……! 皆、そろそろ次行かない?」

 

 「え、どうしたの? あ……」

 

 再び絡まれる前に避難する。

 自分の所為で魔法少女の秘密がバレるのは嫌だし、近くであんな会話を聞かされると、イベントを純粋な気持ちで楽しめない。

 

 「新しいエリアって、アクアスコープだっけ?」

 

 「そうそう。もしかして、みなもちゃん知ってた?」

 

 「へ?」

 

 「きっと気に入ると思うよ♪」

 

 

 

 

 

   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 「…………。」

 

 新しく出来たというエリア

 そこに向かうと、オススメされた理由はすぐに理解できた。

 壁やオブジェに幾つも空いている穴。

 それを覗き込んでみると、そこには水族館で暮らす生き物達の過去の映像や、遠くで暮らす生き物達の映像が流れていた。

 その中には、成長したウミガメの姿もあり、故郷・小笠原の海へ還っていく様子は、寂しくもじんとさせられる。

 

 「みなもちゃん。見えた?」

 

 「うん……。」

 

 このすみだ水族館で昔から続けられている、絶滅危惧種保全活動

 さっき六階で見た赤ん坊ウミガメも、成長したら元の居場所に帰るのだろう。

 そうしてまた新しい命へと繋がっていく……

 

 (いいな……)

 

 こうした活動を見る度に、自分にも何かできることはないかと、深く考えさせられる。

 

 「……。私もいつも考えるんだ。

  この世界の為に、自分は何ができるんだろうって。」

 

 「…………。」

 

 「トイレ怪人はさ。人間が汚れてるって言ってたんだよね。

  誰もがモノを大切にする、綺麗な世界を望んでた。

  みなもちゃんはどう思ったの?」

 

 「……。正直……無理だと思った。

  皆の思いを一つにするなんて、聞こえが良いだけで、きっと良い世界じゃないと思う。

  あんな風に自分の都合を周りに押し付けて……、強引に変えようとしても、反発を生むだけ……。

  だから、止められたことは後悔してない。

  最後……私にルルちゃんみたいな力が無くて、助けられなかったから……。」

 

 「みなもちゃん。」

 

 「……?」

 

 「実は、渡したいものがあるんだ。」

 

 流々はそう言うと、鞄から何かを取り出す。

 

 渡したいもの……。

 

 ルゥはそれが何であるか想像できなかった。

 

 「手、出して。」

 

 「うん……。」

 

 両手で器を作る。

 そこに流々の手が重なり、何かが置かれる感触。

 

 「あ……。」

 

 ルゥは目を見開く。

 渡されたのは、まるで食玩のような手の平サイズのトイレ怪人だった。

 

 「ごめんね。今はまだ力が足りなくて、そんな状態でしか残せなかったんだ。」

 

 会話はできない。動くこともない。本当にオモチャみたいな状態……。

 

 「これ……元に戻せるの?」

 

 「できないとは思わない。今後の頑張り次第だと思う。」

 

 「…………。」

 

 まだ取り返しがつく。ルゥトイレ怪人を大事に手で包み込んだ。

 

 「大丈夫。私は皆を支えるマスターエール

  あいつら……ネガヘルツの番組を絶対にハッピーエンドで終わらせてやろうよ。」

 

 「……うん。やろう……!」

 

 顔を上げるルゥ。その表情は、決意に満ち溢れていた。

 ようやく迷いの晴れた様子の彼女を見て、流々達も笑顔になる。

 

 「はぅぅ元気なみなも先輩……! 萌えます!」

 

 「それじゃあ、後はグッズコーナーだね。行こうか。」

 

 「こっちだよ♪」

 

 「…………。」

 

 仲間……。友達……。

 騒がしいのにはどうしても慣れず、心から受け入れることはとても難しいが、今は感謝の気持ちでいっぱいだった。

 一緒にいれることをこんなにも嬉しく感じるなんて。

 今の気分なら、皆と同じように楽しめるかもしれない。

 そう思い、付いて行こうとした。

 その時だった。

 

 「おお! こんなところにノゾキアナ!」

 

 !?

 

 振り返ると、そこには例の四人。

 

 「ねぇ、見て! チンコが泳いでる!!」

 

 「え? あぁ、ウミガメだね。

  暖かくなってくると、卵を産みに上がってくる。」

 

 「ちん……」

 

 「ん、どしたの? みなもちゃん。」

 

 突然、フリーズしたルゥ

 その耳は彼女達の会話を聞くことに集中していた。

 

 「それ! 海の中で産まないのって、やっぱ見せ付ける為?」

 

 「いえ、呼吸ができず死んでしまいますから……」

 

 「私、性別が温度で決まるって聞いたことあるよ。」

 

 「ちなみにウミガメってAVメーカーの名前にも使われててね。」

 

 「おぉ~。どんなの? どんなの?」

 

 盛り上がっている。周りの目も気にせず。

 ルゥはそんな危険痴帯へふらふらと近付いていく。

  

 「あの……。」

 

 「ん。」

 

 「ちんこって何のことですか……?」

 

 「エッ? 亀頭……。

  っていったらチンコだし♪」

 

 白髪の女子は目を閉じ、頬を赤らめる。

 

 「違います! 全然似てないです!」

 

 「?」

 

 「みなもちゃん……?」

 

 突然、声を荒げたルゥに、流々達は驚き、駆け寄る。

 

 「んー、確かに色はあんまり似てないかもね。」

 

 「えー! でも、亀頭って言葉があるんだよ!」

 

 「だからって、そんな呼び方しないでください!」

 

 「やだ! チンコはチンコだもん!」

 

 腕を組み、頬を膨らませる。

 

 「まぁまぁ、しもちゃん……。普通の子の前だから……」

 

 「いえ、彼女は普通ではありません。」

 

 「え?」

 

 レプリが一歩前に出る。

 

 「たった今、情報が届きました。

  彼女は水漏 ルゥ。先日、街に出現したトイレ怪人を倒した魔法少女です。」

 

 「……!」

 

 「えっ、そうなの?」

 

 「だってさ、しもちゃん。」

 

 「……!? おっ、脅そうったって無駄だよ! こっちには表現の自由があるんだから!!」

 

 「それは誰にもあるよ。」

 

 「どうなの、流々ちゃん?」

 

 「う~ん、一応、向こうが正論かな……。

  みなもちゃん。」

 

 しかし、ルゥは肩を掴まれても退こうとしない。

 

 「国は関係ありません。取り消してください。」

 

 「うわー! ダイヤちゃん、助けて! この子めんどくさい!!」

 

 「素直に謝ったらいいんじゃないかな……。」

 

 「いえ、私から一つ提案があります。」

 

 

 

 

   ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 「チャンネルチェンジ!!」

 

 《カッ!!

 

 …………。

 

 流々のリモコンから放たれた光が収まり、ゆっくり目を開けると、辺りは真っ白な空間に。流れ落ちる水の美しい決闘場に変わっていた。

 

 「ここなら誰にも迷惑かからないでしょ。」

 

 「へー、本当に魔法みたいな異能力。」

 

 「ココナ。席、こっちみたいだよ。」

 

 《…………。なぁ。》

 

 「ん?」

 

 流々の鞄から仮面状態の火星ひぼし さくが顔を出す。

 

 《止めなくて良かったのかよ?》

 

 「こうなったら良い機会だよ。みなもちゃんデッキ楽しみだし♪」

 

 《二日前に始めたばっかの初心者だろ。

  やる気みたいだけど、ちゃんとデッキ回せるのか?》

 

 「では、勝負の内容を確認します。」

 

 フィールドの中央に立ったレプリが司会をする。

 

 「勝負はTower of Rankersにて行い、敗者は勝者の要求を呑む。

  水漏 ルゥ様が勝った場合、霜之口しものぐち 亥鷺いさぎは、今後、亀に対する下ネタ禁止。」

 

 「ぶぅー!!」

 

 「こりゃ、しもちゃんにとっては死活問題だね。」

 

 「あはは、そうかな?」

 

 「霜之口 亥鷺様が勝った場合、水漏 ルゥ様謝罪と、その鞄の中の亀の機械、提出をお願いします。」

 

 《亀の機械……? って、変身道具か……!

  おい。あれ調べられるの、マズくないか?》

 

 「まぁ、その時はその時♪」

 

 《…………》

 

 「それでは両者、位置についてください。」

 

 霜之口ルゥは、フィールドの両端に立ち、向かい合う。

 

 《ダンッ!

 

 最早、相手のことしか見えていない。

 応援する者、先行きを憂う者、ただただ状況を楽しむ者――

 二人は全てをかえりみず、ぶつかり合う。

 

 「「ランカーズファイト!!」」