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『ケロタン』第6話「カーチェイスナイト」(2/3)

ケロタン:勇者の石+5

 

 

 ◆ ダイバーシティ・ダイナミックタワー ◆

 

 「アグニス様、そろそろ時間です。」

 「ああ。」

 

 助手に促され、アグニスコンピューターの前から離れる。

 ここまで特にトラブルは発生せず、会談は予定通り、開かれるようだ。

 待機室を出たアグニスは、エレベーターに乗り込み、一旦、一階へと向かう。

 そこではケロタンテロエグリィの三人が待っていた。

 

 「おっ、アグラ~ン! こっちこっ――いてぇ!!」

 「あんたどういう言葉遣いしてんのよ……!」

 

 ついいつもの調子でフランクに話しかけたケロタンのケツにドリルを突き刺すエグリィ

 

 「はぁ。お前達、観光は楽しめたのか?」

 「うん……! じゃなかった。はい!」

 「尻の穴が捻じれた。」

 

 テロケロタンは、会談場所へ向かうアグニスの後について歩く。

 

 「お前達は、一応、私の部下ということになっている。

  今回はまぁ、何も喋らず、ただ見ていればいい。」

 「急に叫びたくなった時は?」

 「テロケロタンの発作を止める役割はお前に任せた。」

 「あ、はい。頑張ります。」

 

 テロは背筋を伸ばし、答える。

 

 「では予定をもう一度確認しておくが、まずは東西南三国での会談。次に、個別の会談がある。

  最後の夕食会には、参加したければそのままついてこい。」

 「ウインナー出るか?」

 「サボテンは?」

 「あまり期待するな。」

 

 そんな会話をしながら歩いていると、眼鏡をかけた白衣姿ラド族がこちらに近付いてきた。

 

 「ん?」

 「助手ラルスだ。今回、会談で少し手伝ってもらう。

  お前達のことは話してあるから心配するな。」

 

 ラルスが合流し、会談が行われる部屋には四人入室する。

 部屋には既に他国の王とその部下達が待っていた。

 

 「来たか……。」

 「待たせてすまないな。」

 

 アグニスは一言謝った後、ケロタン達と共に席に着く。

 

 「アルミラ代理か。」

 「ええ、よろしくお願いします。一応、リモート参加を勧めておいたのですが、寝ているようで……。」

 

 どうやら、西国の席に座っているラド族は、アルミラではなく、代理人らしい。

 

 「はぁ。奴は何もかもをほったらかしにし過ぎている。

  何故、我らが奴の怠慢の尻拭いをさせられなくてはならないんだ?」

 「申し訳ございません……。」

 

 南国の王であるロッグ族――キングタンは悪態をつく。アルミラの自由奔放ぶりにはうんざりしているようだ。

 

 「…………。今回のメンバーは全員揃ったようだな。それでは始めようか。」

 

 適当な会話を交わした後、首脳会談アグニス司会で始められた。

 まずラルスが前に出て、モニターに文字グラフやらを表示して、自国の状況――経済医療環境新技術などのことを、アグニスと共に説明していく。

 難しい話は分からないが……。

 

 「病気寿命はともかく、犯罪事故魔物によって命を落とした人数とはな。」

 

 死亡者数のグラフが表示されたところで、キングタンが口を挟んだ。

 

 「異常だとでも?」

 「もしこんなデータが公表されれば、我が国から国民はいなくなる。」

 「そんなことをする気はない。」

 

 (どういうことだ?)

 

 こんなことになってるとは初めて知った。

 流石のケロタンも首を傾げずにはいられない。俺の住んでる国、人死なな過ぎ。

 

 「この数字はお前の国の息がかかった機関の調査とも一致する。データが間違っていることはない。」

 「しかし、というのは……」

 「一人でも死ねば、大問題だが、お前はそうではないのか?」

 

 そう言われて、キングタンは口をつぐむ。

 ぐうの音も出ないのか、何だかアグニス国王として一番優れてる感じだ。

 その後、南国西国報告を聞いても、その印象は変わらなかった。

 

 ◆ ダイナミックタワー・待機室 ◆

 

 三国での会談が終わり、次は個別の会談

 少しの休憩を挟んだ後、席を立ったアグニスの後をケロタン達はついていく。

 まずは西国との会談を終わらせるつもりらしい。結局、アルミラ本人とは会えないのだろうか?

 

 「いや~、こんちは~! アグニスちゃ~ん!」

 「…………。」

 

 部屋に入ると、モニターに満面の笑みを浮かべたラド族が映っていた。

 

 「アルミラ、寝ていたのではなかったのか?」

 

 どうやらこれがアルミラらしい。

 ケロタン達は席に着き、ベッドに寝転がったままのアルミラと向き合う。

 

 「キングちゃんは怖いからね~。この後、話すんでしょ?

  絶対、例の件に突っ込み入れてくると思うよ~。」

 「だろうな。多少、長くなることは覚悟している。」

 

 例の件? それってやっぱり……。

 

 「はー。もうこれさー。皆、いちいち集まったりしないで、リモート参加でよくない?

  どうせ、大した話しないんだしさー。」

 

 アルミラは横を向き、自分の頭の角を磨き始めた。

 

 「直接会うことの意味は大きい。分かっているだろう? アルミラ。」

 「ハハハ! そんな怖い顔で睨まないでよ~。もっと肩の力抜いてかないと。

  いつか倒れちゃうよ?」

 「心配無用だ。」

 「…………。」

 

 アグニスは涼しい顔をしている。

 しかし、アルミラの話を聞いていると、何だか不安になってくる。

 もしアグニスがいなくなったら、このはどうなるのだろうか?

 

 「さて、もう話は十分だよね。

  ああ、オーバルキングちゃんとの会談は任せたから。適当にあしらっちゃって。」

 「はい……。」

 

 アルミラは後のことを代理人に押し付け、通信を切った。どうやら西国との会談はこれで終わりのようだ。スムーズなのは良いことだが、拍子抜けというか、凄くテキトーだ。

 

 「はぁ……、戻るか。」

 

 アグニスがあんまりアルミラのことを好きでない理由はよく分かった。

 

 「次はキングタンとの会談なんだよな? アグラン。」

 「ああ、西国南国会談が済んだ後にな。

  そんなに長くはかからないだろう。」

 

 その後、しばらく待機室ネットをしながら時間を潰した。

 Dちゃんねるというネットの掲示では、怪盗レッドキャッツのことばかりで、首脳会談のことはあまり話題になっていない。

 悲しいかな。皆、政治より、怪盗に夢中だ。

 

 「レッドキャッツ襲撃って何時頃になるんだろ。」

 「さぁな。犯行予告には、具体的な時刻は書かれていなかった。

  しかし、彼女が現れるのは、いつも日が沈んでからだな。」

 

 となると、夕食会の時間に現れる可能性もあるのか。もたもたしてるとイベントに乗り遅れるかも。

 

 「なぁ、アグラン――」

 「警備に加わりたいんだろう? 

  前もってダイバーシティ警殺上層部と話をつけておいた。こちらから人員を送るかもしれないと。」

 「さっすがアグラン!」

 

 何もかもお見通しのようだ。

 

 「よし、テロ会談終わったら、速攻で夕食食べて、リクウス本社に向かうぞ!」

 「怪盗と対決だね!」

 

 手を合わせる二人。

 

 「まぁ、頑張れ。」

 

 アグニスは適当に応援し、沸騰しているコーヒーの入ったカップに口を付けた。

 

 ◆ ダイナミックタワー・会談部屋 ◆

 

 そして、いよいよキングタンとの個別会談の時間が訪れる。

 金色の肌を持つロッグ族で、王族らしい衣装に身を包んでいるキングタン。後ろにいる茶色いロッグ族は、家来である拳法家ケンコタンだ。

 部屋ではさっきと同じ二人が待っていた。

 

 「オットタンは連れてきていないのか?」

 「奴のお手玉でも見たいのか?」

 

 着席する際、二人の間で謎の会話が交わされる。

 早速、空気がピリピリし始めた。

 

 「そっちはまた妙なメンツだな。誰だ、そのサボテン族は。」

 「え、えっと……。」

 「とある小国の王子だ。訳あって、私の下で色々と学ばせている。」

 「ふん……。まぁどうでもいい。」

 「そうか。こちらからは特に無いが、何について話し合う?」

 「とぼけるな。

  例の件に一切触れないつもりか?」

 「例の件とは?」

 「お前ので一週間毎に起こっている不気味なテロ。あれは何だ?」

 「…………。」

 

 やっぱり、その話だったか……。

 

 「逃げることは許さん。あれには奇妙な点が多過ぎる。」

 「言ってみろ。」

 「まずは一番最初の事件だ。

  何故、犯人はお前が軍事用ロボットの設計図を持っていることを知っていた?

  城の中にスパイがいないか疑わないのか? 知っていて泳がせていたのか?

  それとも……意図的に情報を漏らしたのか?」

 「……何の為にそんなことをする必要がある?」

 「…………。魔物の数が増えてきたとはいえ、あんなに巨大なロボットが必要とは思えない。

  一体何を想定して作っていた?」

 「言っただろう。あんなものはただの趣味だ。」

 「デザインもか? ふん。自分そっくりのロボットなど、あんなのお前のセンスとはとても思えない。

  そもそも設計図は本当にあったのか?」

 

 確かに、誰も現物を見ていない以上、アグニス狂言である可能性は否定し切れない。

 

 「では、窓の穴は私が自分で開けたと?

  テロが起きることを事前に知っていたと?」

 「それを聞きたいのはこっちだ。」

 「話にならないな。」

 

 アグニスは腕組みをし、椅子の背もたれに背中を預けた。

 

 「証拠が無ければ、ただの妄想陰謀論だな。」

 「戦時中――、お前はあらゆる兵器の開発に携わっていたという情報をこっちは掴んでいる。」

 (え?)

 

 ケロタンは驚き、アグニスの顔を見る。

 

 「…………。」

 

 しかし、アグニスは表情一つ変えない為、何も読み取れない。

 

 「戦争犯罪人はほとんどが処刑されたか、逃げた先で野垂れ死んだ。

  しかし、貴様は、早い段階でを裏切り、自分の父親所属するレジスタンス情報を流していた。

  結果、貴様は革命の立役者の一人として、処刑を免れた。」

 「何が言いたい。」

 「お前は魔物の研究もしていた筈だ。

  当時は我が国でも魔物軍事利用できないかと、多くの研究者が頭を悩ませていた。

  優秀・・であるお前が禁忌に手を染めていない筈がない。」

 「馬鹿馬鹿しい理由だな。

  自分達がやってるから、相手もやってる筈だと?

  結局、証拠はない訳だ。」

 「ああ。何も残っていない。

  お前のいた研究施設は、何者かの手によって、破壊され、貴重な資料は全て焼失した!」

 「………………。」

 

 キングタン口撃が休みなく続く。

 ケロタンは何か言いたくなったが、衝撃的な情報が多過ぎて、考えがまとまらなかった。

 

 「アグニス、貴様がを吐くことが得意なことは分かっている。」

 「全て、自作自演だとでも言いたいのか?」

 「俺はそう考えている。」

 

 キングタンの目が鋭くアグニスを捉える。

 

 「話はここまでだ。

  アグニス、お前の行動は今後、注意深く観察させてもらう。お前の下で働く連中も同様だ。」

 「…………。」

 「もし……、またこの世界戦火に包み込もうと考えているのなら、容赦はしない。

  その時は、我がが貴様の喉を貫く。

  ……せいぜい尻尾を出さないように気を付けることだ。」

 

 ガチャリと、キングタンを開けて出ていってしまった。

 しばらく部屋の中は静寂で包まれる。

 

 「心が叫びたがっているんだ。」

 

 ケロタンの発言はもれなく無視された。

 

 ◆ ダイナミックタワー・一階・食堂 ◆

 

 「さて、あいつが私のことを嫌っているということが、よく分かっただろう。」

 

 夕食会になり、アグニスケロタン達と共にテーブルを囲む。

 

 「何か食欲出ないんだけど……。」

 

 折角、高級料理フルコースなのに……。

 

 「気にすることはない。奴は陰謀論だ。

  物事の裏にとんでもない負のカラクがあると思い込んでいる。」

 「でも……実際どうやってるんだ?

  犯罪事故魔物による死者になんて。

  皆、好き勝手に動いてるんだから、制御不能だろ。」

 「…………。

  それを知るのは、お前達にはまだ早いな。」

 

 そう言って、何も教えてくれないアグニス

 

 いつかは話してくれるのだろうか。

 本当にアグニスを信じて大丈夫なのだろうか。

 

 そんなことを思わされた三国首脳会談だった。

 

 アグニスがあれを俺達に見せようとした理由は何だったのだろう?

 ケロタンテロは、まだその答えには辿り着けなかった。

 

 ◆ ダイバーシティ・株式会社リクウス・本社ビル前 ◆

 

 「はぁ~~~……。

  で、何でこんなことになってんの。」

 

 夕食会を終えたケロタンテロは、アグニスと別れた後、リクウス本社ビル前ダイバーシティ警殺警備に加わっていた。

 二人を監視しているエグリィも同様だ。

 

 「へへっ、上から話は伝わってる筈だぜ。

  俺が追加の人員だ!」

 「ぼ、僕も!」

 

 シャキーン!決めポーズを取る二人。

 

 「嘘でしょ……。」

 

 エグリィは天を仰ぐ。

 太陽は既に沈み、街の明かりが夜闇を照らしている。

 いつ怪盗レッドキャッツが現れてもおかしくない雰囲気だった。

 ビルその周辺には厳戒態勢を敷いているが、野次馬の一部はドローンを飛ばし、レッドキャッツの姿を撮影しようと待ち構えている。

 

 「ああー!! 全員逮捕してぐっちゃぐちゃにしてやりたい!!」

 

 頭を抱え、叫ぶエグリィ

 

 「血の気多過ぎだろ。」

 

 まぁ、こうやってイライラさせて集中力を乱すのがレッドキャッツ作戦なんだろう。

 悪いが思い通りになってはやらない。ケロタンにはずっと温めていた作戦があった。

 

 「よし、テロ署長に提案しに行くぞ。」

 「え?」

 「あ、ちょっと……!」

 

 「現れたぞー!!

 

 エグリィケロタン達を追いかけようとした矢先、野次馬の方から「うおおぉぉー!!」と歓声が上がる。

 

 「えぇ……。」

 

 あまりのタイミングの悪さに情けない声が出てしまうエグリィ

 彼女の目は、遠くのビルの上に立つ、仮面マントを付けた赤毛のミア族を捉える!

 

 「ふっ……。」

 「あの女ァ……、今、鼻で笑いやがったな!!」

 

 ブチ切れたエグリィは、2機小型ドローンエグイドリル》に乗り、レッドキャッツに突撃する。

 

 「皆ー! 今日は応援しに来てくれてありがとにゃー!!

 「「「うおおおぉぉぉぉー!!!」」」

 

 エグリィを無視し、盛り上がるレッドキャッツ重篤患者達

 

 「どけぇー!! ぶち抜くぞ、オラァ!!

 

 自分がいるからには舐めた真似はさせない。

 エグリィは強引に道を開けさせ、レッドキャッツのいるビル屋上へと向かった。

 

 「ふふん♪ 猪突猛進のおバカさんがやってくるにゃ♪」

 

 レッドキャッツはその場から動かず、エグリィがやってくるのを待つ。

 

 「今日は随分、お早い登場じゃない!

  派手にしてくれちゃって、遂に頭おかしくなった!?」

 「だって、しょうがないもん。契約があるから。」

 「契約?」

 

 依頼主注文だろうか?

 

 「何かこわ~い人達だったにゃー。  

  そういう訳だから、今回は派手にやるつもり。

  本気で相手しちゃう♪」

 「あっそう。死ねぇ!!」

 

 エグリィ二機エグイドリル――ハードコーンラーセンダーに乗ったまま、レッドキャッツに突っ込む。

 しかし、ドリルが彼女の体に触れた瞬間、ノイズが走り、彼女は消えてしまう。

 

 「ホログラム……!?」

 

 エグリィはすぐさま停止し、周囲に視線を走らせる。

 すると、ビル前に集まっていた野次馬の一人が突然、飛び出した。

 大きく跳躍し、障害を飛び越えていく!

 

 「いた……!」

 

 どうやら野次馬の中に紛れていたようだ。

 ビル前ダイバーシティ警殺は、次々と凶器を構える。

 しかし、彼女がストップウォッチらしきものを取り出すと、その動きは止まってしまう。

 そうしてあっさりビルの入口まで辿り着いたレッドキャッツに、野次馬達は沸く。

 

 「怪盗秘密兵器アップデート済みにゃん♪」

 

 恐らく時属性の魔法を使ったのだろう。だが、強力である為、連発はできない筈。

 

 「D班! 何としてでも止めなさい!!」

 

 エグリィ無線で指示を飛ばす。

 一方、その頃――

 

 ◆ 株式会社リクウス・本社ビル・社長室 ◆

 

 「ふぅ……、これで良しっと。」

 

 ケロタン怪盗レッドキャッツが狙う金庫の置かれた社長室で、何やら作業をしていた。

 

 「さて、今どうなってるかな。」

 

 ケロタン社長の椅子にどかっと座り、端末の画面に目を落とした。

 そこにはドローンから送られてくるリアルタイム映像が映し出されている。

 怪盗レッドキャッツは様々な秘密兵器を駆使し、警備を突破しているようだ。

 

 「すげー、情報通りだな。」

 

 事前に怪盗レッドキャッツ装備は調べてある。

 任意の場所に自分のホログラム投影できる《ミラーリング》。

 滞空できるだけでなく、魔法を弾く《オーバーマント》。

 で捕らえた相手を混乱状態にする《フラフラフープ》等々。

 毎回、警殺と互角の勝負を繰り広げてるだけあって、どれも強力な秘密兵器だ。

 

 「相手にとって不足はないぜ。」

 

 何処からそんな自信が湧いてくるのか、ケロタンは余裕の笑みを浮かべる。

 

 《ピッ》《カシャッ

 

 IDカードをかざさなければ開かないドアをいとも容易くハッキングで解決するレッドキャッツ

 その途中、カメラへのサービスも忘れない。

 間もなく彼女はケロタンのいる社長室に辿り着く。

 

 「さぁ、勝負だ。レッドキャッツ。」

 

 《ピッ》《カシャッ

 

 数分後――、遂に社長室のドアを破り、目的の場所へと侵入を果たすレッドキャッツ

 彼女は暗闇に浮かぶ謎の影に警戒する。

 

 「誰にゃ?」

 「ふははははは!! 待っていたぞ、レッドキャッツ!!

 

 謎の影ソファから飛び降りると、部屋中に仕掛けられた照明が点灯し、その姿を一斉に照らし出す!

 

 「うおっ、眩しっ!!」

 

 もしかしなくても、ケロタンだった。

 

 「うぅ~、何者にゃ!?」

 

 眩しかったのはレッドキャッツも同じようで、手で光を遮りながら尋ねる。

 

 「ふふふ、俺の名前を知りたいか?」

 「……ぶっちゃけどうでもいいに――」

 「よく聞け!! 俺の名は怪盗グリーンロッグ!!

  俺が盗むのは、貴様の心だ!!」

 「にゃにゃ!?」

 

 そう、怪盗レッドキャッツなら、自分は正義。心を盗み、改心させる。

 これぞ心の怪盗

 

 「迷惑ファンかにゃ……!?」

 「お前、いい加減にしろ!」

 

 ノリの悪いレッドキャッツに遂にキレるケロタン。いや、怪盗グリーンロッグ

 ネットで騒がれて、その内、正体バレて、を爆上がりさせる予定だったのに、計画に支障が出る。

 

 (まぁ、良い。俺の新必殺技・・・・を見せてやれば――)

 「来ないなら、こっちから行くにゃ!」

 

 遂に戦闘開始

 レッドキャッツは取り出したライトスイッチを入れる!

 危ない! あれは光を当てたモノのサイズを10分の1にするという《キティライト》では!?

 

 「ふん、効かんな!」

 

 すかさずケロタン警殺装備であるライオットミラーシールドを構え、対応する。

 

 「引っかかったにゃ♡」

 「!?」

 

 しかし、光を跳ね返されても何ともない様子で距離を詰めてくるレッドキャッツ

 こっちが向こうの装備を知っているなら、当然向こうもこっちの装備を知っている。

 どうやらダミーライトだったようだ。

 

 (ふっ、初めからこんなものに頼るつもりはないさ。)

 

 シールドを収納したケロタンは、次に青白い光を放つ剣を手に出現させた。

 

 「……!!」

 

 それを見たレッドキャッツは、魔法で縮めていた腕のリングを元の大きさに戻し、斬撃を防ぐ!

 

 《ガキィン!!

 

 円月輪――!?

 いや、あれは秘密兵器の一つ、フラフラフープ! 使わせる訳にはいかない。

 ケロタンは速攻で斬撃を繰り出し、レッドキャッツの手からフラフラフープを弾き飛ばす!

 しかし、その後の刺突は回避され、距離を取られる。

 

 「ふん、私の必殺、《ケロソード》を防ぐとはやるな。流石、怪盗レッドキャッツ。我が宿敵。」

 「チッ、少し舐めてたにゃ……。」

 

 ダイバーシティ警殺のことは熟知しているレッドキャッツ

 突然現れたイレギュラーに対し、焦りを隠せない。頭のおかしい奴は何をするか分からないのだ。

 

 「これ以上、時間をかける訳にはいかない。猫の手を使わせてもらうにゃ。」

 「?」

 

 レッドキャッツ猫の手の形をしたコントローラーを取り出す。そして、肉球のようなボタンを押した。

 

 「アドメートス三号! カムヒヤー!!

 

 《ネコマンマー!!

 

 「……!!」

 

 大きな合成音声と光が放たれ、ケロタンは警戒する。

 

 《ガシャーン!!

 

 「なっ!?」

 

 ジェット音が近付いてくると思ったら、丸い形をした巨大な猫型メカ社長室の窓に突っ込んできた!!

 

 《ニャアアアアアアアアア~!!!

 

  アドメートス三号……!?

  ネットで見た一号二号はこんなにでっかくはなかったのに、物凄いバージョンアップだ……!

  ピンチだというのに、ケロタンは興奮してしまう。

 

 《ピカーッ!!

 

 「うおわっ!!」

 

 アドメートス三号の両目からレーザーが放たれ、ケロタン社長室を逃げ惑う。

 その隙にレッドキャッツは、目的の金庫を奪い、アドメートス下部ポケットから中に乗り込んだ。

 

 「それじゃあバイバイにゃ~ん。

  怪盗グリーンロック♪」

 「グリーンロッグだ!!」

 

 ケロタンビルから離れていくアドメートス三号に対し、叫ぶ。

 怪盗レッドキャッツVS怪盗グリーンロッグ初戦は、グリーンロッグ敗北で終わってしまうのか……!

 

 (ふぅ。これで良し。)

 

 配信スイッチを切ったケロタンは、怪盗の衣装を脱ぎ、隠していたドローンに跨った。

 

 (演技の甲斐はあったかな。)

 

 ケロタン作戦通りという顔をしていた。

 ん? そう言えば、テロは何処に行ったのだろうか?