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『異端のネシオ』1Hz「True or False」(2/3)

 

 Das Halbwahre ist verderblicher als das Falsche.

 (半分の真実は偽りよりも怖い。)

 

Ernst von Feuchtersleben(エルンスト・フォン・フォイヒタースレーベン

 

 

 

 

 ≫ 東京都新宿駅・東口

 

 

 

 午前11時――。

 

 自宅での作業を終えた夙吹はやぶき 創太そうたは、中野から東京の中心地――新宿へと移動し、たった今、駅の東口から出てきたところだった。

 

 新宿三丁目東京最大級の繁華街

 

 今日も東口のシンボルであるファッションビル――新宿アルタ街頭ハイビジョンから流れる音声が、駅前広場を彩っている。

 

 創太は少し立ち止まり、携帯で何処かへメッセージを送ると、賑やかなBGMの中、歩き出した。

 一日の乗降客数世界一を誇る新宿駅だが、休日は比較的閑散かんさんとしており、ラッシュの時間も避ければ、人混みに揉まれることはない。

 創太アルタ左側の横断歩道を渡り、靖国やすくに通りの方へと向かっていく。

 

 この先にあるのは、東洋一の歓楽街――歌舞伎町

 眠らない街と言われ、夜のイメージが強いが、昼にはまた違った魅力がある。

 

 しかし、今日は観光しに来た訳ではない。

 

 創太は入口に架かった【歌舞伎町一番街】のアーチを潜り、劇場通りを真っ直ぐ進んでいく。

 

 見上げなくても目に入る沢山のロードサイン。小さな店が幅の狭い道の左右に所狭しと軒を連ね、独特の空気感を作り出している。

 

 「……………。」

 

 ここは異能により、息を吹き返したヤクザ達が仕切る街。

 無秩序で猥雑わいざつ。この混沌とした世の中の御蔭で、かつての魅力を取り戻し、浮かれる者は多い。

 昼間は鳴りを潜めているが、指定暴力団――相王会そうおうかい虎門組とらかどぐみがここでは最も大きな力を持っている。

 

 だが彼らもまだ、自分達がに囚われている哀れな鳥であることを知らない。

 

 創太は目的地に辿り着き、目の前の大きな建物を見上げた。

 

 【TOWHA STATIONトウハ・ステーション)】。

 

 今、最も熱いカードゲーム――Tower of Rankersのプレイヤーが多く集まるゲームセンター

 創太はその中へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 ≫ 歌舞伎町・某所

 

 

 

 「ふぅー……。」

 

 「これで全部だな。」

 

 「はい……!」

 

 夙吹 創太がゲームセンターに着いた頃、とあるビルの地下室では、二人の男が何かが入った黒い袋を運び終わり、一息ついていた。

 

 一人は黒いサングラスをかけた丸刈りの巨漢。

 もう一人は革ジャンを着たパンチパーマの男だった。

 

 「御苦労さん。」

 

 「…………。」

 

 そこに更に二人の男が現れる。

 

 一人は丸刈りの男と同じく黒いサングラスをかけた銀髪長身の男。

 もう一人は有刺鉄線柄の黒マスクを付けた細身の男で、袋の置かれたシートの上で腰を下ろした。

 

 「今日はやけに多いな。抗争でもあったのか?」

 

 「いや、誰が頼んだんだか、出来立て死体のデリバリーだよ。」

 

 銀髪は少し笑いながら、遠回しに答える。

 

 「…………例のアレか。」

 

 マスクの男は事情を察すると、持ってきた鞄を漁り始める。

 

 「さっさと頼むぜ。今はこんなのに構ってる暇はねーんだ。」

 

 丸刈りの巨漢は頭を掻きながら、男を急かした。

 

 「録画はさせてもらうぞ。」

 

 「分かってるよ。」

 

 銀髪から許可を得たマスクの男は立ち上がり、黒い袋から中のものを出していく。

 

 「………………。」

 

 ゴロンと出てきたのは、人間。どれも人間の死体である。

 

 年齢・性別、全てバラバラ。中には十代とおぼしき少女まで混じっている。

 

 「ん……?」

 

 「どうした?」

 

 「いや、この死体だけ外傷があるぞ。」

 

 「どうでもいい。さっさとやってくれ。」

 

 「そうか……。」

 

 一瞬、鋭くなった表情は、すぐに興味を失ったように弛緩しかん

 男は眠たそうな目で鞄の中からカメラを取り出す。

 

 「いいんですか、撮らせて?」

 

 「そういう契約。かみさんが喜ぶんだと。」

 

 「えぇ……?」

 

 パンチパーマの男はよく理解できず、困惑した表情を浮かべる。

 

 「じゃあ、始めるぞ。」

 

 マスクの男はカメラを死体の山に向けると、その目を光らせた。

 

 すると、折り重なった死体が次々と震え、膨らみ出し――

 

 次の瞬間、体が風船のように破裂。中からおびただしい量のうじが噴き出した。

 

 「うっ……!?」

 

 あまりに気色の悪い光景に、パンチパーマの男の顔が引きつる。

 

 「虫は嫌いか? まぁ好きになられても困るが、何度も見てりゃその内慣れるさ。」

 

 「これでちゃんと処理できるんですか?」

 

 「骨まで食べるから安心しろ。」

 

 マスクの男の言う通り、死体はあっと言う間に蛆に覆われ、白くなり、数分も立たない内に消え去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 ≫ TOWHA STATION

 

 

 「サモンタイプ・アリア Vocal Android ― RINNEボーカルアンドロイド―リンネ)とELENエレン)をオーバーラップ!」

 

 ゲームセンターに入ると、すぐ近くのスペースでTower of Rankersの対戦が行われていた。

 創太はすぐにケースから取り出した拡張現実眼鏡をかけ、表示されたログを確認しながら、観客に加わる。

 

 「電子の歌声が今、重なる。青き音の精霊よ。虹の鍵盤を舞い踊れ!

  詠唱召喚! MIX Vocaloid ― DINEミックスボーカロイド―ディーネ)!!」

 

 二体のユニットが一つとなり、新たに強力なユニットが召喚される。

 詠唱召喚。制限時間内に指定のフレーズを正しく唱えることで成功する召喚方法だ。

 場に現れた青き電子の歌姫を操るのは、初見音はつみね 遊音ゆおんという名前の少女。恐らくハンドルネーム

 どうやらリモートで参加しているらしく、プレイヤーの位置に立っていたのはツインテールアバターだった。

 

 「よぉ、来たか。」((( )))

 

 「ん。」

 

 肩を叩かれ、振り向くと、後ろに研究室仲間の新械しんかい 飛行とびゆきがいた。

 

 「悪いな。今、対戦中だ。」((( )))

 

 「別にいい。すぐに終わるだろうしな。」

 

 創太は少女の対戦相手へ目を向ける。

 そこには不敵な笑みを浮かべる限無きりなし 零一れいいちの姿があった。

 

 「私はMIX Vocaloid―DINEで、プレイヤーにダイレクトアタック!」

 

 少女がユニットでの直接攻撃を宣言。

 歌姫はその口を開き、青い波動を放つが――

 

 「スキルカードコネクション・ロスト》。

  場に【種族:サイバー】ユニットが二体以上いる時、その内の一体を破壊することでバトルフェイズを終了させる。

  俺が破壊するのは、《バグエラー・ブリード》。」((( )))

 

 攻撃は限無の発動したカードに防がれ、追撃の機会も奪われる。

 

 「更に破壊された《バグエラー・ブリード》のスキル発動。

  カードを1枚ドローし、引いたカードが【バグエラーシリーズユニットならコスト無しで召喚できる。

  俺が引いたのは……、《バグエラー・クラッシュ》。」((( )))

 

 ユニットの召喚成功。

 限無のフィールドに今にも爆発しそうな赤いキューブが出現する。

 

 バグエラー……。

 

 モチーフは名前通り、システムの不具合であるバグやエラー。

 

 潰しても潰しても増えていく……。

 

 成程、他のゲームでもグリッチ(バグを利用した裏技)を使った害悪戦術で、相手の戦意を削ぎ落とすことを得意とする、限無らしいデッキだ。

 創太はカードの詳細を確認し、その出来の良さに感心する。

 

 Tower of Rankersの最大の特徴であり、人気の理由。

 

 それはユーザーオリジナルのカードを自由に作成でき、公式の大会でも普通に使用できるということ。

 無論、良いものを作るにはそれなりの課金が必要だが、誰もがこの世に二つとないカードで戦えるというのは、とても魅力的だ。

 

 「ターンエンド……!」

 

 攻撃を止められた少女は、そのままターンエンド。ターンが切り替わり、限無がデッキからカードをドローする。

 

 「俺のターン。

  スキルカードリセットマラソン》発動。

  手札の【種族:サイバー】のユニットを任意の枚数デッキに戻し、戻した枚数分ドローする。

  俺が戻すのは、《バグエラー・ステルス》と、《バグエラー・クッキー》。」((( )))

 

 限無は二枚戻し、二枚ドローする。

 

 「《バグエラー・フリーズ》を召喚。」((( )))

 

 今度は凍り付いたキューブが限無のフィールドに出現。

 現在、彼の場のユニットは三体。《バグエラー・ブリード》《バグエラー・クラッシュ》《バグエラー・フリーズ》。

 カードの詳細を確認するが、どれも《MIX Vocaloid―DINE》を倒せるだけの力は無い。

 ここからどうする。

 

 「サモンタイプ・オーバー

  俺はRank 4の《バグエラー・クラッシュ》を基底とし、《バグエラー・フリーズ》《バグエラー・ブリード》をオーバーライド!」((( )))

 

 《バグエラー・クラッシュ》に、光に包まれた二体の《バグエラーユニットが重なる。

 

 「超乗ちょうじょう召喚! 現れろ、観測不能の幻狂――《バグエラー・マトリックス・ハイゼン》!!」((( )))

 

 《バグエラー・クラッシュ》の姿が変わり、白い服を着た魔術師のようなユニット限無の場に現れる。

 

 超乗召喚ユニットRankの高い順に重ねるというもの。

 Tower of Rankersで、一番初めに登場した召喚方法だ。

 

 「《ハイゼン》のスキル発動!

  ソウルエリアに存在する【バグエラーユニット1体を蘇生する。

  俺は《バグエラー・クラッシュ》を相手のフィールドに蘇生。」((( )))

 

 自分ではなく相手のフィールドにユニットを蘇生する限無

 狙いは勿論、分かっている。

 

 「俺は《バグエラー・マトリックス・ハイゼン》でプレイヤーにアタック!」((( )))

 

 バトルフェイズに入った限無は、直接攻撃を宣言。そのまま通れば勝ちだが……。

 

 「スキルカードイカットフィルタ》を発動!

  Rank X以上のユニット1体のステータスを半減させる!」

 

 妨害が入る。しかし――

 

 「《ハイゼン》の二つ目のスキルを発動。

  このターン、相手の攻撃・効果の対象にはならない。」((( )))

 

 《ハイゼン》の姿が消え、スキルカードは不発に終わる。

 

 「……! 《DINE》でガード!」

 

 「スキルカードOoBアウト・オブ・バウンズ)》。

  【バグエラーユニットの攻撃はガードされない。」((( )))

 

 プレイヤーを守ろうとした《DINE》だが、《ハイゼン》の放った攻撃はその体をすり抜ける。

 

 「《バグエラー・クラッシュ》のスキルにより、コントローラーが受けるダメージは+1000!」((( )))

 

 【初見音 遊音 LP3000 ー 2400 ー 1000=0

 

 ゲームセット。限無の勝ちだ。

 

 創太新械はステージから降りた限無の元へ向かう。

 

 「ナイスファイト。」

 

 「この程度じゃ肩慣らしだな。0-1で俺の勝ちだ。」((( )))

 

 限無は得意げに勝ち誇る。

 

 「二人共、ここにはよく来るのか?」

 

 「いや、常連は限無だけだ。俺は八月の大会に向けての調整をな。」((( )))

 

 大会……。新械ドローンにしか興味ないと思ったが、意外とカードゲームも本気なのか。

 

 「で、何か話があるんだって?」((( )))

 

 「あぁ。昼飯でも食べながら……と思うんだが、まだ少し早いか。」

 

 創太は眼鏡に表示されている時刻を見て、考え込む。

 

 「なら、お前も一回やってけよ。折角ここに来たんだ。ランカーたるもの、勝負から逃げるのはナシだぜ。」((( )))

 

 「そうだな……。ちょうどいい機会かもしれない。」

 

 「では、相手は俺がやろう。

  お前とは一度戦ってみたかった。」((( )))

 

 対戦相手に新械が名乗りを上げ、二人はそれぞれステージに上がった。

 

 そして、準備ができたところで、同時に試合開始の合図を叫ぶ。

 

 「「ランカーズファイト!」」

 

 《キュイーン!!

 

 ステージが光り、眼鏡の表示内容が切り替わる。

 

 最初の手札は5枚。

 ライフは5000。

 フィールドは3×3マス。

 

 ダイス勝負に勝った新械が先攻を取り、試合が始まる。

 

 「俺のターン。」((( )))

 

 まずはドローフェイズ新械はデッキからカードを1枚引く。

 

 「《スキッド・ドローン》を召喚!」((( )))

 

 そして、メインフェイズユニットを召喚。新械の場に脚の大きなドローンが出現する。

 RankPOWER500

 

 「ドローンデッキか。」

 

 「ふっ、実体の無いドローンなら街中でも飛ばせるからな。

  《スキッド・ドローン》のスキル発動!

  デッキから【ドローンシリーズユニット――《ジャイロ・ドローン》を手札に加える!

  更に《スキッド・ドローン》のもう一つの能力を使用! このターン、【ドローンシリーズユニットしか召喚できなくなる代わりに、召喚石を一つ増やす。

  《ジャイロ・ドローン》を召喚!」((( )))

 

 新械の場に二体目のドローンが出現。

 今度のRank

 ユニットの召喚の際に必要となる召喚石の数は、Rank1~3下級ユニット1つRank4~6中級ユニット2つRank7~9上級ユニット3つだ。

 ちなみに召喚石の数は最初は2つで、毎ターン2つ回復。最大3つまでストックしておける。

 

 「《ジャイロ・ドローン》のスキル発動!

  手札の【ドローンユニット1体の召喚に必要な召喚石の数を1つ減らすことができる。

  この効果で、手札の《ブレード・ドローン》を召喚!」

 

 RankPOWER1500

 これで三体の【ドローンユニットが縦一列に並んだ。

 

 (あれが来るな。)

 

 創太は心の中で身構える。

 

 「サモンタイプ・フォーメーション! 縦一列に並んだ、カード名の異なる【ドローンユニット三体をドライブ!」((( )))

 

 ドローン達が風に包まれ、天高く飛んでいく!

 

 「陣形召喚! 《ドラグドローン・ダクテッド》!!」((( )))

 

 新械の場に龍のような姿をした巨大なドローンが現れ、辺りに暴風が吹き荒れる。

 

 陣形召喚ユニットの位置を重視する特殊な召喚方法だ。

 

 しかし――

 

 「POWER 1000……?」

 

 三体を素材とするユニットにしては、異様にステータスが低い。

 

 「いや、《ドラグドローン・ダクテッド》のPOWERは、素材としたユニットPOWERの合計分アップする。」((( )))

 

 【ドラグドローン・ダクテッド POWER 1000 + 1500 + 800 + 500 = 3800

 

 「3800。一気に上がったな。」

 

 「手加減などさせん。全力でかかってこい。ターンエンドだ。」((( )))

 

 「……俺のターン。」

 

 ターンが回ってきた創太は、デッキからカードをドローし、6枚の手札をじっと見つめた。

 

 (さて、お望み通りにしてやるか。)

 

 創太は慣れた手つきで宙に浮いたカードに触れた。

 

 「スキルカード使用。《創造の秩序オーダーズ・オブ・クリエイション)》。

  自分フィールドにユニットが存在しない時、デッキから【創世機シリーズユニット1体をコスト無しで召喚できる。」

 

 「創世機?」(( ))

 

 「天地創造の神話。世界の始まりは知っての通り、今も謎に包まれている。

  人類の歴史は、その真実に迫る、長い長い旅。

  俺はデッキから《アダム・ジェネシス・シンギュラリティ》を召喚し、更に手札から《イヴ・ジェネシス・シンギュラリティ》を召喚!」

 

 創太のフィールドに球体型のユニットが二体出現する。

 

 「《イヴ》のスキル発動

  場に《アダム》がいる時、デッキからフィールドカード真理の園》を手札に加え、これを発動する。」

 

 カードのプレイと同時に景色が変化し、白い造花の咲き乱れる花園となる。

 

 フィールドカード。使い捨てのスキルカードと違い、発動後も場に残り、影響を及ぼし続ける特殊なカード。

 

 「このフィールドの効果で、俺は自分の場の【創世機ユニットの数だけ相手のデッキトップからカードをめくり、確認することができる。」

 

 「二枚か……。」((( )))

 

 「そして《アダム》のスキル。相手のデッキトップのカード名を言い当て、当てたカードをディメンションエリアに送る。

  この効果を使えるのは三回まで。

  俺は《ファントム・ドローン》《フェイルセーフ》、そして……《アダム・ジェネシス・シンギュラリティ》を宣言する。」

 

 「何……?」(( ))

 

 確認していた二枚は当たり、ディメンションエリアへと消える。

 しかし、三枚目は《スキッド・ドローン》。外れたのでそのままだ。

 

 「あえて当てなかったか。何かあるな。」(( ))

 

 「…………。」

 

 創太は沈黙し、自分の場に視線を戻す。

 そこでは二体のユニットが白いオーラに包まれていた。

 

 「? 何だ、それは……。」((( )))

 

 新械は驚き、ユニットの状態を確認する。

 

 そこに表示されていたのは――《共鳴》。

 

 「まだまだこの世には多くの謎が存在している。

  お前達にとっては、これがその一つ。」

 

 「おいおい。相変わらずタダモンじゃねーなぁ。」((( )))

 

 限無は察しがついたようで、楽しそうな表情を浮かべる。

 

 「行くぞ。サモンタイプ・レゾナンス

  共鳴状態となった二体の【創世機ユニットクロスレヴォリューション!」

 

 二体のユニットが螺旋を描きながら天へと昇り、その後、辺りは真っ白な光に包まれる!

 

 「…………!!」

 

 「共鳴召喚! 現れろ、この世界を真実へと導く方船はこぶね

  《真克竜トゥヴェリタス・フライア》!」

 

 創太の場に白く巨大な機械の方船が出現。

 それを見た観客は騒然となる。

 

 共鳴召喚。それは誰も見たことがない召喚方法だった。

 

 「《真理の園》の効果発動!

  Rank X以上の【創世機ユニットが召喚されたターン、相手は手札を全て公開しなければならない。」

 

 「今度は手札か。」((( )))

 

 新械の持つ4枚の手札が公開され、目の前に表示される。

 

 《マイクロ・ドローン》《コンパスキャリブレーション》《トリム調整》《バリアブル・ドローン》。

 

 「《バリアブル・ドローン》……。」

 

 プレイヤーへのダメージが発生した時、そのダメージを0にし、バトルフェイズを終了させる。

 

 「フッ……。」((( )))

 

 何が来ても万全といった表情の新械

 

 だが……。

 

 「残念だったな。《真克竜トゥヴェリタス・フライア》が攻撃する時、相手の手札のカード1枚の名前を当てることで、そのカードをディメンションエリアに送る!」

 

 「何っ!?」((( )))

 

 「《バリアブル・ドローン》には消えてもらおう。」

 

 「くっ、計算が狂った。」((( ))) 

 

 「スキルが成功したことで、《トゥヴェリタス・フライア》のPOWERはターン終了時まで1000上昇する。」

 

 【真克竜トゥヴェリタス・フライア POWER 3000 + 1000 = 4000

 

 「ならば《ドラグドローン・ダクテッド》のスキル発動!

  素材に分離して、攻撃を無効にする!」

 

 「それも無駄だ。《真克竜トゥヴェリタス・フライア》は、相手ユニットのスキルを受けず、バトルする時、攻撃対象のユニットはスキルを発動できない。」

 

 「…………!」

 

 これで抵抗手段は全て封じた。

 

 「スキルカード全的堕落トータル・ディプラヴィティ)》を発動。

  このターン、俺はユニット1体でしか攻撃できないが、次のターン終了時まで、相手ユニット全てのPOWERを対象とした【創世機ユニットの元々のPOWER分ダウンさせる。

  当然対象は《真克竜トゥヴェリタス・フライア》。《ドラグドローン・ダクテッド》のPOWER3000下がり、800になる。」

 

 【ドラグドローン・ダクテッド POWER 3800 - 3000 = 800

 

 「なっ……! うおおおっ!?」((( )))

 

 【新械 飛行 LP 5000 - 3200 = 1800

 

 竜の姿に変形した《トゥヴェリタス・フライア》から放たれた光線に貫かれ、新械のエース《ドラグドローン・ダクテッド》は大破。

 爆風に巻かれ、新械は大ダメージを受ける。

 

 「そして、これで終わりだ。スキルカード無限後退インフィニット・リグレス)》。

  場の【創世機ユニット1体をソウル化し、デッキからカード名の異なる【創世機ユニット1体をコスト無しで召喚する。

  《カイン・ジェネシス・シンギュラリティ》を召喚し、プレイヤーを攻撃!」

 

 【新械 飛行 LP 1800 - 1800 = 0

 

 

 

 

 

 

 

 ≫ 歌舞伎町・さくら通り

 

 

 「ウウウウウ……。」

 

 一方その頃、歌舞伎町一丁目の中央付近にあるさくら通りでは、何やら変わった雰囲気を持った二人組の韓国人が、他の人間を押し退けるように歩いていた。

 

 前を歩く白髪の少女は、先程から虎のような唸り声で通行人を威嚇していて、かなり感じが悪い。

 

 「何、りきんでんだよ、白虎びゃっこ。トイレならあっちだぜ。」

 

 後ろを歩いていた赤と黒――軍鶏シャモのような髪色の少年が、近くのコンビニを指差しながら、へらへらと笑う。

 

 「チッ……朱雀すざく。お前、やる気あんのか? まさかビビってんじゃねーだろーな。」

 

 「俺は余裕さ。これがあるからな。」

 

 朱雀と呼ばれた少年は、そう言って手の平に黄金に輝く炎を出してみせた。

 

 「んな小便色の炎でやれんのかよ。」

 

 「尻に付けてやろうか?」

 

 「もう付いてるだろうが。

  若頭がまた爆発する前に犯人捕まえねーと、どんなヤキ入れられるか分からねーぞ。」

 

 白虎朱雀を睨み付ける。

 

 「でも襲撃は三回とも夜だろ。今から気張ってどうすんだ。

  十二時だし、もう飯にしようぜ。」

 

 「ん……、もう時間か。

  食ったらちゃんと見回りしろよ。」

 

 「はいはい。」

 

 《ガシャァーン!!

 

 「あん?」

 

 コンビニに入ろうとしたところで、ガラスの割れるような大きな音が響き、二人は足を止めた。

 

 すぐに音のした方へ目を向けると、道の真ん中にダンサーのような派手な衣装を着た女が立っていた。

 

 「おい、何だあれ。」

 

 「レストランのアンドロイドだろ。何だ、壊れたのか? ハハハ。」

 

 朱雀は笑うが、呑気なことを言っている場合ではなく、女のアンドロイドは二人の姿を捉えると、真っ直ぐに走り出した。

 

 「「……!」」

 

 

 

 

 

 

 ≫ 歌舞伎町・セントラルロード

 

 

 

 十二時になる少し前。

 

 ゲームセンターから出た創太達は、歌舞伎町セントラルロードにあるレストランに入り、そこで昼食をとっていた。

 

 「全く、想像以上だったぞ。

  能ある鷹は爪を隠すというが……まさか1ターンキルされるとは……。」((( )))

 

 「別に隠してた訳じゃない。機会がなかっただけだ。」

 

 創太焼き魚定食を食べながら、適当な言い訳をする。

 

 「なぁ、聞かれたくなさそうだから俺は聞かないけど、早速ネットに書き込まれてるぜ。

  ログが残ってるからかなり話題になるんじゃないか?」((( )))

 

 限無拡張現実眼鏡SNSコメントを見ながらにやにやしている。

 

 「良かったのか? お前のことだから思惑あってのことだと思うが。」(( ))

 

 「まぁそういうことだ。」

 

 創太は興味なさげにそう言うと、携帯のメッセージアプリ――《MAGEメイジ》を起動し、暗間の名をタップした。

 数回のコール音の後、スピーカーから彼女の声が聞こえ出す。

 

 《はい……。》

 

 「暗間。今、能力借りれるか? 限無新械例のアプリのことを話したい。」

 

 《…………了解。》

 

 二つ返事を返す暗間

 彼女の協力を得た創太は、携帯を通話状態のままテーブルの上に置いた。

 

 「本題か。」((( )))

 

 「ああ。」

 

 二人はこれから話される内容の重大さを察し、食事の手を止め、会話に集中する。

 

 「お前達は、ここ最近、東京の犯罪の発生件数が増加しているのは知ってるか?

  それも落書きや置き引きなんかの軽犯罪が異常に。」

 

 「いや、初耳だ。」((( )))

 

 「俺も。」((( )))

 

 「だろうな。軽犯罪じゃ他のニュースに埋もれるか、そもそも取り上げられないことが多い。

  だが、犯罪は犯罪だ。見過ごせば治安悪化の原因になる。

  実際、一部で段々とエスカレートしてきてる。」

 

 「原因は?」((( )))

 

 「実は今年に入ってから、東京に住む人間の携帯に、不審なアプリが勝手にインストールされるという事案が発生していてな。

  調査の結果、そのアプリが犯罪を助長していることが分かった。」

 

 「洗脳か何かか?」(  )

 

 「いや、あくまでも本人の意思だ。」

 

 創太はズボンのポケットから予備の携帯を取り出し、そのホーム画面を限無達に見せた。

 そこには真っ赤な背景に星のマークが描かれた、見慣れないアイコンのアプリが表示されている。

 

 「ペルソナか?」(

 

 「いや、これは集めた情報を基に、俺が作った偽物で……。まぁ、害は無いから見てみてくれ。」

 

 限無は携帯を掴むと、アプリを起動し、内容を確かめていく。

  

 「成程……。ダーウィンズゲームだったか。」(( ))

 

 「あれとはまたベクトルが違う。

  これは犯罪を犯すことで、罪の重さ犯行の難易度トリックの完成度などが評価され、総合得点に応じたインセンティブがユーザーに付与される仕組みになっている。

  課金すれば、犯行に必要な武器や知識が手に入ったり、障害を取り除いたりできるらしい。」

 

 「何だと……。」((( )))

 

 「要は、犯罪を犯せば金が貰える。金を払えば、犯罪がやりやすくなる。

  そういったアプリが今、出回っている。」

 

 「さしずめ、犯罪支援アプリってとこか。」((( )))

 

 「ん、おい、待て。まさかドローン違法フライトもか。」((( )))

 

 新械は身を乗り出す。

 

 「ちょっとしたルール違反を繰り返すだけでも、小遣い稼ぎ程度にはなるようだ。」

 

 「警察は動いてるのか?」(( ))

 

 「残念ながら、このアプリは送られた本人にしか見えず、起動もできないらしい。

  だから俺もアプリの存在を完全に保証できる訳じゃない。

  警察に知らせても証拠不十分。陰謀論扱いでまともに捜査されないだろう。」

 

 「ん……、限無、俺にも見せてくれ。」

 

 新械限無から携帯を受け取り、アプリを操作し始めた。

 

 「規約によると、口外禁止のようだが、これを破ったらどうなる?」(( ))

 

 「アプリに関する記憶と、それまで得たもの全てを没収される。」

  

 「じゃあ、お前はどうやって情報を集めたんだ?」(( ))

 

 「今みたいに暗間の能力で保険をかけた上で、真逆のことを喋らせたんだろ。」(( ))

 

 「ああ、一週間ほど前に、アプリの所有者と接触することに成功してな。

  限無の言う通り、暗間と俺の能力を使って、引き出せるだけの情報を引き出した。」

 

 創太は通話状態のままの携帯を見つめる。

 

 暗間 量子が持つ異能量子暗号》。それは会話の内容が第三者に伝わるのを防ぐという能力。

 どんな形でも彼女を混ぜさえすれば、敵に気付かれずに情報を交換できるという訳だ。

 

 「で、犯人の検討はついてるのか?」(

 

 「いや、それはまだだ。

  本当ならそこまで調べ終わってから話したかったんだが、そうも言っていられなくなった。」

 

 「というと?」(( ))

 

 「その偽物には実装してないが、最近、アプリアップデートされ、幾つかコンテンツが追加されたらしくてな。

  それが……、マッチングバトルレイドボスだ。」(( ))

 

 「前者は犯罪の腕の競い合い、後者は特定ターゲットのリンチだろ。」(( ))

 

 流石、限無は察しがいい。

 

 「ランキングも実装され、露骨に競争心を煽るようになってきている。」

 

 「危険だな。より罪の重い犯罪に手を出す人間が出てきてもおかしくない。」((( )))

  

 「…………。一つ聞くが、殺しても罪悪感がそれほどなく、死体が勝手に消えてくれる。そんな相手と言えば、誰だか分かるか?」

 

 「ゲームのNPC。」((( )))

 

 「ヤクザだろ。」((( )))

 

 新械が正解だ。

 

 「……ここ数日で、歌舞伎町ヤクザが立て続けに襲われ、下っ端が三人殺されてる。

  犯人は不明。……だが、殺された三人の内の一人――最初にやられたのはレイドボスだった。」

 

 「へぇ……、ヤクザ達はアプリのことは知らない?」(( ))

 

 「三人も殺されて、流石にただ事じゃないと思っているだろうが、そこまでだろう。

  ヤクザ達はまだ、自分達が食い物にされていることに気付いていない。」

 

 「しかし、虎門組だぞ。

  大人しくやられるとは思えん。」(( ))

 

 「どうかな。

  ヤクザ三人を殺した犯人は、一人の目撃者も出さずに逃げおおせている。

  課金で楽になるとは言ったが、強力な異能を持っている可能性はあるだろう。

  それに、犯人が一人とも限らない。」

 

 「まだ分かってることは少ないか……。」(( ))

 

 「で、お前はこれからどうするつもりなんだ?

  ヤクザを助けるのか?」((( )))

 

 「結果的にはそうなるな。今日の夜から、行動を始めようと思ってる。

  お前らはなるべく歌舞伎町に近付かないように――」

 

 「おいおい。一人でやる気か?」(( ))

  

 「言っただろ。まだ情報が不足してる。

  今の段階じゃお前達の安全を保証できない。」

 

 「ゲームはハードでなきゃ面白くないだろ。

  なぁ、新械。」((( )))

 

 「クソゲーは勘弁だがな。

  俺達にとっては地元のことだ。他人に任せきりにはしておけん。」((( )))

 

 「相手はヤクザも恐れぬ殺人鬼だぞ?」

 

 「いつも言ってるだろ。ちょっと見方を変えれば、この現実もゲームみたいなもんだ。

  0-1で俺が勝つ。」((( )))

 

 完封する気か……。

 

 「そうか……。分かった。

  覚悟があるなら、止めはしない。くれぐれも気を付けてくれ。」

 

 創太は通話状態の携帯を手に取り、暗間と話す。

 

 「ありがとな、暗間。話は終わった。」

 

 《はい。》

 

 創太は通話を終了させ、携帯を鞄にしまう。

 その後、三人は何事もなかったかのように食事を再開した。

  

 「あ、創太はこの後、どうするんだ? もう帰るのか?」(( 真 ))

 

 「いや、渋谷の方に行くつもりだ。

  また別の――ん?」

 

 創太は窓の外を見る。

 何やら騒がしい。

 

 「また誰かやられたのかな?」(

 

 「冗談言ってる場合か。」(( ))

 

 「そうだな。行くぞ。」

 

 創太は席を立ち上がる。

 

 「飯はどうする? まだ少し残ってるが……。」((( 真 )))

 

 「イベントが優先だろ。」((( 真 )))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ≫ 歌舞伎町・さくら通り

 

 

 

 《ガコォォン!!

 

 「うおっとぉ、危ねぇ!」

 

 飛んできた看板をかわし、体勢を立て直す朱雀

 彼の視線の先には若い女性の姿をしたアンドロイド

 レストランから出てきたそれは、どうやら暴走しているらしく、数体の仲間と共にいきなり襲い掛かってきた。

 白虎も近くでその内の一体と対峙している。

 

 「なぁ、朱雀……! こいつら犯人だと思うか?」

 

 「どっちでもいいだろ。機械相手なら手加減しなくて済むぜ……!」

 

 《コォ……!

 

 朱雀がその手に黄金の炎を纏わせ、同時にアンドロイドが走り出す!

 

 「いい体してんな。

  好みじゃねーけどな!」

 

 朱雀の手から黄金の炎が放たれ、走るアンドロイドの体を包み込む!

 

 異能不死の軍鶏シャモニクス》。金色こんじきの炎は対象物のみを燃やし、他を巻き込むことはない。

 

 《ボゥッ!

 

 しかし、焼けたのはアンドロイドの衣服のみ!

 

 「ぬおっ!」

 

 丸見えなボディが迫り、一瞬目を奪われそうになったが、朱雀は突き出された拳を間一髪かわす。

 

 「何やってんだ! ったく……!」

 

 その様子を見兼ねた白虎は、異能を使用し、両手に金属の籠手こてを装着。

 

 朱雀を襲った女アンドロイドの顔面にブローを放ち、吹っ飛ばす。

 

 「ふぅー……。」

 

 異能金剛白虎こんごうびゃっこ》。金属の鎧を身に纏う能力。

 

 《ソイヤー!!》《ガンッ!!

 

 歌舞伎役者風アンドロイド白虎に飛びかかるが、攻撃は直前に装着された硬い鎧に阻まれる。

 

 「おらっ!!」

 

 《ガァァン!!

 

 鎧は体と一体化する為、重さは全く感じない。

 白虎のボディブローを受けたアンドロイドは、くの字に曲がって飛んでいく!

 

 《ガコーン!!》「うおっ。」((( )))

 

 限無は突然目の前に飛んできた歌舞伎役者に驚き、その場に立ち止まった。

 

 「これは……アンドロイドレストランアンドロイドか。」((( )))

 

 後ろには創太新械もいる。

 彼らはアンドロイドと戦う鎧の少女と、傍に転がった何故か全裸のアンドロイド、黄金の炎を出す少年を見て、少し戸惑った。

 

 「AVの撮影か?」(

 

 「そんな話、聞いてないけど。」 (( ))

 

 「…………。」

 

 「ん? 創太、どうした?」(( ))

 

 「お前ら、ちょっとこの場を任せていいか?」

 

 「いいけど。それ、好きにやっていいってことか?」((( )))

 

 「ああ、構わない。」

 

  創太はそう言うと、近くのビルへと走っていく。

 

 「創太。早くも何か気付いたみたいだが。」

 

 「ま、楽しみにしとこうぜ。新械、サポート頼む。」

 

 限無は足元に転がっていた棒を拾うと、アンドロイドへ向かっていく。

 

 《テエェイ!!

 

 「ゼロ……!」

 

 侍姿のアンドロイド限無に斬りかかろうとしたが、彼の目が光ると同時に動きを停止。

 そのまま横を通り過ぎた限無は、白虎を囲んでいたアンドロイド達も同じ目に遭わせる。

 

 「何だ……?」

 

 白虎は突然、アンドロイド達が大人しくなり、困惑する。

 

 「ふっ……。」

 

 限無 零一異能ゼロワン》。あらゆる機械の活動を停止、または再開させる能力。

 相手がどんなに多くても、どんなに高性能でも関係ない。ただのガラクタ同然にする。

 

 「お前何やったんだ?」

 

 「機械にはちょっと強くてな。」

 

 《ッ!!

 

 朱雀限無に近付いた時、建物の外壁に張り付いていた忍者風アンドロイドが巨大な手裏剣を投げる!

 

 「おい!」

  

 「大丈夫だよ。」

 

 白虎が叫ぶが、限無の言う通り、手裏剣の軌道が突然変わり――

 

 《ガァァン!!

 

 ブーメランのようにアンドロイドの元に返り、その体に突き刺さった。

 

 「これで全部か?」

 

 新械が建物の陰から姿を現す。

 

 彼の異能は《ナビゲート》。あらゆる物体の軌道を操る能力。

 視界に入ってさえいれば、銃弾すら跳ね返すことが可能だ。

 

 「おい、あんま派手に壊すなよ。

  弁償させられるかもしれないだろうが。」

 

 限無は少し慌てる。

 

 「ああ、安心しろ。あたしらがそんなことさせねーから。

  それより、あそこの店長は? おい、朱雀、行くぞ!」

 

 「おお。」

 

 二人はアンドロイドレストランの方へ駆けていく。

 

 残った限無新械は顔を見合わせた。

 

 「虎門組の人間か? 若いな。」

 

 「俺達より年下っぽいけど。」

 

 《ブウゥゥン……! ブウゥゥン……!

 

 そこで限無の携帯が震え出す。

 画面を見ると、夙吹 創太と表示されていた。

 

 「創太?」

 

 《お前達。俺の入ったビルまで来てくれるか。》

 

 「ん、ああ、分かった。

  新械、行くぞ。」

 

 限無新械は、近くのテナントビルの中へと入った。

 

 

 

 ≫ さくら通り・テナントビル屋上

 

 

 

 呼ばれて駆け付けると、そこには創太と、縄で縛られて身動きが取れなくなった男がいた。

 

 「外国人か?」((( )))

 

 「そこからずっと状況を撮影しててな。

  他にも何人かいたが、すぐに特定できた。犯人かと聞かれて、嘘を吐いたのはこいつだけだ。」

 

 「動機は?」((( )))

 

 「アンドロイドレストランのショーに満足できなかったらしい。

  異能アンドロイド達に、町を壊せ、人を襲えっていう簡単な指令を出して、暴れる様子を仲間達と楽しんでいた。

  もう警察は呼んだから、来たら彼らに任せよう。」

  

 「……………。」

 

 「怯えてるが、何かしたのか?」(( ))

 

 外国人の男は、妙に縮こまっていた。

 

 「下に虎門組の二人がいただろ。

  警察に捕まった方が安全だと教えてやった。」

 

 「成程。」((( )))

 

 「ははっ。確かに、東京湾に沈められかねないな。」(

 

 創太達はその後、駆け付けた警察に男の身柄を引き渡した。

 本人が素直に自供した為、事情聴取は簡単なもので済み、三人はそのまま歌舞伎町を後にする。

 

 「ゲームの続きは夜だな。次は俺が先に捕まえてやる。」((( )))

 

 「勝負じゃないだろう。」(( ))

 

 「いや、限無はその方がやる気が出るだろうし、それも悪くない。」

 

 創太は薄く笑みを浮かべる。

 

 「じゃあ、とりあえずここで解散だな。期待してるぜ。」((( )))

  

 「ああ。」

 

 創太は駅前で二人と別れ、その後、ホームから快速列車に乗り込む。

 

 次の目的地は、流行と文化の情報発信地である渋谷

 

 

 七色に塗り分けられた、混沌の街――。