☆ 霜之口 亥鷺 VS 水漏 ルゥ ☆
―【TURN 1】 水漏 ルゥ 【LP 5000】―
「先攻は水漏 ルゥ様です。」
「私のターン!
《スプラビングアワー・ホース》を召喚!」
《バッシャアァァァ!!》[Rank 3・GUARD 900]―召喚石 1/3
「おおっ!」
現れたのは、馬のように暴れる長いホースと、その上に跨る水色の小さな妖精。
属性は《水》、種族は《マジシャン》と表示された。
「みなも先輩のデッキ、解釈一致の水属性です!」
「魔法少女要素も入ってる感じかな。」
「《スプラビングアワー・ホース》のスキル発動!
ライフを300払って、デッキから《スプラビングアワー・ヘッド》を召喚!」
【水漏 ルゥ LP 5000 - 300 = 4700】[Rank 3・POWER 900]
今度はシャワーヘッドと、シャンプーハットを被った妖精の組み合わせ。庭かと思いきや、お風呂な感じだ。
「トイレじゃないんだ。」
「外国はお風呂とトイレが一緒だから、それかも。」
Rankが3なところは、3点ユニットバスを表しているのかなど、色々想像するが、ルゥがそこまで考えて作ったのかは不明である。
「最後に、《ミスティックアワー・メイジ》を召喚!」
[Rank 3・GUARD 1800]―召喚石 0/3
「このユニットのスキルで、私が次に受けるダメージは0になります。」
バスローブに身を包んだ魔術師が、杖の先から大きな泡を出し、ルゥはそれに包まれる。
「ターンエンドです。」
《へー、初心者にしては分かってる立ち回りだな。》
「みなもちゃん、実際にやったことはなくても、ルール解説や対戦動画は結構見てたらしいよ。」
《早速、オリジナルカード作ってくる辺り、相当溜まってたみたいだな……》
―【TURN 2】 霜之口 亥鷺 【LP 5000】―
「むぅー、本当に私と貝合わせする気なんだ。」
ターンが切り替わり、霜之口はふてくされながらもカードを引く。
「先に言っておくけど、私、年下相手でも容赦しないからね。いいんだね、OKってことで。」
「……?」
「フィールドカード、《パースペクティブ・アクメリウム》……発動!」
「……!?」
場に出現したカードから妖艶な光が放たれる。
すると、足元にピンク色の水が流れ、どんどん水位が上昇する。
「わぁ! 何……!?」
「あぶぶぶ……!」
観戦席まで、フィールド全体が一瞬にして水に浸かってしまった。
それだけでなく、周囲を光で出来た卑猥な形の生物が泳ぎ始める。
「これは……」
「《パースペクティブ・アクメリウム》。
1ターンに1度、手札の淫属性ユニット1体を公開し、それと同じ名前とステータスを持つトークン1体を生成する。」
「イン属性って……?」
「聞いたことない属性だね……。」
「フフ。Tower of RankersのAIは理解があるから。
まぁ、しもちゃんの情熱が人並み外れていたっていうのが大きいけど。」
「私は、手札の《とらわれペンギン》を見せて、《とらわれペンギントークン》を生成!」
[Rank 3・GUARD 2000]
「そして、本物を召喚!」
《ガコン!》
出現したペンギンが、空から降ってきた鉄の檻に囚われた。
[Rank 3・POWER 450]
「とらわれペンギン……?」
「あっ、昔あった漫画です……!」
「お、よく知ってるね。」
「漫研ですから!」
「いや、でも、成人向けじゃあ……」
興奮を隠せない萌。
ちなみに、とらわれペンギンというタイトルは、アメリカ合衆国の伝説の異端ロック・ミュージシャン「フランク・ザッパ」の曲のタイトルから取ったものだ。作者がファンらしい。
「《とらわれペンギン》のスキル発動!
《とらわれペンギントークン》1体を生成!」
[Rank 3・GUARD 2000]
檻を掴み涙目のペンギンが更に増えた。
「まだまだ行くよ!
手札から2体目の《とらわれペンギン》召喚! スキルでトークン生成!」
[Rank 3・POWER 450] [Rank 3・POWER 450]
《ガコン!》《ガコン!》
「うわぁ、何だかペンギンの収容所みたい……」
トークンを含め、これで《とらわれペンギン》は5体。
「でも、POWERはたったの450だから……あれ?」
[とらわれペンギン(A)・POWER 450 + 400 × 5 = 2450]
[とらわれペンギン(B)・POWER 450 + 400 × 5 = 2450]
「《とらわれペンギン》のPOWERは、場の《とらわれペンギン》ユニットの数×400アップ!」
《ぐにゃ!》
ステータスの上昇した2体のペンギンが檻を曲げ、臨戦態勢をとる。
《トークンはスキルを持たないとはいえ、中々の布陣だな。》
「でも、みなもちゃんも負けてないよ。」
「そう、《スプラビングアワー・ヘッド》は、バトルする相手ユニットのスキルを無効化する。
そして、相手は《スプラビングアワー・ヘッド》以外の【スプラビングアワー】を攻撃できない。」
「む……」
つまり、《スプラビングアワー・ヘッド》に攻撃すれば、折角上がったPOWERもリセットされ、返り討ちにされてしまう。
今のままでは倒せるのは《ミスティックアワー・メイジ》だけだ。
「だったらこうするまでだね!
アイテムカード《聖具―オットセイバー》を発動!
ターン終了時まで、自分ユニット1体のPOWERを、自分の淫属性ユニットの数×500アップ!」
アタックゾーンのトークンがオットセイのような形をした剣を装備する!
[とらわれペンギントークン(C)・POWER 450 + 500 × 5 = 2950]
《アイテムカードの効果で上げたか。
ユニットのスキルじゃないなら、《スプラビングアワー・ヘッド》のスキルで元には戻せない。》
「バトル! 《とらわれペンギントークン》で、《スプラビングアワー・ヘッド》を攻撃!」
剣で檻をバラバラにしたペンギンが、シャワーヘッドを斬り裂く!
しかし――
「《ミスティックアワー・メイジ》のスキルで、このバトルで発生するダメージは0になります。
そして、《スプラビングアワー・ヘッド》がバトルで破壊されソウル化したことで、デッキから《スプラビングアワー・ホース》を手札に。」
「リソース回復もバッチリだね。みなもちゃん。」
《次のターンの流れがある程度見えたな。》
「2体の《とらわれペンギン》で、《スプラビングアワー・ホース》と《ミスティックアワー・メイジ》を攻撃!」
檻から脱走したペンギンが《ホース》と《メイジ》を破壊する。
しかし、この2体はディフェンスゾーン。攻撃を受けてもダメージは発生しない。それどころか――
【水漏 ルゥ LP 4700 + 1000 = 5700】
「《ミスティックアワー・メイジ》が相手によってソウル化したことで、デッキからカードを1枚ドロー。ライフを1000回復します。」
「…………。ターンエンド!」
「うわぁ、しもちゃんの顔。凄く嫌そー。」
《コントロール寄りのデッキはウザくて嫌われがちなんだよな……》
「フフ。でも、しもちゃんにも秘策がある筈だよ。」
「秘策……」
何かこういった状況への対策カードがデッキに入っているのだろうか。
流々達は静かに見守る。
―【TURN 3】 水漏 ルゥ 【LP 5700】―
「私のターン。」
3ターン目。
開始時のドローで、ルゥの手札は7枚。場にユニットは残っていないものの、状況は有利。
ルゥは潤沢な手札を眺め、最善のルートを考える。
(大丈夫……。落ち着いてやれば……)
1ターン目の動きを見る限り、向こうのデッキが得意としているのは、トークンを絡めた大量展開。
ひたすら同族を揃え、パワーアップして一斉に攻めてくる。集団で気の大きくなるタイプ――
……自分の嫌いなタイプだ。
「《スプラビングアワー・ホース》を召喚し、再びスキルで、デッキから《ヘッド》を召喚。」
[Rank 3・GUARD 900]―召喚石 1/3
【水漏 ルゥ LP 5700 – 300 = 5400】 [Rank 3・POWER 900]
まず、前のターンと同じ組み合わせを揃える。
「そし――」
《ビリッ!》「ひっ!」
――――――――――。
「みなもちゃん?」
突然、止まったルゥの様子に注目が集まる。
「す……《スプラビング・サーバー》発動!」
ルゥの場にウォーターサーバーのような装置が出現。
「ライフを800払って、ソウルエリアからRank6以下の水属性ユニット1体を蘇生……
私は《ミスティックアワー・メイジ》を――」
《ビリリリッ!!》【水漏 ルゥ LP 5400 – 800 = 4600】
「んぅぅっ!!」
ビクンと震え、体を押さえるルゥ。
どうしたのか。明らかに何か起きている。
「はぁ……はぁ……」
内股から徐々に姿勢を戻していく。
(な……何これ……)
ルゥは困惑していた。
何だか体が熱く……。ライフを払った瞬間、アソコがビリッとなって、ゾクゾクと快感が……。
「ふふっ……ふふふ……」
「……!」
顔を上げれば、笑っている霜之口。
「何かしたんですか……?」
「え~? 何のことぉ?」
明らかにすっとぼけている。
こんな……まるでオ〇ニーした時みたいな……
《大丈夫か、あいつ。トイレ行きたくなったんじゃないのか?》
「それなら一旦、中断してトイレ休憩とか……」
「あわっ、大丈夫! 違うの! 何でもないの!」
行きたいのは山々だが、真剣勝負を中断するほどじゃない。
「ふふふ……可哀想だから教えてあげよっかな♪」
「え?」
霜之口は片手をバッと前に突き出す。
「今ここでは、既に私の異能力《AV(アブノーマル・ヴィジョン)》が発動している!
この空間内では、全部私の思い通り!」
「へ……?」
「私の異能力によって、プレイヤーのライフ減少は全て快感に変換されるの!」
「そんなの卑怯だよぉ!」
とんでもない盤外戦術。
何とか耐えたが、この後も効果の発動や攻撃でライフが削られる度に衝撃が来るのか。
「う~ん、流石、しもちゃん♪ 異能の使い方が巧みだね。」
《貝合わせってこういうことかよ……!》
「うぅ負けるなー! みなもちゃん!!」
「応援しないでぇ!」
とりあえず、復活させた《メイジ》のスキルで、もう一度、泡のバリアを張る。
「また膜が張られました。」
「処女膜を再生させるとは、流石、魔法少女だね。」
「………。」
ヤバい。こんな戦い、早く終わらせないと頭がおかしくなる。ゆっくり耐えてなんていられない。
ルゥは、エクストラサモンを起動する。
「サモンタイプ・アリア!
《スプラビングアワー・ヘッド》、《ミスティックアワー・メイジ》をオーバーラップ!」
シリーズの異なる2体の水属性ユニットが五線譜に包まれ、重なり合う。
「うねる聖水。流れど穏やかに。解放の時を待つ!
《蛇水仙ミスティック・スプラッシュ》!」
EXデッキより現れたのは、二股蛇口のような形の杖を持った妖精。
[Rank X3・POWER 1300]
【スプラビングアワー】と【ミスティックアワー】、両方のシリーズに属するユニットのようだ。
「スキル発動!
ライフを1000払って、デッキからカードを1枚ドロー!」
【水漏 ルゥ LP 4600 – 1000 = 3600】
同時に1000ポイント分の快感がルゥの身体を襲う!
《ビリリリッ!!》「……っっ!!」
来ることが分かっていれば、耐えることは……
「はぁっ……はぁっ……」
「んー、何で我慢するかな。気持ち良いのに。」
気持ち良い……けど、皆の前でイクなんてことはできない。
「もう1度……ライフ1000払ってスキル発動!
今度は別の効果で、召喚石を1つ増やす!」
【水漏 ルゥ LP 3600 – 1000 = 2600】―召喚石 1/3→2/3
《何か凄い勢いでライフを削り始めたが、大丈夫か?》
「ダイヤちゃん! あの子、ドMみたい!」
「違いますっ!!」
ルゥは顔を赤くしながら否定すると、増えた召喚石で次のユニットを呼び出す。
「《紙隠しの
[Rank 5・POWER 2300]―召喚石 0/3
白い折り紙で出来た花を手に持った白髪の女性が現れる。
清楚な雰囲気で、こんな真っピンクなフィールドは似合わない。
「この瞬間、《ミスティック・スプラッシュ》のスキル。
自分の場に水属性ユニットが出る度、相手に200ダメージを与え、自分は400回復。」
二つに分かれた杖から、両プレイヤーに向けて水が放たれる。
【霜之口 亥鷺 LP 5000 – 200 = 4800】【水漏 ルゥ LP 2600 + 400 = 3000】
《バシャッ!》「んっ♡ ちょっと来たぁ……♡」
「……《紙隠しの花水姫》のスキル発動!
手札1枚をデッキに戻して、Rank3以下の水属性ユニット1体を蘇生する。
《スプラビングアワー・ヘッド》を蘇生して、《ミスティック・スプラッシュ》のダメージ!」
【霜之口 亥鷺 LP 4800 – 200 = 4600】【水漏 ルゥ LP 3000 + 400 = 3400】
「ん~♡ こんなちょびっとじゃ足りない! もっとかけて、もっと!」
「はぁ……はぁ……ふぅ……」
こっちはライフが回復する度に、少しずつ快感の波が引いていった。
ルゥは息を整え、バトルフェイズを開始する。
「《スプラビングアワー・ホース》は、《ホース》以外の水属性ユニットの攻撃宣言時、相手に200ダメージを与えます。」
「いいよぉ! ノーガード!」
両手を広げ、受け入れ態勢万全の霜之口。
「……っ。《ヘッド》で《とらわれペンギン》を攻撃!」
「あんっ♡」【霜之口 亥鷺 LP 4600 – 200 - 450 = 3950】
「《ミスティック・スプラッシュ》でトークンを攻撃!」
「あぁんっ♡」【霜之口 亥鷺 LP 3950 – 200 - 850 = 2900】
「最後に《紙隠しの花水姫》で、《とらわれペンギン》を攻撃!」
【霜之口 亥鷺 LP 2900 – 200 - 650 = 2050】
「はうっ♡」
連続攻撃で快感の波に飲まれ、ビクビクと震えながら、倒れる霜之口。
「え、エンドフェイズ……。
アイテムカード《アワアワ風呂》を発動して、《スプラビングアワー・ホース》のGUARDを1000アップ。」
[スプラビングアワー・ホース・GUARD 900 + 1000 = 1900]
「更に《紙隠しの花水姫》のスキルで、《紙隠しの花トークン》1体を生成。
《ミスティック・スプラッシュ》のスキルでダメージ。」
[Rank 1・GUARD 100]
【霜之口 亥鷺 LP 2050 – 200 = 1850】【水漏 ルゥ LP 3400 + 400 = 3800】
「ターンエンド。」
《地獄みてぇな光景だな……》
幸せそうな表情で床に倒れ込む霜之口。
一気にライフを削られ、盤面も不利な状況だが、そんなことまるで気にせず、気持ち良さに浸っている。
「こんなのセ〇クスじゃん……」
「つぐみちゃん、言わないで……」
「しもちゃ~ん、負けたら下ネタ禁止だよ~!」
「はっ……!」
股間に伸びかけた手を引っ込め、立ち上がる。
「ふん……! まだまだ私をイかせるほどじゃあないね!」
―【TURN 4】 霜之口 亥鷺 【LP 1850】―
「私のターン!
スキルカード《オーシャンウェーブ》!」
《ザアァァァ~!!》
巨大な波が発生し、2体の《とらわれペンギントークン》が飲み込まれる!
「自分フィールドの淫属性ユニット2体を破壊して、2枚のカードをドロー!」
「《オーシャンウェーブ》……」
淫属性ユニットをサポートするカード。それにしては、普通の名前のような……
「ああ。女性のオーガズムのことだよ。
色々種類があって、他にアバランチとか、ボルケーノ……」
《何だその技名みたいなのは……》
嫌な知識を得てしまった。
「《パースペクティブ・アクメリウム》の効果発動!
このゲーム中に破壊された淫属性ユニットの数が3体以上なら、召喚石を1つ増やす!」―召喚石 2/3→召喚石 3/3
《! このフィールド……破壊された数を参照するのか。
長期戦は不利だな。》
「気を付けて、みなもちゃん!
召喚石が増えたから、上級ユニットが来るよ!」
「《パースペクティブ・アクメリウム》の効果!
手札の《チンアナゴン》を見せて、《チンアナゴントークン》1体を生成!
そして、《チンアナゴン》を召喚!」
《ドゴォォォン!!》[Rank 6・POWER 900]―召喚石 1/3
「何……!?」
地面から飛び出す長い体と、カラフルな水玉模様。
それはなんと、巨大なチンアナゴだ!
「何じゃない、ナニだよ。
《チンアナゴン》のスキル発動!
召喚の際に消費した召喚石の数だけ、トークン生成!」
《ドゴォン!》《ドゴォォン!》
更に2体が生え、《アクメリウム》のトークンと合わせ、4体の《チンアナゴン》が場に並ぶ。
「あわわ……」
「《ぷりてぃくらげ》召喚!
スキルで淫属性ユニットの数×500回復!」
[Rank 2・POWER 450]―召喚石 0/3
【霜之口 亥鷺 LP 1850 + 500 × 5 = 4350】
ピンク色のクラゲモンスター娘が背後から霜之口を抱き締め、ライフの傷を癒していく。
「続けて、アイテムカード《聖具―オットセイバー》の効果!
《チンアナゴン》をパワーアップ!」
[チンアナゴン・POWER 900 + 500 × 5 = 3400]
「さぁ、そろそろ来るね。しもちゃんのデッキのエースユニットが。」
「ひょっとしたらこのターンで決まるかも……!」
《何だって……?》
「サモンタイプ・アリア!
私は《ぷりてぃくらげ》と、2体の《チンアナゴントークン》をオーバーラップ!」
3体の淫属性ユニットが五線譜に包まれ、重なる!
「叫べ!
愛なき世界を変えるべく、今こそ天にも昇る
《
《クパァァァァ……!》
「……!?」
開いた天井から光が放たれ、何かがゆっくりと降りてくる。
[Rank X6・POWER 0]
「あれが、しもちゃんのエースだよ。」
姿は豪華なピンクのドレスに身を包んだ歌姫か。遠目には天使にも見える。
「うわ~、綺麗!」
《いや、なんていうか……。》
ドレスの形が卑猥だ。明らかに女性器を思わせるデザインになっている。
「攻撃力は0か……。」
「いや、絶対何かありますよ!」
「その通り! 《聖天の泡媚姫》のスキル発動!
自分のターンに1度、淫属性ユニット1体と、相手のRank9以下のユニット1体をイかせて破壊する!」
「えっ……!?」
《♪~~~~》
《聖天の泡媚姫》が歌声を響かせる。
すると、《チンアナゴントークン》と《紙隠しの花水姫》がそれを受けて昇天。清楚な乙女もこれには耐えられない!
「この破壊によって、破壊された淫属性ユニットの数は6体。
《パースペクティブ・アクメリウム》の効果!
6体以上の淫属性ユニットが破壊されていたなら、デッキから淫属性ユニット1体を手札に加える!」
「……!」
「私が加えるのはRank9、メインデッキの最上級ユニット《グソクダイオウ》。
召喚には召喚石が3つ必要だけど、《聖天の泡媚姫》のスキルで、1ターンに1度、淫属性ユニットをコスト無しで召喚できる!」
《ガコォォォン!!》[Rank 9・POWER 3300]
地面が割れ、赤い色をした巨大なダイオウグソクムシが姿を現す。
「このユニットのスキルで、Rank9以下の相手ユニットのスキルはターン終了時まで無効。
更に! 《聖天の泡媚姫》のPOWERは、このゲーム中に破壊された淫属性ユニットの数×500アップ。」
[聖天の泡媚姫・POWER 0 + 500 × 6 = 3000]
《ヤバいぞ。攻撃力3000以上のユニットが3体だ。》
霜之口のフィールドには、《オットセイバー》によって強化された《チンアナゴン》に、Rank9の《グソクダイオウ》、エースの《聖天の泡媚姫》。
対するルゥのフィールドには、《ミスティック・スプラッシュ》、スキルの無効になった《ヘッド》《ホース》、《紙隠しの花トークン》。
このターンで終わりかねないマズい状況だ。
「バトル行くよ~♪
《聖天の泡媚姫》で《ミスティック・スプラッシュ》を攻撃!」
「《ミスティックアワー・メイジ》のバリアで、このバトルでのダメージは0です!」
「なら、《チンアナゴン》で《スプラビングアワー・ヘッド》を攻撃!」
《3400と900、ダメージは2500だ……!》
【水漏 ルゥ LP 3800 - 2500 = 1300】
「あぅぅっ!!」
2500の衝撃。強烈な快感に立っていられなくなるルゥ。
場からは高ランクのユニットが消え去り、次に来るのは《グソクダイオウ》のダイレクトアタック。
「残ってる《スプラビングアワー・ホース》と《紙隠しの花トークン》のGUARDの合計は2000。《グソクダイオウ》のPOWERは3300。みなもちゃんのライフは1300。」
《ガードしても1300のダメージでちょうど0だな。あれだけ快感に酔ってたのによく頭回るもんだ……》
「ふっ。しもちゃんは気持ち良くなればなるほど強くなるのさ。」
「行けー! しもちゃん!」
「これであの機械が調べられます……。」
《くそ……、何か手はないのか?》
「これでトドメ!
《グソクダイオウ》でおもらしちゃんにダイレクトアタック!」
宣言により、まるでペニスのような色をした巨大なダイオウグソクムシが動き出す。
あわや、レ〇プ! 巨大な竿の前に屈してしまうのか……!?
「みなもちゃん!」
「スキルカード《タートル・トーク》!!」
《シュパァァ!!》
ルゥのフィールドに一匹のウミガメが出現!
それと同時に、《グソクダイオウ》の動きが止まる!
「あれ? 何? どういうこと?」
「《タートル・トーク》。自分の水属性ユニットが相手によって場を離れたターンのバトルフェイズ中、自分のライフが相手より少なく、アタックゾーンにユニットが存在しない場合、《タートルトークン》1体を生成して、バトルフェイズを終了します。」
[Rank 1・GUARD 2000]
亀が何かを喋ると、《グソクダイオウ》は小さく頷き、大人しく霜之口のフィールドに帰っていった。
「あーっ! 何言うこと聞いてるの!! 戻ってきちゃらめぇ!」
「まだ何かありますか?」
「えぅ……ターンエンド!」
《よし、凌いだ!》
《ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!》
……?
霜之口がターンエンドを宣言した瞬間、ルゥのフィールドに異変が起こる。
なんと地面から水色の塔が生えてきた。
《ガコォォォン……!!》
塔の天辺からは、まるで噴水のように水が噴き出し、ルゥの場に降り注ぐ。
「あれって、もしかして……」
「4ターン目以降、自分のライフが相手より2000以上少ない場合、ターン終了時に、タワー《スプラッシュ・ファウンテン》が出現します。」
タワーカード――
スタンディングでの勝負において、特定の条件を満たした時、一度だけ出現するものだ。
Tower of Rankersの象徴である塔は、プレイヤーに様々な恩恵をもたらしてくれる。
《これで反撃もしやすくなるが、油断はできないな。向こうのライフは回復して4350。場には強力なユニットが並んでる。次のターンで決め切るのは難しいかもしれない。》
「うん……、でも、私は信じてる。
あの時……、トイレ怪人との戦いで見せた爆発力。
みなもちゃんのデッキにきっと眠っている筈だって……」
―【TURN 5】 水漏 ルゥ 【LP 1300】―
(多分、これが私のラストターン……)
ルゥは、ドローのアイコンに手を重ねる。
エースユニットを呼び出す準備は整っているけれど、勝負に勝つにはあと一歩足りない。
中途半端な攻めじゃ、《パースペクティブ・アクメリウム》が更に強力な効果を得てしまうし、全てはこのドローに懸かっている。
(お願い……。来て……)
アニメや漫画の主人公のように、自分のデッキを信じてみるルゥ。
目を閉じ、手を勢いよくスライドさせる!
「私の……ターン!!」
―――――――。
沈黙。引いたカードは果たして……。
「……!」
カードを目にしたルゥは一瞬、観客席の方を見る。
すると、流々はそれに対し、サムズアップ。
(ルルちゃん……、ありがとう……)
【水漏 ルゥ LP 1300 - 300 = 1000】[Rank 3・POWER 900]
《スプラビングアワー・ホース》のスキルで、再び《ヘッド》を召喚。
そして、ルゥはエクストラサモンを起動する!
「サモンタイプ・アリア!
《タートルトークン》、《スプラビングアワー・ホース》、《スプラビングアワー・ヘッド》、《紙隠しの花トークン》をオーバーラップ!」
GUARD 2000以上のユニットを含む、4体の水属性ユニットが五線譜に包まれ、重なり合う!
「花積む聖女の守り亀、その背に乗って、天国へ!
詠唱召喚!」
《タートルトークン》の体が白く光輝き、その背に着物姿の女性が現れる。
「《
[Rank X5・POWER 0]
「POWER0……? まさか同じ……!?」
「いいえ、同じじゃありません。
《聖水亀姫リュプシオン》は、自分のライフが相手より少ない時、その差の数値分、POWERをアップ。」
【霜之口 亥鷺 LP 4350】【水漏 ルゥ LP 1000】
「……! なぁ~んだ、それだけ?」
《今、効果を使えば、攻撃力3350……。
厄介な《聖天の泡媚姫》は倒せるが、それだけじゃこのターンで決め切るのはとても無理だぞ。》
「……そう、私のデッキじゃ、このターンではとても倒せない。
でも、今の私には――」
ルゥはユニットを召喚する。
「召喚! 《☆★プリチアトップフレーズ―アクアビジョン☆★》!!」
ルゥのフィールドに海中を映す巨大なモニターが出現!
[Rank 5・GUARD 2400]―召喚石 0/3
「えっ!?」
《《プリチアトップフレーズ》……!?
って、流々、お前のカードか……!?》
「へへっ☆ みなもちゃんとフレンド登録した時に、1枚あげたんだよね。」
「《アクアビジョン》のスキル発動!
ライフを半分にして、自分ユニット1体を選択。
このターン、そのユニットしか攻撃できなくなる代わりに、そのユニットは相手のアタックゾーンのユニット全てに攻撃できる!」
「ええっ……!?」
【水漏 ルゥ LP 1000 ÷ 2 = 500】
[聖水亀姫リュプシオン・POWER 0 + 4350 - 500 = 3850]
「凄い。ライフ差も広げて連続攻撃……!」
「え~っと……3850が全部に攻撃したら……」
「今、《チンアナゴン》のPOWERは900に戻ってるから、ダメージは850、550、2950……合計4350だね。しもちゃんのライフぴったりだ。」
「おおっ! ぴった☆リーサル!」
《すげー。そういやあいつ、計算得意だったな。》
「《聖水亀姫リュプシオン》で、《聖天の泡媚姫》を攻撃!」
《バッシャアアアア!!》
塔、《スプラッシュ・ファウンテン》から放たれた水の波に乗り、《リュプシオン》が攻撃を開始する!
「させない!
スキルカード《潮吹き》。淫属性ユニット1体を破壊して、1枚ドロー!」
《チンアナゴン》が水を吹き、倒れる。
「更に相手ユニット1体のPOWERを、破壊したユニットのPOWER分ダウン!」
《チンアナゴン》から放たれた謎の水が《リュプシオン》を襲う!
しかし、それを受けても勢いは衰えない!
「《スプラッシュ・ファウンテン》の効果で、水属性ユニットの攻撃は無効にならず、相手の効果でPOWERは下がりません。」
「むぅ~!!」
「でも、これでPOWER 900で立ってた《チンアナゴン》を逃がすことはできた。
攻撃対象が減ったことで、受けるダメージを減らせる。」
しかも、破壊された淫属性ユニットが1体増えたことで、《聖天の泡媚姫》のPOWERがアップする。
「ん~、まぁ、いっか! このターンは耐えられるし♪」
「逃がしません!
スキルカード《水のアワー》発動!
自分のライフが相手より少なく、自分の場に水属性ユニットが存在する場合、相手ユニット1体のPOWERまたはGUARDを半分に。
ライフが2000以上少ない場合は、更にスキルを無効化します!」
「無効……!?」
[聖天の泡媚姫・POWER 3500 → 0]
《泡媚姫》のPOWERはスキルで上がっていた。そのスキルが無効になれば、POWERは0!
「うわぁ! 来るぅ!!」
《リュプシオン》の手と白い亀の口から光輝く水が放たれ、《泡媚姫》と《グソクダイオウ》は飲み込まれる。
「イクうぅぅぅぅ!!」
【霜之口 亥鷺 LP 4350 - 3850 - 550 = 0】
― WINNER 水漏 ルゥ ―
≫ すみだ水族館・グッズコーナー
「あ~、どれにしよっかな~。これもいいし、これも。でも、あまり買うと金額がが……」
大量に並べられた商品を前に、頭を悩ませる流々。
ここにはすみだ水族館でしか手に入らないオリジナルグッズが沢山あるのだ。
「食べ物は家族へのお土産にいいね。みなもちゃんは――」
「これ。」
「あ。」
やはり、亀のぬいぐるみを抱えてやってきたルゥに、流々とアンナは思わず笑ってしまう。
勝負に勝って、気分も上々。暗かった時期が最早、懐かしい。
一方、負けた方はというと――
「むぅー……」
「しもちゃん、そんなにずっと頬を膨らませてたらフグみたいだよ。」
「あのようなふざけたデッキを使うから負けるんです。任せたのは、失敗でした。」
「レプリ、駄目だよ。本当のこと言ったら人は傷つくの。」
会話の内容ほど、雰囲気がそんなに険悪ではないところからは、彼女達の仲の良さが窺える。
「ほら、しもちゃん。期間限定でくじ引けるみたいだから。」
「んー……。」
しかし、どういう集まりなんだろうか。
霜之口って人は高校生っぽいけど、他の三人は雰囲気や身に付けてる物からして、学生には見えない。
「二人とも、買う物決まった?」
「はい! このペンギン。」
「私はクラゲのクッションです。萌えます!」
つぐみと萌も買う物が決まったようだ。
そろそろすみだ水族館ともお別れである。
「おめでとうございます! 特等でーす!」
「え。」
「うわぁ! 凄い! でっかいチンアナゴ!!
ダイヤちゃん、撮って撮って!!」
また小さな子どもみたいに騒ぎ始める霜之口。特大チンアナゴ抱き枕をくじで当ててご満悦。
「はぁ……。」
あれだけ元気な姿を見せられると、何だか勝った気がしない。
「あ、そうだ、みなもちゃん。帰ったら対戦しない?」
「ううん、疲れたからしばらくはやらないよ……。」
ルゥは亀のぬいぐるみを抱きながら、二度と彼女達と顔を合わせぬよう祈るのだった。
「じー……。」
…………。
いずれまた道が交わることを、彼女は知らない。
(★1 End)