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『異端のネシオ』3Hz「異常性クラスメート(後編)」(3)

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  【AM 9:00

 

 

 約一時間半前――新宿・西方面……

 

 西……010101譁ケ髱「

 

 West Area――

 

 

 

―《WELCOME TO TOKYO METAVERSE》―

 

 

 

 虚空が輝き、情報が肥大化する。

 

 誰も居ないさびれたビルの屋上――

 

 連なる01のエフェクトが拡散し、二つの発光体が邪悪に彩られた闇の淵に降り立った。

 

 「…………」

 

 一人は緑……ライムグリーンカラーの炎と、鋭い目つきの仮面をまとったヴィランチックな風体――

 もう一人は、黒く長い髪が片目を覆い隠した、下半身から触手を生やすスキュラのような美女――

 

 人か悪魔か。二人はしばし見つめ合い、やがて男の方が口を開いた。

  

 

 《新時代のディズニーか?

 

 《いいえ、ただの性癖・・です。あなたも――

 

 ボイスチャットを交わすのは、限無きりなし 零一れいいち暗間くらま 量子りょうこ

 

 《んなギャップ萌え狙われてもな。

  ……いや、浅瀬の魚達はドン引くか。

 

 《ふっ……

 

 見上げた空は深緑に染まっている。

 二人は屋上より、闇に侵食された非現実的な西新宿を見渡した。

 

 仮想空間――

 日本の首都――東京に重なるもう一つの現実。

 

 TOKYOトウキョウ METAVERSEメタバース――

 

 そのサービス開始以降、都内のユーザーによって際限なく拡張され続け、今や人口以上の世界が存在している。

 

 ここもまたその一つ。何者かが作り出したアンダーグラウンド

 

 《気を付けろよ。始まったら他のこと考えてる余裕なんてねーんだから。

 

 《そっちこそ大丈夫ですか?

 

 《7時間も寝たからな。

 

 二人がここを訪れたのは、無論、娯楽目的ではない。

 昨晩、夙吹はやぶき 創太そうたからの連絡を受けてから、彼らは犯罪支援アプリの撲滅・・・・・・・・・・を最優先に動いていた。

 しかし、犯人の手がかりが少ない。如何にしてスピード解決を図るのか。

 限無の考えは非常に単純だった。

 

 攻略情報。知ってる奴から聞くのが一番早い――

 

 「カイって知ってるか?

 

 「セクハラですか?

 

 「χキーギリシア文字だよ。情報屋の名前だ。

 

 いわく、裏のことなら何でも知っている。情報を引き出すことさえできれば、どんな未解決事件だって解決できる。

 

 「裏社会の異能力者……。頼らざるを得ない状況ですか?

 

 「他を出し抜くにはな。これはゲーム。俺にとってはゲームなんだよ。

 

 挑戦にはリスクが伴う。

 夙吹から限無のサポートを任されていた為、暗間も参加を決めた。

 情報屋Xカイ)が何者なのかも確かめる必要がある。

 

 《さて、やるか――

 

 限無アバターが虚空に手をかざし、現れたUIを操作。何らかのコードを入力。

 すると――世界に変化が起き始める。

 

 《ヴィィィン!!

 

 X(カイ)情報料を取らない。その代わり――

 

 

―《BRUTUS》―

 

 

 《GAME START!

 

 深緑の世界が徐々に真っ赤に染まり消えていく。

 遠くの空に目的地を示すマークが表示され、二人はガイドに従い、ビルから飛んだ。

 

 《ブルートゥス……

 

 ゲームということなら、鬼畜・外道を表すブルートBrute)か。無線通信規格ブルートゥースBluetooth)か。

 

 頭の中で言葉を変換しながら、暗間限無との会話を思い出す。

 

 「良い情報が貰えるかどうかは成績次第。X(カイ)を満足させられなきゃ、ゴミかウイルスのプレゼント。ズルしようもんならリアルに後悔するって話だ。

 

 「…………。

 

 正直、信用できない。悪質な詐欺にハマっているかもしれない。

 しかし、騙されてますよと言えるほどの情報は無い。

 こうしてしっかりゲームが用意されているとなると――

 

 

 

黒 条 野 螟 蛾

 

 

 

 「……!

 

 目的地に向けて飛んでいると、前方に障壁が現れ、そこに赤い文字が表示された。

 

 10……9……8……

 

 上には緑色の数字――カウントダウン。制限時間。つまり、これが問題――

 

 ブルートゥス……タイピングタイピングゲーム……!

 

 【くろすじのめいが】《ピッ!シュオンッ!

 

 考えている内にSUCCESSと表示され、障壁が消え去る。限無が解いたようだ。

 

 《説明するまでもないと思うが、ミスなんて許されないからな。

  ぐだぐだプレイなんて見せるなよ。

 

 把握――

 

 暗間はもしもの時に備え、ある人物・・・・へとメッセージを送っておく。

 

 《今の漢字、よく分かりましたね。》 

 

 《美少女ゲーにあれモチーフの変態がいたんだよ。ほら次来るぞ……!

 

 

 再び障壁が出現し、問題が提示される。

 

 

F⇔M U⇔P
風 花 ◆ 月

 

 

 「……っ!

 

 今度は条件付きの問題。限無も虚を突かれたか、一瞬手が止まる。

 キーボードはローマ字入力で固定されており、キー配置が入れ替わることで、慣れが崩される。必然的にタイピングスピードは低下。しかし、幸い答えは簡単。字が一部伏せられているとはいえ、序盤の難易度。

 

 …………《SUCCESS》

 

 障壁が消え去る。

 

 《今のは私が早かったようですね。

 

 《味方なんだから、俺の勝ちでもある。

 

 《では、早い者勝ちにしましょう。

 

 難問を期待し、熱くなり始めたのか。先ほどまでのつれない態度は何処へやら、現れる問題を次々とねじ伏せていく。

 

 

&◆XT◆ ”HD◆*Y

 

 

 【&&XT””HDJ*Y《SUCCESS》

 

 

 

742X36s=◆.42◆

 

 

 【742X36s=7.42h《SUCCESS》

 

 

 

アルファベット禁止
B◆HFBlZ◆

 

 

 【13131-11=13120《SUCCESS》

 

 《フッ……

 

 限無は密かに笑みを浮かべていた。

 

 10秒――短いようで、意外と長い、そんな時間。

 

 問題を解くこと自体は難しくないが、タイムリミットに加え、1ミスも許されない緊張感の中で正確に入力できるか。

 

 その点、暗間は安心だ。どんな状況でも冷静で慌てない。

 

 彼女がいなければ、そもそもこんなクソゲー・・・・には参加しなかった。今回は十分勝算がある。

 限無は改めて彼女と引き合わせてくれた創太に感謝していた。

 

 

G◆G◆◆◆G◆AH◆I◆
             
◆A◆◆◆G◆A◆◆◆◆◆
             
◆◆◆HI◆◆◆◆◆A◆G

 

 

 点滅する問題。ゴールが近付くと難易度が上がってくる。

 

 

eCQpkyQsAEE3wGigt6zSaBnmzBpSfM

 

 

 長文となると、最早、息をする余裕もない。制限時間ギリギリの戦いが続く。

 

 《SUCCESS》――

 

 《よし……都庁まであと少しだな……。

 

 向かっているのは、禍々しく変貌した新宿副都心のランドマーク。3棟の内、48階建ての第一本庁舎が目的地として設定されている。

 

 障壁を突破した二人は、地上に降り立ち、最後の問題に挑む。

 

 

GMt6zs5TLM――
8CjJAdQ2PJui――
NKd4CK9Xk6Z――
GXrWcFzMbNC――
W2ARCcUe9――
wQxWUZD

 

 

 《……っ!

 

 覚悟はしていたが、情報の圧に面食らう。

 

 (無理ゲーか……!?

 

 一般人タイピング速度は、せいぜい1秒間に3~5字。自分達はそれよりも早い方だが、この難易度は全国大会レベルだ。クソ過ぎる。

 

 《今、アナタヲXXXXする

 

 《くっ……!!

 

 GAME OVER。ミスをした限無の視界が固まり、海外製のエロ広告が流れ出す。

 なんてストレスフル。

 ここまで真面目に取り組んできた人間の神経を逆撫でする無限ループ。これは暗間も――

 

 《SUCCESS》――

 

 《……!?

 

 絶望は一瞬――

 立ちはだかっていた最後の障壁が音と光を放ちながらあっさり消え去り、背後に迫っていた崩壊が止まる。

 フリーズも解除され、限無は呆然とした。

 いや、実力は高く見積もっていたが、これほどのスピードと正確性を発揮するとは……

 

 《暗間……?

 

 《…………。

 

 フッ……、さんを付けてみたらどうだ?

 

 《機知神きしがみか……!

 

 暗間アバターから男の――機知神きしがみ 速人はやとの声。まさかとは思ったが。

 

 《こんなこともあろうかと。

 

 タイピング全国大会優勝経験者。

 足が速ければ、手も速い。願っても無い助っ人だ。恐らく、メッセージを見て、異能《アクセルワールドですっ飛んできたのだろう。

 

 《……で、終わりですか? 情報は?

 

 《いや、まだだ。まだ終わってない。第1ラウンドクリアってとこだな。

 

 限無は消えずに残った都庁に目を向ける。他の場所は既にデリートされ、道は一つ。

 二人はアバターを操作し、都庁の中へと侵入した。

 

 《う~ん、魔王城だな。

 

 いつかのSNSのトレンドか。

 内部は別物に書き換えられ、いかにもボスが出てきそうな物々しい雰囲気が漂っている。

 二人は罠がないか警戒しながら、慎重に歩みを進めた。

 

 

 《》――

 

 

 「……!」

 

 

 辺りを見回していると、奥の空間がX字に裂け、何者かが新たにログインしてくる。

 

 《AIGA(ハイガ)――

 

 アルファベット限無は表示された名前を特に捻らず読み上げる。

 アンドロイドのような見た目をしているが、ちゃんと中身は人間か。

 

 《XXXX――

 

 威嚇めいた機械音。顔面に刻まれたが威圧的な光を放つ。

 第2ラウンド――

 彼の構えから勝負の内容を察した二人は、すぐさま決闘の合図を叫んだ。

 

 

 《《ランカーズファイト!!》》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【AM10:50】【新宿駅

 

 

 

 

 犯人に繋がるような情報とは――

 果たして、苦労に見合うものが得られるのか……。

 

 

 (望み薄……

 

 

 ビルから出た幽鵡かすむは、新宿駅で無関係を装いながら、ある人物・・・・の様子を窺っていた。

 

 

 「はぁぁぁぁ……

 

 「大丈夫か? あいつ。

 

 

 ペンギン像近くで座り項垂れている、青髪天然パーマのイケメン。レードこと酒冷さかざめ 零土れいど

 彼は事件の夜に現場に来ていたカラーギャングヴァイオレット・エリクス」のメンバー二人が入れ込むホストで、今回、彼女達を誘き出す為、協力を依頼した訳だが……

 

 

 「来るかな……。

 

 「お気に入りに誘われたら来るだろ。

 

 

 ミツヤがまた分かったようなことを言う。

 

 

 (現れたとして、すんなり聞き込みに応じてくれるかどうか……)

 

 

 レードほどではないが、憂鬱な気分。

 

 

 「……!」

 

 

 その時、死瑪しばの目つきが変わった。

 

 

 「こん〇〇は~!

 

 「うわぁっ!?

 

 

 何処にと思った瞬間――、生えた。

 レードの体に穴が開き、そこから蓮来はすこ らんが生えてきた。

 

 

 「何だ、あれ……。

 

 「蓮来の能力だな。何にでも穴を開けられるらしい。

 

 

 見ていると、地面に開いた穴の中からは相方の盲瞳もうどう メクが飛び出した。

 

 

 「ねー、酒クズぅ♪ 穴が開くほど聞かせてほしいんだけどぉ、私らに会いたくなった理由って何?

 

 「ちょ~、気になるぅ~♪

 

 「ぃぃぃ……!

 

 

 早く助けてほしそうにしている。

 まぁ、そんなに心配しなくても、こっちの二人はもう動いているんだが……

 

 

 「その体、穴あけパンチにでも喰われたのか?

 

 「ハァ?

 

 

 死瑪ミツヤの二人は堂々と正面から行く。

 

 

 「誰? 君達。今、お楽しみ中って分かんない?

 

 「混ぜてほしいんだよ。ハスコラ女子にメカクレ女子なんてそうそういないしな。

 

 「ランちゃん、ナンパだ。

 

 「ふ~ん……。

 

 

 蓮来はゆっくりとした動作でレードの体から下半身を抜き、地面に降りる。

 そして、二人をまじまじと見つめた。

 

 

 「ん~、ダ~メ。ダメ人間感0。私の好みじゃないわ。

 

 「奇遇だな。俺もだ。

 

 (自分も。

 

 

 全身に穴が開いているかのようなタトゥー塗れ。服も穴だらけだし、ヤバ過ぎる。

 

 

 「あのさ~。穴の無い奴に興味なんて――

 

 「ランちゃん、酒クズ逃げた。

 

 「あ。

 

 

 役目を終えた酒クズことレードは、異能氷の大地】で摩擦を0にし、地面を滑っていった。

 

 

 「あ~……成程。

 

 

 これは流石に罠だと察する。蓮来は曲げた首を元に戻すと、腰に手を当て、穴だらけの顔に指を這わせた。

 

 

 「どうしよっか? メク。

 

 「ん~、開けちゃう?

 

 「やめておいた方が良いな。

 

 「

 

 「俺達の服に穴開けて、悲鳴を上げるつもりならな。

 

 「え?

 

 

 死瑪が何か強気なことを言っているが、横のミツヤがついていけてない。事前に話し合ってなかったのか。

 

 

 「アナタ達、赤い奴ら・・・・の仲間には見えないけど、何処のボーイスカウト

 

 「悪いが、お前のホクロアートにはこれっぽっちも興味が無い。

  聞きたいのは、23日、月曜の夜、歌舞伎町で何をしてたかだ。

 

 「あ~ら、そう。探偵の真似事?

 

 (マズい……。

 

 

 この調子で死瑪に喋らせると穏便に情報を聞き出せる確率がどんどん下がっていく。とはいえ、出ていく勇気はない。ミツヤも若干、死瑪の後ろに隠れている。

 

 

 「予定に開いた穴を何で埋めるかは私の勝手だと思うんだけど。

 

 「じゃあ、無理矢理ねじ込むしかないな。

  

 

 死瑪拡張現実眼鏡をかけると、勝負に乗ったようで、蓮来も同じ物を取り出し、身に着ける。穴だらけのバッグで中身が丸見えだった。

 

 

 「「ランカーズファイト!!」」

 

 

 置いてかれぬよう、幽鵡も眼鏡をかけた。先攻は蓮来の方。そして――

 

 

 「ん?

 

 

 何か表示に間違いが……

 

 

 

 ―【TURN 1蓮来 蘭 【LP 5000】―

 

 

 

 「私のターン……!

  《スネーク・アナーキスト》を召喚!

 

 

 《シュールルル!》[Rank 2・GUARD 1200]―召喚石 1/3

 

 

 威嚇音を響かせながら蓮来の場に現れたのは、穴だらけのスレンダーなヒト型爬虫類。

 属性《毒》ヴァイオレット・エリクスのシンボルでもあるユニットか。

 

 

 「スキル発動……!

  自分ユニットエリアの一か所に穴を開け、更にデッキの【種族:レプティレス】ユニット1体をソウルエリアに送る。

 

 「穴?

 

 「どうやら使用不能ということらしいな。

 

 

 蓮来 蘭ユニットエリア前方6マス――アタックゾーンの一か所に禁止マークが付く。

 

 

 「そして、今、ソウルエリアに送られた《パンクロック・レプティリア》のスキル発動……!

  自分ユニットエリアに穴が開いている時、その穴を閉じ、このユニットを蘇生できちゃう♪

 

 《♪ ♪ ♪ ♪ ♪》

 

 「!?

 

 

 開かれた穴から激しいギターの音色。

 地獄から巨大なヒト型爬虫類が舞い戻る!【Rank 6・GUARD 1600

 

 

 「スキルカード《セイリーン・インフュージョン》!

  場のレプティレスユニットを素材とした合成召喚を行う。

 

 

 対象は2体――

 

 

 「穴よ開け、目を開け。

  この閉塞する世界に風穴を開ける……!

  《蛇狂蓮じゃきょうれんキング・コブラージュ》!!

 

 《バコォォォン!!》【Rank X6・POWER 2800

 

 

 地面に穴が開き、威圧的な斑点模様の巨大キングコブラが出現! 

 

 

 「あれがあの女のエースか……。

 

 「《セイリーン・インフュージョン》の効果により、次のターン終了時まで直接攻撃できない代わりに、ステータスが1000アップ。

 

 【蛇狂蓮キング・コブラージュ POWER 2800 + 1000 = 3800

 

 「ターンエンド……の前に、キング・コブラージュは1ターンに1度、私とアナタのフィールドに穴を開ける。

 

 《キィィィィン!!

 

 

 コブラージュの目が輝く。

 それで使用不能となったのは、こちらのディフェンスゾーンと、あちらのアタックゾーン1か所。

 

 

 「ふふふふ……このふかぁ~いアナ♡ ゾクゾクしてくるでしょ?

 

 「そうかもな。あいつのことは分からんが。

 

 「

 

 

 死瑪が突然、背を向ける。

 

 

 「益田ますだ。そこか。

 

 「ヘヘヘヘ……俺のタァーン……。

 

 

 ――!?

 

 植え込みの中。ペンギン像の後ろから、変態――拘束具めいたヘルメットを被った男が姿を現した。

 

 

 (えぇっ……!?

 

 

 あれはスマートグラスなのか。どうも対戦者の表示がおかしいと思ったら……

 

 

 

 ―【TURN 2益田ますだ 愛斗まなと 【LP 5000】―

 

 

 

 「横取りしたからには勝ってもらうぞ。

 

 「アァ……、ハハハ……!

 

 

 益田はスプリットされた長い舌を出しながら笑い、死瑪と入れ替わる。

 

 狂人には狂人――同類か。一常高校二年I組の危険人物。

 

 一体どういうつもりなのかは知らないが、手を貸してくれるようだ。

 

 

 「ヘヘヘ。

 

 

 [魔臓脾蟲まぞうひぢゅうゲジリア Rank 2・GUARD 100]―召喚石 1/3

 

 [魔臓脾蟲カイコウ Rank 3・GUARD 1500]―召喚石 0/3

 

 

 まずは二体のユニットが召喚。闇属性種族インセクト

 グロテスクな見た目の益虫が地面の穴から這い出てきた。

 

 案の定、マゾヒズム――

 

 

 《ジジジッ!!》「ウゥッ!!」【益田 愛斗 LP5000 - 500 = 4500

 

 

 「えっ、何だ……?

 

 

 益田のライフが突然削れた。同時にその体がビクンと跳ねる。

 表示によると、《カイコウ》スキルを発動したようだが……

 

 

 「わざわざリアルダメージにするか……。

 

 

 死瑪ミツヤも呆れた様子。まさか、自ら電気ショックを……?

 

 

 「クッ、ククク……、ライフを500削り、《カイコウ》のスキル……!

  《カイコウトークン》1体を生成する。

 

 《ギギィィィ……!》【カイコウトーク Rank 1・GUARD 100

 

 

 《カイコウ》が自ら体の一部を千切り取り、血飛沫を上げながら、フィールドに投げ出した。

 更に、その《カイコウ》《ゲジリア》が襲い掛かる。

 

 

 「《ゲジリア》のスキル。

  Rank 3以下の仲間を破壊して、ライフを回復。

 

 《キシャアア!!》《ギィィ!!》益田 愛斗 LP 4500 + 3 × 300 = 5400

 

 

 「へぇ、アナタ……、中々大穴ね。

 

 

 あまりの光景に蓮来も興奮気味だった。期待しているのか。

 

 

 「ん……? あれは……。

 

 

 《ゲジリア》に喰われた《カイコウ》。血塗れの無惨な死骸と化したが、まだ僅かに動いている。うごめいている。

 

 

 《ギギィィ……!》[魔臓脾蟲カイコウ Rank 3・GUARD 1500]

 

 

 「何か復活したぞ。

 

 「【魔臓脾蟲】は破壊されても戻ってくる。種族は《アンデッド》となり、新たなスキルを獲得する。

  《カイコウ》のスキルでデッキから《魔臓捕食》を手札に加え発動。

  《ゲジリア》を破壊し、POWER分、ライフを回復するかダメージを受ける。

 

 

 《キィィィ……!!》【益田 愛斗 LP5400 - 900 = 4500

 

 

 《ゲジリア》POWER900。当然のようにダメージが選択されたが、さっきから何をやっているのか。

 

 

 「ハァ……ハァ……《ゲジリア》もアンデッドになり、復活する。

 

 「この流れは……

 

 

 死瑪は察しが付いたようだ。

 

 

 「サモンタイプ・アナザー……!

  アンデッドとなったインセクトを変異――、《魔臓骸蟲まぞうがいちゅうマラリア》と《キブリス》を異相召喚!

 

 

 益田の場に宇宙が形成され、二体のユニットの姿が変わっていく。

 

 

 [魔臓骸蟲マラリア Rank X1・POWER 0]

 

 [魔臓骸蟲キブリス Rank X1・POWER 1200]

 

 

 益虫から害虫へ。

 異相召喚は、特定の条件を満たしたユニットを新たな姿に生まれ変わらせる召喚方法だが……。

 

 

 「マラリア》で《コブラージュ》へ攻撃……!

 

 「……!

 

 

 POWER 03800にアタック……! これは相当なダメージを――

 

 

 《ジジジジジジジ!!!》【益田 愛斗 LP 4500 - 3800 = 700

 

 

 益田の体が激しく痙攣する。口から泡を吹き、ヘルメットの下から血が流れ――

 

 

 「おい! 勝手に逝くな!

 

 

 思わず叫んでしまう。

 

 ぶっ倒れた益田からの返事はない。

 

 だが、割とすぐに起き上がり、また不気味な笑い声を上げ始めた。なんてタフな……

 

 

 「クッ、クククッ……! そろそろお前の痛みも教えてもらうぜ……

 

 【蛇狂蓮キング・コブラージュ POWER 3800 → 0

 

 「は……!?

 

 

 蓮来は驚く。マラリア能力なのか、マラリアは破壊されず、《キング・コブラージュ》POWERにまで下がった。

 

 

 「サァ……、良ィ餌が出来た……。

  《マラリア》のスキルで、合成召喚……!

 

 

 カイコウトークマラリアが光の渦に吸い込まれていく!

 

 

 「魔臓脾骸王まぞうひがいおうレドレグス》!!

 

 

 《ゴゴゴ……ズガァァァン!!》【Rank X5・POWER 3800

 

 

 轟音と共に現れたのは、赤く巨大なムカデだった。このデカさは間違いなくエース……!

 

 

 「3800……!?

 

 「アァ……! 《レドレグス》のPOWERはこのターン、俺が喰らった最大のダメージと同じになる……!

 

 

 つまり、たった今、喰らったもの。

 痛みを力に変えた巨大ムカデが、すっかり小さくなったキングコブラに狙いを定める。

 

 

 「なら、手札の《ホールド・スネーク》のスキル発動!

  このユニットを召喚し、相手ユニット1体を封じる!

 

 「《ゲニタリア・ディセクション》発動。

  仲間1体を犠牲に召喚効果を無効にする。だが、《キブリス》は自身の効果で破壊されない。

 

 「ぁなっ……!

 

 

 対策の対策――

 デメリットも《キブリス》が耐え、打つ手が無くなった蓮来から余裕が消える。

 

 

 《ギィアアアア!!》【蓮来 蘭 LP 5000 - 3800 = 1200

 

 

 戦闘が成立し、残りライフ1200

 続き、食べ残しを狙い動いた《キブリス》――ゴキブリ蓮来に襲い掛かり、全てが終わった。

 

 

 

 

WINNER 益田 愛斗

 

 

 

 

 

 「1キルか。

 

 

 眼鏡を外し、益田に近付く、死瑪

 蓮来は地面に尻もちをつき、放心状態。

 

 

 「気の毒だな、色々と……。

 

 「いや、アーティストには良い刺激だろ。

 

 (アーティストねぇ……

 

 

 できれば、穴の中から出てこないでほしいが……

 かくして、狂人同士の勝負は、より闇が深い方の勝利で決着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【AM9:20

 

 

 

 ―【TURN 1AIG 【LP 5000】―

 

 

 

 [マリスウェア・メリッサ Rank 3・GUARD 500]

 

 [マリスウェア・ドロッパー Rank 3・GUARD 1500]

 

 【PLAY・SKILL CARD 《セキュリティホール

 

 [マリスウェア-ランサム・ドラゴン Rank 8・POWER 3000]

 

 

 スキルカードにより、召喚コストが軽減され、宙に開いたホールから、巨大な機械竜が姿を現す。

 

 

 《ヴィイイイイイン!!

 

 

 全身を赤く発光させ、警告音のような咆哮……!

 属性《悪》種族《サイバー》

 

 

 《どうやらウイルスデッキのようですね。

 

 《ああ……、見るからに害悪そうだ。

 

 

 限無デッキがシャッフルされ、カードに錠のマークが浮かぶ。

 能力は毎ターン、こちらのデッキのカード3枚を使用不能にすること、か。

 運ゲーに持ち込まれるのはかなりのストレスだ。

 

 

 

 ―【TURN 2限無 零一 【LP 5000】―

 

 

 

 《まっ、それなら負ける気しねーがな。

 

 

 害悪 VS 害悪のミラーマッチプライドもかかっている。

 

 

 《まずはスキルカード、《バギー・プログラム》発動! デッキからRank 4以下の【バグエラー】1体をコスト無しで召喚!》

 

 

 [バグエラー・コリジョン Rank 4・POWER 1500]

 

 

 《続けて、《バグエラー・ブルーム》と《ヒッグス》!

 

  

 [バグエラー・ブルーム Rank 2・POWER 500]―召喚石 1/3

 

 [バグエラー・ヒッグス Rank 1・GUARD 0]

 

 

 限無のフィールドにノイズが走り、3種類のバグが発生――

 すかさずAIGが反応する。

 

 

 【PLAY・SKILL CARD 《ゼロデイアタック

 

 

 こちらの全ユニットにダメージを与えるスキルカードGUARDの数値がである【バグエラーユニットにとっては僅かなダメージでも致命的。当然、対策札は用意してある。

 

 

 《デバッグ》発動! デッキの上から3枚めくり、好きな順番に入れ替える。

  この時、場の【種族:サイバー】ユニットの数だけめくるカードの枚数を増やせる。

 

 

 限無の場には3体のサイバーユニット。よって+36枚をめくり、入れ替える。

 

 

 《ビィィィィ!! ズドォン!!

 

 

 ゼロデイアタック効果により、ユニットは全滅するが、【バグエラー】には共通のリカバリースキルが備わっている。

 

 

 《この瞬間、破壊された《コリジョン》《ブルーム》《ヒッグス》のスキル発動!

  デッキから1枚ドローし、それが【バグエラー】ならコスト無しで召喚できる。

  俺が引くのは、《バグエラー・クラッシュ》、《バグエラー・クッキー》、《バグエラー・ステルス》!

 

 

 再び3種類のバグを供給――使用不能カードドローも避けた。

 

 

 《サモンタイプ・オーバー!

  Rank 4の《クラッシュ》を基底とし、《クッキー》と《ステルス》をオーバーライド!

  《バグエラー・マトリックス・ハイゼン》!!

 

 

 [Rank X4・POWER 2400]

 

 

 3体を素材とした超乗召喚――

 

 

 《更に《ハイゼン》のスキルで、ソウルエリアの《コリジョン》を蘇生!

 

 

 [バグエラー・コリジョン Rank 4・POWER 1500]

 

 

 《手を貸す必要はなさそうですね。

 

 《だからって、風呂行ったりすんなよ。

  俺は《コリジョン》のスキルで2体のユニットを選択。

  ターン終了時まで、それらのユニットはステータスが2体の合計の半分になる。

 

 

 [マリスウェア-ランサム・ドラゴン POWER (3000 + 500) ÷ 2 → 1750]

 

 [マリスウェア・ドロッパー GUARD (1500 + 1500) ÷ 2 → 1500]

 

 

 《コリジョン》で《メリッサ》、《ハイゼン》で《ランサム・ドラゴン》を攻撃!

 

 

 【PLAY・SKILL CARD 《マン・イン・ザ・ブラウザ》

 

 

 コリジョンの攻撃は狙い通り、《メリッサ》を破壊。

 しかし、《ハイゼン》の攻撃はスキルカードによって《ドロッパー》の方に逸らされる。

 

 

 《ちゃんとエースを守ったか。ま、俺のデッキを幾ら傷つけたところで、次ターンが回ってくるのは暗間だけどな。

 

 《…………。

 

 

 

 ―【TURN 3AIG 【LP 5000】―

 

 

 

 【SKILL《マリスウェア-ランサム・ドラゴン》

 

 【SUMMON《マリスウェア・ドロッパー》

 

 【SKILL《マリスウェア・ドロッパー》

 

 【SEATCH《ポリモーフィック

 

 【PLAY・SKILL CARD《ポリモーフィック

 

 【SKILL《マリスウェア・ドロッパー》

 

 【SUMMON《ダンプ・ダイバー》

 

 【SKILL《ダンプ・ダイバー》

 

 

 ターンが切り替わると、高速で展開が進んでいく。

 状況を簡単にまとめると、限無デッキのカードが新たに6枚使用不能にされ、ソウルエリア《バグエラー・クラッシュ》を奪われた。

 

 

 【SUMMON TYPE:OVER RIDE

 

 

 どうやら向こうも狙いは超乗召喚のようだ。

 光に包まれた《バグエラー・クラッシュ》《ダンプ・ダイバー》《マリスウェア・ドロッパー》の3体が《ランサム・ドラゴン》に重なっていく……!

 

 

 《素材4体か……。

 

 

 身構える限無。明らかに物凄いのが出てくる気配。

 

 

 【EX SUMMON《マリスウェア-ランサム・ドラゴン・ハイブリッド》

 

 

 《ヴィヴィヴィヴィ! ヴィイイイイイ!!!

 

 【Rank X8・POWER 4000

 

 

 一回り巨大化したか。全身の装甲も更に分厚く派手に光り輝く……!

 

 

 《ヴィビビビビビビ!!!

 

 《……!!

 

 

 場のコリジョンデッキに戻され、使用不能になる。

 スキルもパワーアップしている。

 

 

 【DIRECT ATTACK 《マリスウェア-ランサム・ドラゴン・ハイブリッド》

 

 

 《! 《進行不能!》

  サイバーユニットが場を離れたこのターン、全てのユニットは攻撃できない!

 

 

 【TURN END

 

 

 《ふぅ……。

 

 

 攻撃の動作が中断され、一安心。スキルカードが通ったことで、ターンが返ってくる。

 

 

 《使用不能カードは10枚ですか。

 

 《そうだ。約3分の1。お前のターンで決着つけてくれるとありがたいんだけどな。

 

 《最善は尽くします。

 

 

 暗間は口元に薄く笑みを浮かべながら、自分のカードをドローした。

 

 

 

 

 

 

 

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