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『ケロタン』第4話「冒険の心得その②」(4/6)

ケロタン:勇者の石+2

 

 ◆ 第十七の難関・極寒の雪原 ◆

 

 ……それからどれくらいの時間が経ったのか。

 ケロタンが陸に辿り着く頃には、既に夜は明け、辺りはぼんやりと明るくなっていた。

 空は灰色の雲に覆われ、太陽の姿は見えないが、この分ならもう光は必要無いだろう。

 ケロタンは腕を下ろした。

 

 「はぁ……。」

 

 連続で魔法を使用していた為、今にも倒れそうなほどへとへとだった。

 しかし、まだスダが集めてくれた木の実がある。

 それを朝食にし、ケロタンは魔力と体力を回復させた。

 

 「…………。」

 

 眠らなければ万全とはいかないが、多分、大丈夫だろう。

 残る難関は四つ……。後ちょっと無理をすればいいだけだ。

 ケロタンは前方に目を向けた。

 そこに広がるのは、一面真っ白な銀世界――雪の降り積もった平原。

 気温は夜の砂漠よりも低く、木も湖も、全て凍りついてしまっている。

 ケロタンは急いで寒さを防ぐ魔法を体にかけた。

 

 「…………。」

 

 しかし、効果は少し和らぐ程度。

 悲しいことに、自分の適性ではこれが限界らしい……。

 

 (まぁ、動けばもう少しマシになるだろ。)

 

 気を取り直し、ケロタンは安全そうな道を探そうと、辺りを見回す。

 ここから先、走っていくのはかなり危険だが……。

 

 (あれは……。)

 

 ケロタンは雪が溶け、岩肌が剥き出しになっている道を見つけた。

 恐らくフレアタンが通った場所だろう。

 

 (除雪してくれるとはありがたいな。)

 

 ケロタンはそのような、なるべく雪の少ない場所を通っていき、湖の前まで辿り着いた。

 湖面は凍ってスケートリンクのようになっている。

 広く見渡したが、特に罠らしきものは見当たらない。普通に滑れば向こう岸まで行けそうだ。

 ケロタンはスケート選手のように姿勢を低くし、地面を蹴って一気に湖上を滑り抜けた。

 

 「っと……。」

 

 難なく突破。反対側の岸に上がり、ケロタンは雪を踏み締める。

 魔法を使えばより安全に通れたが、この先、フレアタンと戦う時の為に、魔力はできるだけ温存しておきたい。

 無論、マカイや他の参加者とも争うことになるだろう。

 そんな時、バリア一つ張れない状態じゃ話にならない。

 

 「……はぁ。……はぁ。」

 

 白い息を吐きながら、引き続き雪原を走っていく。

 奥に進むにつれ、段々と地形が険しくなり、急斜面や崖が増えていったが、ケロタンは最小限の魔法で突破し、次のエリアである雪山の近くまで辿り着いた。

 

 「…………。」

 

 下の方に山に入っていけそうな道がある。

 崖の高さは20mほど。

 迂回うかいする手もあるが、ロッグ族である自分には、この程度の高さ、屁でもない。

 ケロタンはさっと飛び降り、白い地面に着地した。

 

 《ザザザ……

 「んっ?」

 《ザザザザ……!

 「っ、何だ?」

 

 突然、足元の地面が揺れ、ケロタンは何事かと驚いた。

 

 「ウウウゥゥ……。」

 

 雪の音に混じって、不気味な呻き声も聞こえてくる。

 ケロタンはすぐに飛び退いた。

 

 《ザザザザ!!

 「! ……お前は。」

 

 魔物かと思い身構えていたが、雪の中から現れたのは、なんとハシン族

 ツギとは違い大きく、ゴリラのような体格だが、体が葉に覆われていることと、黒っぽい肌をしていることから間違いない。

 

 「山のモゴリか……?」

 

 恐らくそうだろう。極地のナダラという外見ではない。

 

 「ダ レ ダ オ マ エ。」

 

 起き上がったモゴリは、ケロタンを見据えると低い声で尋ねてきた。

 

 「レース参加者の一人だよ。

  お前こんなところに埋まって何やってたんだ?」

 「ア オ イ、ラ ド ゾ ク ト、タ タ カ ッ タ。」

 

 マカイのことか。

 あいつはもうフレアタンに追い付いているのだろうか?

 

 「ユ ダ ン。」

 

 モゴリはそう言うと顔を伏せ、その場に座り込んだ。

 どうやら相当なダメージを負っている様子……。

 ケロタンは崖を見上げた。

 

 (まさか、上から突き落とされたのか……?)

 「…………。」

 

 あの狂人ならそれくらいやりそうである。

 

 「まぁ……その、お大事に。」

 

 気の毒だが、情けをかけてる余裕は無い。

 ケロタンモゴリを背に、山へと走り出した。

 

 ◆ 第十八の難関・吹雪の霊峰 ◆

 

 《ゴロゴロゴロゴロ……!!

 

 「はぁ…はぁ…はぁ……!」

 

 《ゴロゴロゴロゴロ……!!

 

 「くっ……!」

 

 斜面を転がってきた雪玉を、間一髪かわす。

 現在位置は山の中腹辺り。

 ケロタンは吹雪の中、極地に生息する魔物――スノーダーの群れに襲われていた。

 

 (何匹いるんだ一体……!?)

 

 上の方から際限なく転がってくる。

 ちょっとでも気を抜いたらぶつかって、共に崖の下へ真っ逆さまだ。

 

 (戻されてたまるか……!)

 

 しかし、素早く抜けることは困難。

 雪に足を取られ、ケロタンの悪戦苦闘はしばらく続く。

 

 《ゴロゴロゴロゴロ……!!

 

 スノーダー

 彼らは普段、雪の塊に擬態し、獲物が近付くと体を転がして攻撃してくる。

 それだけ聞くと可愛いらしい感じだが、斜面ではこのように硬く大きな雪玉が猛スピードで迫ってくる訳で、とてもじゃないが侮れない。

 

 《ヒュオオオオオオオ……!

 

 そして、この悪天候

 恐らく魔法によって発生している吹雪だが、魔物の攻撃と合わさって、かなり体力を奪われる。

 視界も不良で、終盤のダンジョンには相応しい難易度のエリアと言えよう。

 

 《ゴロゴロゴロゴロ……!!

 

 また新たなスノーダーがやってくる。

 

 「……っ。」

 

 かわす一瞬、雪の間から覗く真っ赤な瞳と目が合った。

 レースの始めの頃はあまり感じていなかったが、ここまで追い詰められると流石に死への恐怖が頭をよぎる。

 そのことを一度考えると、何もかもが恐ろしく見えてくる。

 

 (後少し……後少しなんだ。)

 

 ケロタンは内なる敵とも戦いながら、山頂を目指し、走っていく。

 途中の洞窟では、また別の魔物――ゴッカンムリの魔法攻撃に苦しめられたが、そこは吹雪が無いだけまだマシだった。

 そして――。

 

 《ゴゴォン……!

 

 洞窟の出口まで辿り着いたケロタンは、何かが崩れるような大きな音を聞き、急いで外へ飛び出した。

 そこで目にしたのは――。

 

 (フレアタン……!)

 

 赤いロッグ族と、白髪白髭のノーマン。……恐らく、極地のナダラだ。

 どうやら二人は交戦中らしく、両者の間を炎と氷が激しく飛び交っていた。

 ナダラは老人のように見えるが、その身のこなしは意外にも俊敏で、次々に襲い来る炎をかわし、反撃の魔法を放っている。

 炎と氷……。属性的にはナダラが不利だが……押している感じだ。

 

 (……。)

 

 ここまで無理をして一人で来たツケが、とうとう回ってきたのかもしれない。

 ケロタンは手に力を込めた。

 マカイの姿が見えないのは気掛かりだが、この好機は逃せない。

 ケロタンはまずナダラに狙いを定め、フレアタンの攻撃に続けて《ロダン》を放った。

 

 《バシュッ!!

 

 放たれた光の球が、ナダラに向かって弧を描くように飛んでいく。

 

 「ムッ……!?」

 

 しかし、彼は意外にも鋭敏。

 不意を突いたつもりだったが、ナダラはさっと身をひるがえし、炎と《ロダン》を避けて見せた。この吹雪の中でよく察知できたものだ。

 ケロタンはすかさず次弾を放った。

 奇襲には失敗したが、攻撃の手は緩めずいく。

 

 《ボウゥッ!!

 

 一方、フレアタンは、自分の方に攻撃が来ないと見ると、ナダラに向けて炎を放ち、先へと走り出した。

 

 「ぬぅ……!!」

 

 二人に狙われ、かわし切れず、魔法で氷の障壁を展開するナダラ

 ガード後、すぐに体勢を立て直し、フレアタンの後を追う。

 ケロタンもそれに続いた。

 

 「はぁ……! はぁ……!」

 

 吹雪の中、長い坂を我先にと登る三人。

 その中でもナダラは素早く、雪を物ともしないスピードでフレアタンとの距離を詰めていく。

 極地の、と言われるだけあって、こうした環境には慣れているのだろう。

 やはり、今、この場においてはフレアタンよりも厄介な相手だ。

 

 「っ!」

 

 ――と、その時。フレアタンナダラの動きが止まった。

 どうしたのかと彼らの視線の先を見ると、坂の上に何かがいる。

 吹雪で見えにくいが、あれはラド族か……?

 

 (まさか……)

 

 「ハハハ! 私に追い付こうなど千年早――はっくしゅ! 寒い!!」

 「…………。」

 

 マカイであった。

 

 「ううむ……暖炉が恋しい!

  ので! 面倒はここでまとめて片付けさせてもらおう。」

 

 そう言い終わると、マカイは何処からか用意してきた雪玉を、足で蹴って転がしてきた。

 

 「……!?」

 

 一応、仲間扱いの自分がいるのだが、マカイには見えていないのか、もしくは関係がないのか、躊躇がなかった。

 

 「くっ!」

 

 三人は雪玉をかわす為、横に飛び退いた。

 しかし、問題はその後。

 衝撃が加わったことで坂に大きな亀裂が入り、雪崩が発生したのだ!

 大量の雪が物凄いスピードで襲い掛かってくる!

 

 「うおっ!?」

 

 それは一瞬の出来事だった。

 ナダラは何処かに姿を消し、フレアタンはその場で炎の障壁を展開。

 ケロタンは空中に足場を作り出し逃れようとしたが、吹雪と疲れで間に合わなかった。

 

 《ゴオオォォォォォォ……!!

 

 木も岩も全て飲み込まれていく。

 巻き込まれたフレアタン、そしてケロタンの意識は、あえなく闇へと沈んでいった……。

 

 ◆ 吹雪の零峰・洞窟 ◆

 

 《バコッ……!

 「……はぁ、冷てぇ……。」

 

 気絶から覚め、目の前を覆う雪を押し退けたケロタンは、見覚えのある壁を目にし、状況を理解した。

 

 (洞窟まで押し戻されちまったか……。)

 

 奥を見ると、出口は完全に雪で塞がっている。

 フレアタンが炎で必死に溶かしているが、通れるようになるまではしばらく掛かりそうだ。

 

 「はぁ……、クソ……!」

 

 今の彼の炎には、レース開始時ほどの勢いは無い。

 ほぼ魔力切れを起こしており、威力の高い技は中々出せないようだ。

 

 「調子が出ないみたいだな。」

 「…………。」

 

 話しかけるが、案の定、無視される。

 

 「……なぁ、こんな状況だし、協力――」

 「断る。」

 

 今度の返答は早かった。

 

 「協力だの、協調だの……。どいつもこいつもうんざりする。足出まといだ。」

 「…………。」

 

 フレアタンが頑なに仲間を作ろうとしない理由。それは一体何なのか。

 ケロタンには少し思うところがあった。

 

 「……まぁ、それならしょうがないな。」

 「っ!?」

 《ボォォン!!

 

 《ロダン》が命中し、弾ける雪。

 ギリギリかわしたフレアタンは、腕に炎を纏わせ、不敵な笑みを浮かべるケロタンを睨んだ。

 

 「お前とは一度戦ってみたかったんだ。

  たった一人の力でこのサバイバルレースを優勝したって聞いた時、すげぇって思ってな。」

 「…………。」

 「そんな顔しなくても、お前にとってもメリットがあるさ。俺は魔力を回復させる木の実を持ってる。

  後一つだけだが、喉から手が出るほど欲しいだろ。

  協力が嫌なら、俺を倒して奪って――」

 《ボゥッ!!

 

 言い終わるよりも早く、距離を詰めてくるフレアタン

 炎を纏った拳が迫り、ケロタンはすかさずバリアを展開し、それを防ぐ。

 

 「《ケロブラスト》!」

 

 そしてすぐに反撃に転じる。

 

 《ズドッ!!

 

 バリアの解除と共に勢いよく放たれる拳。

 それは見事フレアタンの顔面を捉え、洞窟の壁に向かって吹っ飛ばす。

 

 《タッ!

 

 だが、フレアタンは空中で身を翻し、壁に着地。

 再び拳に炎を纏わせながら、ケロタンに向けて跳躍した!

 

 「!」

 

 技が綺麗に決まったことで生じた油断。

 フレアタンはその一瞬を逃さず突いてきた。

 

 「うおっ!」

 

 ギリギリ防御が間に合うも、連続で繰り出される炎の打撃に、守りはすぐに崩されてしまう。

 

 「くっ……。」

 

 あっと言う間に壁際まで追い詰められてしまい、ケロタンは膝を突いた。

 腕はすっかり焼け焦げている。これ以上は危険だ。

 

 「……どうせお前も、俺が自分の力に慢心しているとでも思っているんだろう。」

 「……。」

 

 拳を突き付けられ、ケロタンは大人しく木の実を差し出す。

 それで魔力を回復させたフレアタンは、全身に炎を纏うと、雪で詰まった通路に突っ込んでいった。

 

 「はぁ……。」

 

 フレアタンが行ったのを確認したケロタンは、すぐに立ち上がり、雪の溶けた通路へと足を運んだ。

 

 (こういうやり方じゃないと、食わないと思ったからな。)

 

 自分の力ではどうしても雪をどかすのに時間が掛かる。

 ここはどうにかフレアタンに回復してもらわなければならなかった。

 しかし、このまま勝ちを譲る気はない。

 ケロタンは虚空から木の実を取り出す。

 さっきは嘘を吐いたが、これが本当に最後の木の実だ。

 ケロタンはそれを口の中に放り込むと、フレアタンの後を追った。

 

 ◆ 第十九の難関・氷神の城 ◆

 

 長く険しい道の先。

 遅れを取り戻すべく、魔法を使い、猛吹雪の山道を進んでいったケロタンフレアタンは、とうとう山頂付近にまで辿り着き、吹雪に隠されている巨大な建造物を目撃する。

 近くで見ると、それは氷でできた城であった。

 

 (最後のボスか……。)

 

 これまでは全て先を越され、まだ一度もお目にかかれていないが、これで四体目。

 いよいよレースの終わりが見えてきた。

 ケロタンフレアタンの後を追い、城の中へと進入する。

 

 《ガッシャァァァァン!!

 「……っ!?」

 

 その瞬間、何かが割れるような大きな音が響き渡った。

 その正体は想像するに難くない。

 一瞬、足を止めかけた二人だったが、すぐさま駆け出し、最奥の部屋へと急ぐ。

 滑りそうな通路の角を曲がり、上階への階段を上がると、そこには二人の人物がこちらに背を向け、立っていた。

 

 「フッ……口ほどにもない。」

 「…………。」

 

 一人はマカイ。もう一人はナダラだった。

 察するに、丁度ボスを倒し終えたところなのだろう。

 

 《ボゥッ!!

 

 無論、フレアタンはその弛緩を見逃さなかった。

 

 「なっ!? ――ぐはっ!?」

 

 振り返ろうとしたマカイの横腹に、炎を纏った拳が炸裂。

 大きく吹っ飛ばされた彼は、奥の壁に激突し、床へと倒れた。

 

 「ふ、不意打ちとは卑怯な……!」

 

 腹を押さえながら声を絞り出すマカイ

 どの口が言うのやら、全く同情する気になれなかった。

 

 《ポゥ……

 「ん?」

 

 四人が睨み合う一触即発の状況の中、床に敷き詰められた氷のタイルの一つが突如輝き出した。

 あれは……魔法陣。ボスが倒されたことで何らかの魔法が起動したようだ。

 

 (もしかして転移魔法か……!)

 

 あの上に乗れば、この極寒の雪山ともオサラバできるに違いない。

 

 しかし、今考えなしに動けば他三人からの袋叩きに遭うのは必至……。

 どうしたものか……。

 

 「ああっ!? あんなところにライオンが!!」

 

 …………。

 マカイが入口の方を指差し叫んだものの、そんな見え見えの罠に釣られる者がいる筈なく、微妙な空気が流れた。

 

 「ガァオッ!!

 「何っ!?」

 

 しかし、状況が一変するのは早かった。

 突如、獣の雄叫びが聞こえ、反射的にバリアを張ったケロタンの背後より繰り出される爪撃そうげき

 

 《ガァァン!!

 

 そのパワーは凄まじく、彼の体はバリアごと壁まで吹っ飛ばされていった。

 

 「てめぇら……、あの時はよくもやりやがったな……。」

 

 闖入者ちんにゅうしゃの正体――それはココオウスダだった。

 だいぶ距離を離したと思っていたが、しっかり追い付いてきていたのか。

 

 「隙ありィ!!」

 「なっ……!」

 

 状況は更に動く。

 その場の全員がココオウに注目した一瞬、マカイの水のレイピアがフレアタンの両足を一閃。

 かわそうとしたようだが間に合わず、足を失った彼の体はその場に倒れた。

 ロッグ族ならば足腕の傷は簡単に再生するが、あれはかなりプライドを傷付けられただろう。

 

 「っ……!」

 

 それを見たナダラも、何か行動を起こそうとしたようだったが、足首に大量の砂が纏わりつき、身動きが取れない。

 あれは多分、スダの能力だ。

 

 「はぁ……はぁ……!」

 

 腹を押さえながら、魔法陣に走るマカイ

 

 「させるか!! 《ガァオ》!!」

 

 ココオウの口から衝撃波が放たれ、真っ直ぐマカイに向かっていく!

 

 「ピュイーッ!!」

 

 マカイはすかさず口笛を吹き、水が無いのにもかかわらず、シーチキンを召喚!

 無情にもその大きな体を盾にし、魔法陣の中へと姿を消していった。

 

 「ハハハーッ!!」

 「チィ! 待ちやがれ!! ぬおぉっ!?」

 

 今度は駆け出そうとしたココオウの首に植物の蔦のような物が巻き付いた……! あれはもしや……。

 

 「行け!!」

 

 入口に立っていたのは、なんとツギだった。

 体から伸びた蔦がココオウの首をしっかりと捉え、動きを封じている。

 

 《ボゥ!!

 

 その後も一瞬の連続だった。

 まず足の再生を終えたフレアタン魔法陣に向けて走り出し――。

 

 《シュウゥゥ!

 

 スダの砂がそれを止めようと集まり――。

 

 《バァァン!!

 

 ケロタンが放った《ロダン》がその行動を阻止する。

 

 《ダッ!

 

 そしてスダの集中が途切れたことにより、自由になったナダラが行動を開始。

 フレアタンに続いて魔法陣の中へと姿を消し、それを追ってケロタンも飛び込んだ。

 

 (……。)

 

 頭より先に、体が動いていた。

 転送される一瞬、茶色いサボテン族ツギの後ろに見えた気がするが、それについて考え込む余裕はなかった。

 戦いは、まだ終わっていないのだから。