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『異端のネシオSIDE』「マジシャンズパレード編」☆2(1/3)

 

 If there is magic on this planet, it is contained in water.

(この惑星に魔法があるならば、それは水の中にある。)

 

Loren Eiseley(ローレン・アイズリー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ザァァァァァ…………

 

 《プツッ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆【ミツカメTV】☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《やぁ、こんにちは! ボクの名前はタマガメ

  東京・多摩エリアの皆と暮らす、きれいな水が大好きなカメの精霊です!

  今日は皆さんにお願いがあってやってきました!》

 

 《くるん☆

 

 《見えるかな? ボクの体の中にある、ま~るい水晶玉

  これには不思議な力があって、色んな場所の汚れを吸い取ってきれいにしてくれるんだけど、あまり汚れを吸い取り過ぎると、玉がくすんで力を出せなくなっちゃうんだ。

  そこで! 皆にも、きれいな東京を守る為、手伝ってほしい!

  何かを使う時はなるべく汚さないように、もし汚しちゃった時はしっかり掃除!

  モノへの感謝の気持ちを忘れずに、一緒にきれいな街を守ろう!》

 

 《ザザッ――

 

 《そうしないと、ザッ――怖い怖い怪人が――ザザッ

 

 《ザザザッ――プツンッ――

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★ Magicians Parade ★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ≫ 東京都・某駅・某トイレ前

 

 

 

 「ふわぁぁぁ……。

  何とか終電には間に合ったか……。うっ……」

 

 「飲み過ぎましたね……。」

 

 

 深夜、とあるに二人の会社員が訪れた。

 

 

 「まぁ、幸い明日は休みですし、気楽に行きま――」

 

 「あー、ちょっと……その前にトイレ。」

 

 

 背中を丸めながら、トイレに向かう二人。

 しかし、中に入ったところで、思わず顔をしかめる。

 

 

 「んだよ、このトイレきたねーなぁ……。」

 

 

 床にたばやら、やらが転がっていて、変な臭いもする。絶対、流してないところがあるだろう。

 

 

 「我慢します?」

 

 「いや、もう漏れる……。」

 

 

 迷ってる場合ではない。

 彼らはそれぞれ個室に入り、用を足す準備をする。

 

 

 「ん……?」

 

 

 その時、目の前の壁の張り紙に気付く。

 

 

 【トイレはきれいにお使いください

 

 

 (チッ……誰も守ってねーじゃん……。)

 

 

 トイレ自体は最新式だが、利用者が多い場所はやっぱり汚くなりがちである。

 幾ら呼びかけても、マナーの悪い客はいなくならない。

 

 

 (あっ、やべ、零れた。)

 

 

 酔いと張り紙に気を取られた所為で、思いっきり狙いが逸れてしまう。

 

 

 「はぁ……。」

 

 

 まぁ、後は清掃員の仕事だ。

 

 

 「ん……。」

 

 

 ズボンを履き、トイレから出ようとすると、扉にまた別の張り紙を見つけた。

 

 

 【キレイニツカエ

 

 

 何だか圧を感じる張り紙に不快感を覚えながら、は個室を出て、手を洗う。

 

 

 「綺麗にツカエ……。」

 

 「え?」

 

 「綺麗にツカエ。」

 

 

 変な声がしたと思ったら、入口の方にトイレのタンクから手足が生えたような謎のロボットが立っている。

 

 

 「何ですか? あれ。」

 

 「美化ロボットか、何かか? にしては、すっげぇキモいデザインだな。

  誰が通したんだ。」

 

 「綺麗にツカエ。」

 

 

 一つ目のロボットは凄い眼力で睨みながら、同じ言葉を繰り返す。

 

 

 「なぁ、ちょっと、邪魔だって。」

 

 「綺麗に――」

 

 

 ガターン!と、ロボットを無理矢理押し退けて床に倒す。

 

 

 「綺麗にツカエ。」

 

 「うるせーな、他の奴に言えよ。」

 

 

 二人はトイレを出ようとする。

 しかし、ロボットは諦めず、二人の前に立ち塞がった。

 

 

 「綺麗にツカエ。」

 

 「はぁ……。」

 

 

 は今度は思いっきりロボットを蹴飛ばし、壁にぶつける。

 

 

 「きっ――!」

 

 「ちょっと、壊したらマズいんじゃないですか?」

 

 「あぁ? 不良品だろ、これ。」

 

 「キ……キ……キレ……」

 

 「ん?」

 

 

 ロボットの体がビクビクと震え出す。

 まさか、本当に壊れたか?

 

 

 「キ……キキキ……! キキキヒヒヒヒ!!」

 

 「!?」

 

 「キレちまったァァアァァァァアア!!

 

 「うおっ!?」

 

 

 突然、激しく痙攣けいれんしながら起き上がったロボットに、二人はビビり散らかした。

 

 

 「グろろろろぉ!!

  トイレを汚すクソう○こ共がァァ!!

  綺麗に使えって言ッてるのが分からネェのか!? あァン!?

 

 「いや、そんなに汚しては……」

 

 

 マジギレなロボットに少し引き気味になる二人。

 だが、ロボットは一歩も引かなかった。

 

 

 「反省の色ナァァァシ!! ジャー!! オメェらには二度とトイレ使わせないもんネェェエ!!

  一生その辺でしてろ、ヴァァーカ!!

 

 

 謎のトイレロボットは二人に向けて両腕を構えた。

 

 

 「あっ?」

 

 「ウォッシャアアアアアアア!!

 

 

 ロボ便器のような両腕から突然、謎の液体が放たれ、二人はそれに飲み込まれた。

 

 

 「「アアーッ!!」」

 

 

 夜の駅の構内に、二人の男の汚い叫び声が響き渡る。

 そして、その光景を物陰より撮影する者が一人。

 

 

 「イィーヒッヒッヒ!!

  ここここれで視聴率ナンバー1はイタダキです!!」

 

 

 謎の金の玉は闇へと消え、謎のトイレもまた地面に溶け、消えていくのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆ Root Irregular ~紙隠しの聖域~ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

  天至21年4月11日(月)☆

 

 

 

 

 

 

 

 「行ってきます……。」

 

 

 玄関の扉を開け、水色髪の少女がそうっと静かに家を出る

 

 

 《かちゃん……

 

 

 なるべく音を立てないように……、目立たないように……

 

 彼女は扉を閉め、その場から外の様子を眺める。

 

 

 「………………。」

 

 

 時刻は朝七時ちょうど。天気は晴れ。庭には誰もおらず、散水機が植物に水をあげている音がする。風もとても穏やかで、過ごしやすい一日になりそうな雰囲気。

 

 

 「……はぁ…………。」

 

 

 しかし、肝心の体調の方は……、ちょっと優れなかった。何だか熱っぽいような、気のせいのような……、そんな感じ。学校に行きたい気分でもなかった。

 

 

 (休もうかな……。)

 

 

 頭の中に飼っているの姿が浮かぶ。

 

 

 (ううん、でも……ここまで準備したし……)

 

 

 迷いながらも、水漏みなもれ ルゥはとぼとぼと歩き出した。

 

 もう中学生だし、あまり子どもっぽいことは言ってられない。

 

 それに休んだら、一番星いちばんぼし 流々るるが光のような速さで家まで押し掛けてくるような気がしたから……。

 

 

 (ルルちゃん……。)

 

 

 学園の人気者で、先週も大活躍。

 

 学校に行きたくないのは、曜日の所為ではなく、主に彼女の所為だった。

 

 

 (今日もまた話しかけられるんだろうな……。)

 

 

 それがルゥにとって悩みの種

 

 自分はあまりおしゃべりが得意な方ではないし、ワイワイ騒ぐのは好きじゃない。

 

 緊張のあまり、変なことを口走って恥ずかしい思いをするのは嫌だった。

 

 体に触られるのはもっと……

 

 

 「はぁ……。」

 

 (何で目付けられちゃったんだろ……。)

 

 

 これまで同じクラスになったことはなかったし、合同の授業でも、ひたすら影を薄くして、なるべく関わりを持たないようにしていた。

 

 それなのに……、いつの間にか距離を詰められていて……

 

 

 「ぅぅ………。」

 

 

 思い出すだけで心臓の鼓動が早まる。

 

 どれだけこっちが光の当たらない場所にいようとしても、ステージの上に引っ張り上げようとしてくる。準備なんて全然できてないのに……。

 

 でも、迷惑だなんて言えなかった。

 

 良いことをしようとしてくれてる。

 

 

 (どうしたらいいのかな……)

 

 

 いつまでも臆病なままじゃ駄目なのは分かっている。少しずつでも変わっていかないといけない。

 

 しかし、常時スポットライトが当たっているような人間といきなり付き合うのはハードルが高過ぎる。明らかに住む世界が違うし、とても友達なんて、対等な関係にはなれない。見れない。名前は似てるのに正反対。……休日の間も散々悩んだが、やはり、行き着く答えは同じ……。

 

 

 「おはよー!」

 

 「…………!」

 

 

 校門に近付くと、元気な挨拶が聞こえてくる。

  

 顔を上げて見ると、ちょっとした人だかりが出来ていた。

 

 

 「へぇ~、これが悪さしてた仮面君かぁ。私も操られてみたかったな~♪」

 

 「ねぇねぇ、触っていいですか!?」

 

 「どうぞどうぞ~! あ、触ったら星一つお願いしまーす!」

 

 

 流々の声がして、ルゥはびくっとする。

 

 人を集めて一体何をやっているのか。気にはなったが、あの中心に飛び込む勇気は出ない。

 

 

 「お~い、お前達ー。固まってると、迷惑だぞ~。」

 

 「ああ、ごめんなさい! 皆~、ちょっと移動するよ~。」

 

 

 先生に言われ、場所を変えようとする流々。彼女を追い、人だかりが移動を始める。

 

 

 (……! 今だ……!)

 

 

 チャンスと思ったルゥは、人だかりを壁にして、校門を突破しようと試みる。

 

 しかし――

 

 

 「あ、みなもちゃんだ。」

 

 「あわっ!」

 

 

 流々友達に速攻で気付かれてしまった。

 

 すぐに流々も飛んでくる。

 

 

 「みなもちゃ~ん!! おはよ! ねぇねぇ、見て見てこれ! 摩訶不思議! 喋る仮面!

 

 《おはよう……。》

 

 「あ……お、おはようございます……。」

 

 

 テンションの低い声で挨拶され、思わず返してしまう。

 

 

 《なぁ。何で俺こんなに見せびらかされてるんだ。》

 

 「え? 隠す必要ある?」

 

 

 手に持った赤白色の仮面と会話する流々

 

 

 (オモチャかな……?)

 

 

 ルゥにはいまいち面白さが分からなかったが、とりあえず笑っておこうと思い、笑顔を作る。

 

 すると、自分を見つけた水兵のような帽子を被った女の子も寄ってきた。

 

 

 「どう? だいぶルルのテンションに慣れてきた?」

 

 「あ、いや……まだ全然かも……。」

 

 

 確か名前は水先みずさき アンナちゃん。学年は同じで、クラス

 

 ずっと教室で流々の隣にいた所為で、他人の友達の名前をだいぶ覚えてしまった。

 

 

 「るるちゃ~ん!!

 

 

 もたもたしていると、どんどん人が集まってくる。

 

 今度は白髪の女の子が走ってきて、流々に抱きついた。同時に潰された仮面が《うおっ!?》と声を上げる。

 

 

 「おっ、もえるちゃん! 今日も萌えてんね!」

 

 「はぁ~、るるちゃんが無事で良かったです!」

 

 

 大胆にも胸に顔をうずめるあの子は小学6年生蕩幸とうとみ もえるちゃん。流々の大ファンで、漫画研究部に所属している、ちょっと変わった子。

 

 

 《なぁ、前が見えないんだが……》

 

 「はっ! この仮面はもしや噂の怪人SNS!? 私とるるちゃんの間に挟まるとは、これは新たな展開……!」

 

 

 突然、メモを取り始める萌ちゃんネタ帳と書かれているが、一体どんな漫画を仕上げるのだろうか……。

 

 

 「あ、みなもちゃん。連絡先、交換しない?」

 

 「えっ!?」

 

 「困ったことがあったら、いつでも相談乗るよ。」

 

 

 アンナに迫られ、ルゥは顔を背ける。

 

 

 「わ、私と話してもつまらないよ……。」

 

 「え、でもみなもちゃんAクラスだし、超優秀じゃない?」

 

 「そう。みなもちゃんもこう見えて凄い才能・・・・を隠し持ってるんだよ!」

 

 「な、ないよそんなの……。」

 

 「その控えめなところ、萌えます!!」

 

 「あわっ……!!」

 

 

 必死に否定するも、いつの間にか、横にいた萌ちゃんに手を握られる。

 

 

 「みなも先輩情報もバッチリ掴んでます!

  るるちゃんと同じクラスで、ガーデニング

  血液型A型で、誕生日2月7日

  身長146cm体重――」

  

 「あわぁぁっ!!」

 

 

 いつの間にか、情報が漏れまくっている。

 

 

 「私の勘では、るるちゃん・・・・・の次・・みなも先輩だと思うんです! 頑張ってください!」

 

 「あわわ……。ご、ごめんなさい……! 急いでるので……!」

 

 

 ルゥは耐え切れず、の手を振り払い、逃げ出す。

 

 

 「今日のあわあわ出たね。」

 

 《何かストレス与えてないか……?》

 

 「承知の上だよ。」

 

 

 

 

  ≫ 星明学園・中学部校舎・女子トイレ

 

 

 

 

 「はぁ……はぁ……はぁ……。」

 

 

 人だかりから離れ、トイレに逃げ込んだルゥは、個室に入り、腰を落ち着けた。

 

 

 (ど、どうしよう……。あんなに近寄られて……。)

 

 

 自分の額に手を当てる。

 

 心なしか、ちょっと熱いような気がする。

 

 

 (もし風邪とか引いてたら、ルルちゃん達にうつしちゃうかもしれない……。

  そんなことになったら……)

 

 

 ねぇ、あの子、ルルちゃんに風邪うつしたらしいよ。

 

 うわ~、最低。近付かないようにしよ。

 

 【水漏 ルゥウイルスパンデミック

 

 

 「あわあぁぁ!!」

 

 

 隔離されてしまう!

 

 想像だけで失禁しそうになる恐怖。いや、実際に出してはいた。

 

 

  「はぁ……はぁ……。」

 

 

 額からもどんどん汗の粒が出てきて、止まらない。

 

 水漏 ルゥは他人に不快な思いをさせて、気持ち悪がられるのが一番嫌だった。

 

 泣虫・頻尿・多汗――

 

 不幸な体質の所為で、幼稚園生の頃、散々他人に迷惑をかけたことがトラウマになっていた。

 

 怪我をするとすぐ涙が出るわ、よくおねしょするわ、暑い日は全身汗でべとべとになるわ……。

 

 これで自尊心を保つことなど不可能だった。

 

 

 「うぅぅ……。」

 

 

 なるべくしてなった陰キャ

 

 しかし、そんなルゥにも救いがあった。

 

 

 「ふぅ……、ふー……。」

 

 

 一人きりになれるトイレの中――

 

 とても静かで、じっと座っていると、段々と心が落ち着いてくる。ゆっくり気持ちの整理ができる。

 

 

 「…………。」

 

 

 このまま一日中、こもっていられたら……。

 

 そんなことを思ってしまうほどに、ルゥはこの場所、この時間がお気に入りだった。

 

 しかし、残念ながら、今はのんびりしているほどの余裕はない。

 

 予鈴が鳴り、動かざるを得なくなる。

 

 

 (もう行かないと……)

 

 

 ルゥペーパーホルダーに手を伸ばす。

 

 

 (あれ……?)

 

 

 しかし、伸ばした手は空気を掴んだ。

 

 

 (え……?)

 

 

 恐る恐るホルダーを見ると、紙が無い。無かった。

 

 

 「ああぁ……!」

 

 

 ショックで変な声が出てしまう。おまけにストックも見当たらない。

 

 

 (うぅ……ティッシュで拭かなきゃ……。)

 

 

 ルゥは制服のポケットに手をやる。

 

 しかし、そこにある筈の膨らみは何故かなく、中には何も入っていなかった。

 

 

 (えぇー!? な……何で……!?)

 

 

 家でちゃんと確認した筈なのに、何処かで落としたのだろうか?

 

 

 「あわわ……。」

 

 

 嫌な予感がしながら、ビデ洗浄のボタンを押す。

 

 案の定、反応しない。

 

 

 「……………。」

 

 

 こうなったらもうハンカチか、鞄に入ってるタオルで拭くしかない。

 

 

 (汚いけど……すぐ洗えるからいいや……。)

 

 

 ポケットからハンカチを取り出す。

 

 ――その時だった。

 

 《ぼとん……》と、上から何かが落ちてきて、足元に転がってきた。

 

 

 「……!」

 

 

 それは新品トイレットペーパー

 

 思わず手にしてしまうルゥ

 

 

 (え……何処から……?)

 

 

 謎だったが、とりあえず、ありがたく使わせてもらい、個室から出る。

 

 

 (隣の人……?)

 

 

 しかし、両隣、その他の個室も鍵がかかっておらず、下から覗き込んでも人の姿は見えなかった。

 

 

 (トイレの神様……?)

 

 

 或いは女子トイレの花子さんか。

 

 不思議な体験をしたルゥであった。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

☆ マジシャンズパレード ☆

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 ≫ 星明学園屋上

 

 

 

 

 《♪♪♪♪♪、♪♪♪♪♪、――》

 

 「…………あ。」

 

 《もしもし? どうしたの、アンちゃん。また何か不安なこと?》

 

 「それが……。はい……、実はフレットが……。」

 

 《フレット……。あぁ、あの金ぴかちゃん? 彼、何かやらかしたの?》

 

 「ええ、例の怪人が想定よりも被害を出しているようで……。このままだとイレギュラー・・・・・・を引き寄せる恐れが……」

 

 《う~ん、広範囲の認識阻害はリスクだものね……。怖い人達・・・・に見つかったら、最悪、打ち切らざるを得なくなるし……。

  分かったわ。私からも気を付けるよう言っておく。

  もしもの時はフォロー入れるわ♪》

 

 「お願いします……。」

 

 《―――》

 

 「はぁ……。」

 

 

 黒いスーツを着た女は、通話を終えると、溜息を吐き、校舎の中へと戻った。

 

 階段を下り、一階職員室へと向かう。

 

 

 「あわっ……。」

 

 

 その途中、踊り場のところで水色髪の少女とぶつかりそうになった。

 

 

 「あ、アングレア先生。おはようございます……!」

 

 「おはようございます、水漏さん……。

  あ、これ、外に落ちてましたよ。」

 

 

 水玉模様ポケットティッシュを差し出す。

 

 

 「あっ……。ありがとうございます……。」

 

 

 彼女は受け取ると、階段を上がり、教室の方へ駆けていった。

 

 

 「…………。」

 

 

 

 

 ☆ まじぱれ ☆

 

 

 

 

 ≫ 星明学園中学部校舎二階一年A組教室

 

 

 

 「あー、負けたぁー!!」

 

 

 昼休み中、タブレットゲームをしていた流々が足をバタバタとさせながら声を上げた。

 

 画面には大きく【LOSE】と表示され、アバターが落下していく。

 

 

 《さっきから何やってるんだ、お前。》

 

 「トーラス・オンライン……。」

 

 《ああ。》

 

 

 察する火星ひぼし さく

 

 トーラス・オンラインTORRAS ONLINE)とは、世界的人気を誇るTower of Rankersアプリだ。オリジナルカードを作り、遠く離れた相手ともカードバトルを楽しむことができる。

 

 

 「今、戦った相手【トワイライト・イレギュラー】って、デッキだったんだけど、最近、登録されたばかりの害悪デッキ破壊テーマでさー。

  手札も悪かったし、あっという間にやられちゃった。」

 

 《先が思いやられるな……。》

 

 「こればっかりは運が大きいから、流石に全戦全勝は無理だよ。

  Tower of Rankersは基本、初見殺しみたいなところあるし。まぁ、そこが面白いんだけどね。毎試合新鮮で。

   みなもちゃんもやらない?」

 

 「私は……、あんまり得意じゃないから……。」

 

 

 始めたらどうなるかは容易に想像できた。きっと手汗で端末がびちょびちょになる。

 

 

 《げっ、それでもお前、グランドマスターか。》

 

 

 流々ランクを見せられ、驚く火星

 

 カジュアル勢の自分と違い、相当な上位プレイヤー。あの時、対決の手段にTower of Rankersを選んだのも納得がいく。

 

 

 「ま、やるからには1回、一番は取っておかないとね☆」

 

 

 ふふん♪と鼻を鳴らす流々

 

 その時、タブレットの画面に通知が表示された。

 

 

 《ん? 何かメッセージが届いたぞ。》

 

 「あっ、萌ちゃんだ。」

 

 

 流々は早速、HOSHI MEを起動すると、とのやり取りを始める。

 

 

 【トイレ怪人、また出た! 】

 

 【流々:どこどこどこどこどこ?】

 

 【:(リンク)】

 

 

 送られてきたリンクをタップすると、とあるSNSアカウントに飛んだ。

 

 スクロールしていくと、気になるつぶやきが見つかる。

 

 

 【会社でうんこ漏らした。死にたい。】

 

 【――草】

 

 【ちょっと前にトイレの中で変なロボットに水浴びせられてからおかしい。】

 

 【――トイレロボ太くん出たんか?】

 

 【酔ってたからあんま覚えてない……。】

 

 《ん? 何だこれ。》

 

 

 つぶやきを見た火星は疑問符を浮かべる。

 

 

 「まぁ、順を追って説明するとね。

  休日の内に萌ちゃん達に頼んでおいたんだよね。怪人に関する情報探し。

  それで気になったのが、トイレの中に変なロボットが出るって

  何か被害に遭った人達、全員、トイレに入れなくなってるみたい。」

 

 《何じゃそりゃ……。悪ふざけか……?》

 

 「いやいや、由々しき事態だよ。

  トイレに入れないんだよ? 想像してみて。」

 

 (と……トイレに……?)

 

 

 話を聞いてしまったルゥは冷や汗をかく。

 

 

 《俺は既にトイレにも行かなくていい体だからな……。》

 

 「とにかく、被害に遭った人達から話を聞かないと。DM送ろ。」

 

 

 トイレやら、怪人やら……。

 

 ルゥは猛烈に気になったが、関わりたくないという気持ちの方がまだ勝っている。

 

 

 「はぁ……。」

 

 

 再び額に手を当て、溜息をつく。

 

 

 (悪いことが起こりませんように……。)

 

 

 彼女は自分を助けてくれたトイレの神様に、そう願うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★ Magicians Parade ★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  天至21年4月12日(火)☆

 

 

 

 

 

 

 

 早朝。彼ら・・はとある街のビルの上にいた。

 

 

 「何が中止ダァァ!! あの女、ふざけやがってェェェ!!」

 

 

 宙に開いた穴の中から現れ、両手で頭を押さえる金色の球体――ネガヘルツ幹部フレット

  

 会議を終え、戻ってきた彼は、ビルの上で待機していた怪人の前で愚痴を吐き始める。

 

 

 「あ、あいつにはまるでセンスが無イ!

  幾らこの世界の能力者が怖いからって、学園内だけで、しかもカードバトルなんて大人しい方法で決着なんて、どう考えても魔法少女モノじゃなイ!

  そこに持っていくまでの流れも無理があった!!

  なァ!! そう思うだろ、クラウン!!」

 

 「多イ……。」

 

 「そうだ!! もっと広く! もっと多くの被害を!!

  きょ、強大な魔力と魔力のぶつかり合イ!

  ちっぽけな事件なんて誰も興味を持たなイ!! そうと決まれば――」

 

 「は~い♪ そこまでよ~ん♡」

 

 「……!?」

 

 

 フレットが動き出そうとした時、彼の背後に何者かが降り立った。

 

 

 「プレッシャーは分かるけど。やり過ぎて台無しになったら、あんた、首を吊ることになっちゃうわよ。」

 

 

 それは蝶のような仮面を着けたハイレグ姿の男だった。

 

 

 「あァン!? エリージョ

  お、お前も俺の脚本にケチつける気か!?

  アングザイアの腰の引けた脚本じゃ、視聴率の維持なんて無理無理無理無理――!!」

 

 「もー! ちゃんと話を聞いて!

  いいじゃない。カードバトルとか、カードキャプターさくらみたいで。渡された参考資料の中にあったでしょ? 焦らず、もっと肩の力を――」

 

 「駄目だ! 駄目だ! 駄目だ! テンポが悪過ぎる!!

  このまま方向性を固める訳にはいかなイ! 俺は妥協はしなイ! 今ならまだ軌道修正可能!!

  そうだな!? クラウン!!」

 

 

 頼みの綱である怪人に目を向けるフレット

 

 ロボットのような姿をしたそれは、先程から微動だにせず、じっと街を見下ろしている。

 

 

 「多イ……。」

 

 「……?」

 

 「どうした?」

 

 

 ようやく彼の様子がおかしいことに気付く二人。

 

 

 「多イ……。あまりにも多過ぎル。トイレを汚ス汚物共が……!」

 

 「おお……?」

 

 「もうイイ。全員まとめてやってやル。」

 

 

 怪人は両腕を天に掲げた。

 

 

 「ちょっと、何するつもり……!?」

 

 「思い知るがイイ……!

  全員地獄に……!」

 

 

 怪人の目が赤く鋭く光る。

 

 

 「逝っトイレエェェェ!!

 

 

 次の瞬間――

 

 怪人の腕から膨大な魔力が放出され、街を覆い隠さんばかりの勢いで広がっていく。

 

 二人は驚きで思わず目を見開いた。

 

 

 「あらやだ、大変……!」

 

 「ハハハハハ!! いいゾォ!! トイレ怪人CW1010クラウン・トイレイ)!!

  クソの塊共に目に物見せてやれェェ!!」

 

 

 期待以上の働きを見せる怪人に、大喜びのフレット

 

 エリージョは顔に手をやり、天を仰いだ。

 

 

 (こうなったら、全力でサポートするしかないわね……。

  やだわ、もう……。)

 

 

 かくして、狂気の舞台は整うのだった……。